[P-MT-10-5] 人工股関節全置換術患者における術前・術後のTUGの推移
Keywords:人工股関節, TUG, 早期退院
【はじめに,目的】
近年,入院期間の短縮による早期退院が上げられており,人工股関節全置換術(以下:THA)後の早期かつ安全に自立歩行を獲得することが求められている。そのため術前から術後の運動機能を予測するとこは重要であり,多くの先行研究が報告されている。しかしながら歩行自立・安定性の経過予測は担当理学療法士の主観や経験によるところが大きいのが現状である。歩行能力や動的バランスの評価としてTimed up and go test(以下:TUG)は高齢者や中枢疾患患者に用いられており,術後の経過予測や転倒予測研究も報告されている。今回,変形性股関節症患者のTHA術前後のTUGの推移と移動手段から,経過予測を行うことを目的に研究を行ったのでここに報告する。
【方法】
対象は平成27年10月5日~平成28年2月18日までにTHAを目的に入院された29名のうち,測定期間に独步または一本杖歩行が困難であった9名(術前からの除外者:7名,術後バリアンスよる除外者:2名)を除いた20名(男性3名,女性17名,平均年齢62.2±7.9歳)とした。測定内容は術前,術後1週(杖歩行開始),術後2週,術後3週(計4回)の時点でのTUGの数値とし,測定時の移動手段,歩行自立の可否を調査した。TUGは練習を1度行い,その後の2施行間での低値(最速値)を使用した。統計処理はTUGの数値を測定時期で群分けし,Friedman検定後にWilcoxon検定(Holm修正)を実施。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
各時期におけるTUGの中央値は術前:10.41秒,術後1週:15.20秒,術後2週:11.20秒,術後3週:10.75秒であった。統計処理の結果,TUG測定値は術前と術後3週のみで有意な差がなく,その他の群間ではすべて有意な差が見られた(p<0.01)。移動手段・歩行自立の可否について術前ではすべての被験者で独歩自立,術後1週で一本杖自立が12名,一本杖監視が8名であった。術後2週では全被験者でT杖歩行自立が可能となり,術後3週で独歩自立5名,一本杖自立継続が15名であった。
【結論】
TUG測定値は術前と比較し術後2週間まで有意に低値を示す結果となった。また術後経過として術後3週間までは有意に改善する結果となった。術前と術後3週での測定値に有意な差は見られなかったが術前がすべて独步であったことに対して,術後3週では独歩5名,一本杖15名であり補助具の使用にて術前と同程度の歩行能力,動的バランスを獲得できる可能性が示唆された。今回の研究結果では,術前TUG測定可能で術後バリアンスが発生ないTHA患者において,術後2週までは術前と比較し歩行・動的バランス能力の低下があり入院前生活困難であるが,術後3週目で入院前と同等の生活が可能となることが予想され,自宅退院を薦める時期の一目安となることが示唆された。
近年,入院期間の短縮による早期退院が上げられており,人工股関節全置換術(以下:THA)後の早期かつ安全に自立歩行を獲得することが求められている。そのため術前から術後の運動機能を予測するとこは重要であり,多くの先行研究が報告されている。しかしながら歩行自立・安定性の経過予測は担当理学療法士の主観や経験によるところが大きいのが現状である。歩行能力や動的バランスの評価としてTimed up and go test(以下:TUG)は高齢者や中枢疾患患者に用いられており,術後の経過予測や転倒予測研究も報告されている。今回,変形性股関節症患者のTHA術前後のTUGの推移と移動手段から,経過予測を行うことを目的に研究を行ったのでここに報告する。
【方法】
対象は平成27年10月5日~平成28年2月18日までにTHAを目的に入院された29名のうち,測定期間に独步または一本杖歩行が困難であった9名(術前からの除外者:7名,術後バリアンスよる除外者:2名)を除いた20名(男性3名,女性17名,平均年齢62.2±7.9歳)とした。測定内容は術前,術後1週(杖歩行開始),術後2週,術後3週(計4回)の時点でのTUGの数値とし,測定時の移動手段,歩行自立の可否を調査した。TUGは練習を1度行い,その後の2施行間での低値(最速値)を使用した。統計処理はTUGの数値を測定時期で群分けし,Friedman検定後にWilcoxon検定(Holm修正)を実施。危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
各時期におけるTUGの中央値は術前:10.41秒,術後1週:15.20秒,術後2週:11.20秒,術後3週:10.75秒であった。統計処理の結果,TUG測定値は術前と術後3週のみで有意な差がなく,その他の群間ではすべて有意な差が見られた(p<0.01)。移動手段・歩行自立の可否について術前ではすべての被験者で独歩自立,術後1週で一本杖自立が12名,一本杖監視が8名であった。術後2週では全被験者でT杖歩行自立が可能となり,術後3週で独歩自立5名,一本杖自立継続が15名であった。
【結論】
TUG測定値は術前と比較し術後2週間まで有意に低値を示す結果となった。また術後経過として術後3週間までは有意に改善する結果となった。術前と術後3週での測定値に有意な差は見られなかったが術前がすべて独步であったことに対して,術後3週では独歩5名,一本杖15名であり補助具の使用にて術前と同程度の歩行能力,動的バランスを獲得できる可能性が示唆された。今回の研究結果では,術前TUG測定可能で術後バリアンスが発生ないTHA患者において,術後2週までは術前と比較し歩行・動的バランス能力の低下があり入院前生活困難であるが,術後3週目で入院前と同等の生活が可能となることが予想され,自宅退院を薦める時期の一目安となることが示唆された。