第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-09] ポスター(運動器)P09

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-09-1] 人工膝関節全置換術後患者の急性痛に対する経皮的電気刺激の影響
多チャンネル刺激を使用した予備的研究

西角 暢修1,2, 高橋 欣吾3, 庄本 康治2 (1.赤穂中央病院リハビリテーション部, 2.畿央大学健康科学研究科, 3.赤穂中央病院整形外科)

キーワード:人工膝関節全置換術, 急性疼痛, 経皮的電気刺激

【はじめに,目的】

人工膝関節全置換術(以下TKA)後の急性痛に対する経皮的電気刺激(以下TENS)の報告は多い。しかし,プラセボTENS群と鎮痛効果に差がないとの報告や,疼痛の破局的思考や不安感が強い症例で,TENSの鎮痛効果が少ない等の報告がある。鎮痛効果を獲得するためには,電流強度と電気量を増大させ,より多くの神経線維を活動参加させることが重要であるが,先行研究では1~2チャンネル刺激を使用していることが多い。そこで本研究の目的は,4チャンネルTENSを予備的に実施し,心理的影響を含めて,TENSの実用性と影響を考察することとした。

【方法】

対象は,右変形性膝関節症に対しTKAを行った70歳代女性1名とした。術式は,皮切が正中切開のMedial Parapatellar Approachで,インプラントはPersona(Zimmer社製)であった。TENSは,術後4日~14日に通常の理学療法に加えて実施した。使用機器はDELTA ZERO(日本MEDIX社製),波形は対称性二相性パルス波,周波数は2と100ppsで各々30sec毎に交互変調,パルス幅は100μsec,強度は耐性可能な最大強度とし,40%までの範囲で変調,全治療時間は60分,電極貼付部位は自着式電極PALS(5×9cm Axelgaard社製)を用いて,患側下肢のL2~S2皮膚分節領域に4チャンネル8枚貼付した。評価は,患側の安静時・膝関節自動屈曲時・歩行時の疼痛強度をNumerical Rating Scale(以下NRS),デジタルフォースゲージmodel RZ(アイコーエンジアリング株式会社製)を用いて鵞足部圧痛閾値(以下PPT),膝関節自動屈曲可動域(以下ROM),最大歩行速度を測定した。TENS実施期間中の非ステロイド性抗炎症薬の容量は同一で,内服後6時間以内にはTENSや評価を実施していない。測定時期はTENS前後とし,グラフによる視覚的分析を実施した。また,TENS実施前にState-trait Anxiety Inventory(以下STAI),Pain Catastrophizing scale(以下PCS),Geriatric Depression Scale(以下GDS)を測定した。

【結果】

STAIの状態不安と特性不安は43と50,PCSは22,GDSは1であった。術後4,5,6,7,11,14日目のTENS前後の安静時NRSは4→3,3→2,2→1,2→2,2→2,2→2,膝関節自動屈曲時NRSは5→6,5→4,4→3,5→3,6→4,5→3,歩行時NRSは8→7,8→7,3→6,5→6,4→5,4→3,PPTは34.5→37.3,40.6→43.5,41.5→48.8,39.3→41.9,47.1→44.0,44.4→56.5,ROM(°)は30→40,35→40,50→50,55→55,50→45,55→55,最大歩行速度(m/min)は32.8→39.0,34.3→42.3,42.3→46.9,45.5→47.6,52.6→52.2,50.0→58.3であった。

【結論】

状態・特性不安は高値であったが,疼痛の破局的思考や抑うつはなく,TENS前後でNRSにて即時的鎮痛効果を認め,PPTも上昇した。ROMや最大歩行速度への影響は,疼痛による制限が強い急性期ほど有効と考えた。また,急性期における患側4チャンネル刺激は,副作用や拒否もなく実施可能であった。