[P-MT-09-3] TKA術後早期からのスタティックストレッチングが膝伸展可動域に与える影響
Keywords:人工膝関節全置換術, 屈曲拘縮, スタティックストレッチング
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(TKA)後の膝屈曲拘縮の残存は,歩容や歩行エネルギー効率,コンポーネントの耐久性,疼痛に影響すると報告されている。この原因の一つとして,術後の疼痛による防御性収縮やアライメント修正による膝屈筋群の伸張性低下が考えられている。そこで本研究の目的は,術後早期からのスタティックストレッチング(SS)がTKA後の膝伸展可動域(伸展ROM),歩行および疼痛に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は,変形性膝関節症に対して一施設にてTKAを施行した90名のうち,術前独歩20m以上可能な者とした。除外基準は,膝関節以外の整形外科的疾患を有する者,認知機能障害を有する者,クリニカルパスから逸脱した者とした。被検者は,介入群(通常の理学療法に加えSSを実施)と対照群(通常の理学療法を実施)に割付けた。介入方法は,先行研究を参考に適度な伸張感を感じる強度で5分間(1分間SS-1分間休息×5)のSSを午前午後1回ずつ手術翌日から4週間実施した。調査項目は,伸展ROM,歩行時痛VAS,歩行速度,補正重複歩長,歩行率とし,評価は術前・術後2週(2週)・術後4週(4週)に実施し,さらに伸展ROMについては術翌日にも行った。また,基礎情報として基本的属性や医学的属性,手術因子,合併症に関する調査も実施した。伸展ROMは2名の理学療法士が関節角度計にて3回ずつ1°刻みで測定し,平均を求めた。分析は,可動域測定の信頼性確認のため検者内・検者間級内相関係数を求め,基礎情報の群間比較にMann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。介入効果の検討は,群と介入期間を2要因とし,評価項目を従属変数とした2元配置分散分析を実施し,交互作用を認めた場合には,下位検定として単純主効果の検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
基準を満たした介入群42名,対照群35名(男性13名,女性64名,平均年齢75.7±6.0歳)を解析対象とした。可動域測定の級内相関係数はICC(1,1)=0.95,ICC(2,1)=0.96であった。基礎情報の群間比較は,全てにおいて有意差はなかった。伸展ROM(介入群・対照群)は,術前-9.57±7.61・-7.77±6.26,術翌日-12.30±4.83・-11.54±4.45,2週-3.93±3.06・-6.86±3.58,4週-1.56±2.02・-5.64±3.28であった。分散分析の結果,評価項目のすべてで介入期間による主効果(全変数p<0.01)が認められ,交互作用は伸展ROM(p<0.01)に認めたが,歩行速度(p=0.84),補正重複歩長(p=0.79),歩行時痛(p=0.08)では認めなかった。伸展ROMにおける介入の単純主効果は2週(P<0.01)・4週(P<0.01)で認められた。
【結論】
TKA術後の伸展ROMは,経過とともに拡大し,術後1日目から5分間×2回/日のSSを付加することで,より改善する可能性が示された。このSSの影響は,2週さらに4週でも認められた。しかし,歩行に関する項目への影響はみられなかった。
人工膝関節全置換術(TKA)後の膝屈曲拘縮の残存は,歩容や歩行エネルギー効率,コンポーネントの耐久性,疼痛に影響すると報告されている。この原因の一つとして,術後の疼痛による防御性収縮やアライメント修正による膝屈筋群の伸張性低下が考えられている。そこで本研究の目的は,術後早期からのスタティックストレッチング(SS)がTKA後の膝伸展可動域(伸展ROM),歩行および疼痛に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は,変形性膝関節症に対して一施設にてTKAを施行した90名のうち,術前独歩20m以上可能な者とした。除外基準は,膝関節以外の整形外科的疾患を有する者,認知機能障害を有する者,クリニカルパスから逸脱した者とした。被検者は,介入群(通常の理学療法に加えSSを実施)と対照群(通常の理学療法を実施)に割付けた。介入方法は,先行研究を参考に適度な伸張感を感じる強度で5分間(1分間SS-1分間休息×5)のSSを午前午後1回ずつ手術翌日から4週間実施した。調査項目は,伸展ROM,歩行時痛VAS,歩行速度,補正重複歩長,歩行率とし,評価は術前・術後2週(2週)・術後4週(4週)に実施し,さらに伸展ROMについては術翌日にも行った。また,基礎情報として基本的属性や医学的属性,手術因子,合併症に関する調査も実施した。伸展ROMは2名の理学療法士が関節角度計にて3回ずつ1°刻みで測定し,平均を求めた。分析は,可動域測定の信頼性確認のため検者内・検者間級内相関係数を求め,基礎情報の群間比較にMann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。介入効果の検討は,群と介入期間を2要因とし,評価項目を従属変数とした2元配置分散分析を実施し,交互作用を認めた場合には,下位検定として単純主効果の検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
基準を満たした介入群42名,対照群35名(男性13名,女性64名,平均年齢75.7±6.0歳)を解析対象とした。可動域測定の級内相関係数はICC(1,1)=0.95,ICC(2,1)=0.96であった。基礎情報の群間比較は,全てにおいて有意差はなかった。伸展ROM(介入群・対照群)は,術前-9.57±7.61・-7.77±6.26,術翌日-12.30±4.83・-11.54±4.45,2週-3.93±3.06・-6.86±3.58,4週-1.56±2.02・-5.64±3.28であった。分散分析の結果,評価項目のすべてで介入期間による主効果(全変数p<0.01)が認められ,交互作用は伸展ROM(p<0.01)に認めたが,歩行速度(p=0.84),補正重複歩長(p=0.79),歩行時痛(p=0.08)では認めなかった。伸展ROMにおける介入の単純主効果は2週(P<0.01)・4週(P<0.01)で認められた。
【結論】
TKA術後の伸展ROMは,経過とともに拡大し,術後1日目から5分間×2回/日のSSを付加することで,より改善する可能性が示された。このSSの影響は,2週さらに4週でも認められた。しかし,歩行に関する項目への影響はみられなかった。