The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-13] ポスター(運動器)P13

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-13-5] 人工膝関節置換術患者の機能的移動能回復に影響を与える術前因子は?

政森 敦宏1, 井上 明彦1, 岩本 栞里1, 泥谷 智徳1, 増田 絵里1, 白浜 正人1, 曽田 是則2 (1.地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立広島市民病院リハビリテーション科, 2.地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立広島市民病院整形外科)

Keywords:人工膝関節置換術, 術前評価, TUG

【はじめに,目的】当科では人工膝関節置換術(以下,TKA)術後患者の機能回復の明確な指標を有していない。そこで私たちは機能的移動能の指標であるTime Up & Goテスト(以下,TUG)に着目し,その回復に関連する術前因子を明確にし,今後の臨床に活かすことを本研究の目的とした。

【方法】対象は,2016年5月より8月までに当院整形外科で施行した人工膝関節置換術患者35例のうち,調査可能であった26例(74%)を対象とした。男性5例女性21例,手術時年齢平均75歳(58~86),疾患は全例変形性関節症であった。

方法は術前,術後1,2,3週に①TUGにおける所要時間を計測し,また術前因子として②可動域(伸展,屈曲),③膝伸展筋力(ANIMA社製μTAS-F100使用,端座位にて等尺性筋力測定),④片脚起立時間,⑤左右1回転所要時間(立位で左あるいは右に1回転するのに要した時間),⑥Body Mass Index(BMI),⑦反対膝の手術歴の有無を調査した。

①TUGの推移と②~⑥の5項目については重回帰分析を用い,⑦についてはχ2乗検定を用い関連性を検討した。危険率5%未満を統計学的有意ありとした。

【結果】①TUG(秒)は術前,術後1,2,3週時では各々平均10.4±3.4,15.8±5.5,12.0±3.6,10.4±2.8であった。術前に比し術後1週時には有意に延長しており,その後は各時期で有意に短縮していた(p<0.001)。調査した術前因子のデータは,②可動域(°)(手術側/非手術側):伸展-10.2±5.4/-5.8±4.6,屈曲115.6±14.7/117.7±18.3,③膝伸展筋力(kgf/kg)(手術側/非手術側):0.25±0.09/0.32±0.12,④片脚起立時間(秒)(手術側/非手術側):10.5±10.6/21.6±25.3,⑤左右1回転所要時間(秒)(手術側/非手術側):3.9±1.4/3.7±1.5,⑥BMI(kg/m2):25±4.2,⑦反対側の手術歴は12例(46%)であった。

TUGは術後3週(退院)時には術後1週時に比し,約5.4秒短縮しており,術前因子のうち膝伸展筋力(術側:r2=0.2019,p<0.005,非術側:r2=0.1623,p<0.005)と有意に相関していた。

【結論】本研究よりTUGの回復には膝伸展筋力が関与していることが判明した。つまり大腿四頭筋を中心とした伸展筋力に術前よりアプローチしていくことが重要であることが示唆された。今後,症例数を増やし,術前因子を細分化し,さらなる詳細な検討が必要となる。当科だけで達成できる課題ではなく,紹介元の運動療法にも頼らざるを得ないため,情報を共有できればと考えている。