[P-MT-11-1] 透析患者の症候性変形性膝関節症が全死因死亡率に及ぼす影響について
前向きコホート研究
Keywords:変形性膝関節症, 疼痛, 死亡率
【はじめに】
近年,変形性膝関節症(膝OA)が長期生命予後を悪化させることが複数報告されており,その予防・管理は極めて重要である。一部の報告では疼痛や歩行困難感を伴う症候性膝OAにおいて特に死亡リスクが高いことや,人工膝関節全置換術により除痛を図ることで心血管予後が改善されるなど,疼痛管理の重要性が報告されている。本邦では,欧米よりも膝OAの頻度が多いものの,症候性膝OAと生命予後を検討した報告はほとんどない。我々は透析患者において,糖尿病や骨ミネラル代謝異常を合併すると男女問わず膝OAの頻度が増すことを報告した。死亡・心血管疾患(CVD)リスクの高い透析患者において,膝OAと生命予後の関連を検討した報告はほとんどない。膝OAの疼痛に対する運動療法の有効性は,ガイドラインでも示されている通り,複数のメタ解析により明らかとなっている。そのため,症候性膝OAが生命予後に及ぼす影響を明らかにすることは,理学療法研究としても重要な意味をもつ。本研究の目的は,透析患者を対象とし,症候性膝OAが全死因死亡率に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は歩行が自立した外来透析患者とし,大腿骨頚部骨折,脊椎圧迫骨折の既往,明らかに予後不良な悪性新生物などの罹患者は除外した。観察期間は2013年1月より1300日間とし,期間中に観察困難となった者を除外した124名(年齢67.6±9.8歳,男性81例・女性43例,透析歴10.4±7.5年,糖尿病64例,CVD既往43例)を対象とした。膝OAの診断はKellgren and Lawrence grading(KLg)にて実施した。疼痛や歩行困難感の評価は,Nueschら(BMJ2011)の方法を一部改編して実施し,過去1か月の膝関節荷重痛が「日常的にある」,疼痛に伴い歩行を「少し又はとても困難と感じる」と回答したKLg2以上を症候性膝OAとし,症状の有無に関わらずKlg2以上をX線学的膝OAと定義した。観察期間中の全死因死亡率を調査し,各OAとの関連をlog-rank testにて比較した。また,年齢,性別,透析歴,BMI,骨格筋指数(SMI),糖尿病,CVD既往,血清アルブミンを共変量としてcox比例ハザードモデルにて解析を行った。
【結果】
症候性膝OAは30例(24.2%),X線学的膝OAは67例(54.0%)に認め,観察期間中に25例(20.2%)が死亡した。全死因死亡率は症候性膝OAにおいて有意に高く(p=0.026),X線学的OAでは関連を認めなかった(p=0.782)。共変量で調整後も,症候性膝OAは全死因死亡率の有意な因子であり(P=0.031,HR=2.54),SMI(P=0.002,HR=0.48),男性(P=0.016,HR=3.60)も関連を認めた。
【結論】
透析患者の症候性膝OAや骨格筋量は生命予後を規定する独立した因子であり,理学療法介入による疼痛・歩行障害や,それに伴う活動量低下,骨格筋量低下の予防・管理の必要性が示唆された。
近年,変形性膝関節症(膝OA)が長期生命予後を悪化させることが複数報告されており,その予防・管理は極めて重要である。一部の報告では疼痛や歩行困難感を伴う症候性膝OAにおいて特に死亡リスクが高いことや,人工膝関節全置換術により除痛を図ることで心血管予後が改善されるなど,疼痛管理の重要性が報告されている。本邦では,欧米よりも膝OAの頻度が多いものの,症候性膝OAと生命予後を検討した報告はほとんどない。我々は透析患者において,糖尿病や骨ミネラル代謝異常を合併すると男女問わず膝OAの頻度が増すことを報告した。死亡・心血管疾患(CVD)リスクの高い透析患者において,膝OAと生命予後の関連を検討した報告はほとんどない。膝OAの疼痛に対する運動療法の有効性は,ガイドラインでも示されている通り,複数のメタ解析により明らかとなっている。そのため,症候性膝OAが生命予後に及ぼす影響を明らかにすることは,理学療法研究としても重要な意味をもつ。本研究の目的は,透析患者を対象とし,症候性膝OAが全死因死亡率に及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は歩行が自立した外来透析患者とし,大腿骨頚部骨折,脊椎圧迫骨折の既往,明らかに予後不良な悪性新生物などの罹患者は除外した。観察期間は2013年1月より1300日間とし,期間中に観察困難となった者を除外した124名(年齢67.6±9.8歳,男性81例・女性43例,透析歴10.4±7.5年,糖尿病64例,CVD既往43例)を対象とした。膝OAの診断はKellgren and Lawrence grading(KLg)にて実施した。疼痛や歩行困難感の評価は,Nueschら(BMJ2011)の方法を一部改編して実施し,過去1か月の膝関節荷重痛が「日常的にある」,疼痛に伴い歩行を「少し又はとても困難と感じる」と回答したKLg2以上を症候性膝OAとし,症状の有無に関わらずKlg2以上をX線学的膝OAと定義した。観察期間中の全死因死亡率を調査し,各OAとの関連をlog-rank testにて比較した。また,年齢,性別,透析歴,BMI,骨格筋指数(SMI),糖尿病,CVD既往,血清アルブミンを共変量としてcox比例ハザードモデルにて解析を行った。
【結果】
症候性膝OAは30例(24.2%),X線学的膝OAは67例(54.0%)に認め,観察期間中に25例(20.2%)が死亡した。全死因死亡率は症候性膝OAにおいて有意に高く(p=0.026),X線学的OAでは関連を認めなかった(p=0.782)。共変量で調整後も,症候性膝OAは全死因死亡率の有意な因子であり(P=0.031,HR=2.54),SMI(P=0.002,HR=0.48),男性(P=0.016,HR=3.60)も関連を認めた。
【結論】
透析患者の症候性膝OAや骨格筋量は生命予後を規定する独立した因子であり,理学療法介入による疼痛・歩行障害や,それに伴う活動量低下,骨格筋量低下の予防・管理の必要性が示唆された。