[P-MT-09-2] 人工膝関節全置換術後の姿勢制御能力に対する協調性トレーニング効果について
2施設間における無作為化比較試験
Keywords:人工膝関節全置換術, 協調性トレーニング, 姿勢制御能力
【はじめに】
不安定な状況下で身体の重心位置を移動させ調整する姿勢制御能力は,歩行能力や転倒と関連していると考えられ,人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty;TKA)後早期の改善が望まれる。協調性トレーニングは,TKA術後,運動機能を向上させることが報告されているが,術後早期の姿勢制御能力に対する効果については明らかになっていない。本研究の目的は,TKA術後早期の患者において,集中的な協調性トレーニングによる姿勢制御能力や運動機能の介入効果について明らかにすることである。
【方法】
対象者は,2施設にてTKAを施行した者とした。除外基準は,再置換術者,単顆置換術者,重度の神経学的疾患や筋骨格系疾患,認知機能低下を有する者,また,定められたトレーニングの遂行が困難な者とした。対象者は,協調性トレーニング(TR)群とコントロール(Con)群の2群に分けた。女性は無作為に割り付けし,男性は少数と予測されたため順に割り付けた。TR群は,術後4日目より,通常の理学療法に加えて週に5~6日,12~15セッション(7~10日間)の協調性トレーニングを行った。Con群は,通常の理学療法のみを行った。協調性トレーニングは,スクワットやカーフレイズなど閉鎖運動連鎖(CKC)である7種類のトレーニングを,段階的に強度をあげて行った。理学療法の総時間はCon群と同じ長さとした。立位姿勢制御能力の評価としてディジョックボード・プラスで,対象者に立位で不安定板を水平位に保持するように指示した際の,左右,前後それぞれの安定指数と角度変動域を求めた。また,片脚立位保持時間,Timed up and Go test,準WOMAC,10m歩行時間,膝伸展筋力体重比,膝関節角度を評価した。評価時期は,2群とも術前とセッション終了時(Con群は術後2週目)とした。また術後3か月に,片脚立位保持時間,準WOMAC,膝関節角度を測定した。解析には,2群の比較には対応のないt検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
対象となったのは51名であったが,1名はトレーニングの遂行が困難であったため除外し,50名(75.5±3.9歳)を解析の対象とした。対象者の内訳は,TR群26名(平均年齢71.8±5.8歳,男性3名,片側施行12名),Con群24名(74.5±6.0歳,男性4名,片側施行7名)であった。群間で有意差が認められた項目(TR群,Con群)は,術前の前後安定指数(4.0±1.6,5.7±2.7)のみであり,セッション終了時,術後3か月において有意差は認められなかった。
【結論】
TKA術後早期の患者において,集中的な協調性トレーニングによる姿勢制御能力や運動機能の介入効果について2施設間で無作為化比較試験を行ったが,トレーニング効果は認められなかった。その理由として,Con群も同じ時間数の理学療法を行っており,内容においてもCKCを含む多角的なトレーニングであったため,協調性トレーニングを集中的に行ったとしても有意な差を認めなかったと考えられる。
不安定な状況下で身体の重心位置を移動させ調整する姿勢制御能力は,歩行能力や転倒と関連していると考えられ,人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty;TKA)後早期の改善が望まれる。協調性トレーニングは,TKA術後,運動機能を向上させることが報告されているが,術後早期の姿勢制御能力に対する効果については明らかになっていない。本研究の目的は,TKA術後早期の患者において,集中的な協調性トレーニングによる姿勢制御能力や運動機能の介入効果について明らかにすることである。
【方法】
対象者は,2施設にてTKAを施行した者とした。除外基準は,再置換術者,単顆置換術者,重度の神経学的疾患や筋骨格系疾患,認知機能低下を有する者,また,定められたトレーニングの遂行が困難な者とした。対象者は,協調性トレーニング(TR)群とコントロール(Con)群の2群に分けた。女性は無作為に割り付けし,男性は少数と予測されたため順に割り付けた。TR群は,術後4日目より,通常の理学療法に加えて週に5~6日,12~15セッション(7~10日間)の協調性トレーニングを行った。Con群は,通常の理学療法のみを行った。協調性トレーニングは,スクワットやカーフレイズなど閉鎖運動連鎖(CKC)である7種類のトレーニングを,段階的に強度をあげて行った。理学療法の総時間はCon群と同じ長さとした。立位姿勢制御能力の評価としてディジョックボード・プラスで,対象者に立位で不安定板を水平位に保持するように指示した際の,左右,前後それぞれの安定指数と角度変動域を求めた。また,片脚立位保持時間,Timed up and Go test,準WOMAC,10m歩行時間,膝伸展筋力体重比,膝関節角度を評価した。評価時期は,2群とも術前とセッション終了時(Con群は術後2週目)とした。また術後3か月に,片脚立位保持時間,準WOMAC,膝関節角度を測定した。解析には,2群の比較には対応のないt検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
対象となったのは51名であったが,1名はトレーニングの遂行が困難であったため除外し,50名(75.5±3.9歳)を解析の対象とした。対象者の内訳は,TR群26名(平均年齢71.8±5.8歳,男性3名,片側施行12名),Con群24名(74.5±6.0歳,男性4名,片側施行7名)であった。群間で有意差が認められた項目(TR群,Con群)は,術前の前後安定指数(4.0±1.6,5.7±2.7)のみであり,セッション終了時,術後3か月において有意差は認められなかった。
【結論】
TKA術後早期の患者において,集中的な協調性トレーニングによる姿勢制御能力や運動機能の介入効果について2施設間で無作為化比較試験を行ったが,トレーニング効果は認められなかった。その理由として,Con群も同じ時間数の理学療法を行っており,内容においてもCKCを含む多角的なトレーニングであったため,協調性トレーニングを集中的に行ったとしても有意な差を認めなかったと考えられる。