The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-15] ポスター(運動器)P15

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-15-3] 坐面側方傾斜時の体幹側方傾斜・側方移動と肩甲帯の動きの関係

鈴木 加奈子, 塩島 直路 (たちばな台病院リハビリテーション科)

Keywords:坐面側方傾斜, 体幹, 肩甲帯

【はじめに,目的】

肩関節は胸郭上を浮遊する関節のため,体幹の機能の影響を受けやすい。また,肩関節は上肢運動に加え,姿勢制御としても機能する場合がある。したがって,姿勢制御における体幹の動きが,肩甲帯の動きに影響を及ぼすことが考えられる。先行研究において,坐面側方傾斜時には,体幹側屈と肩甲帯の動きが生じることが示されている。この体幹と肩甲帯の動きには関連があることが予測されるが,明らかではない。そこで本研究では,坐面側方傾斜時における体幹側方傾斜および側方移動と,肩甲帯の動きの関係について検討した。


【方法】

対象は健常成人15名(男性9名,女性6名,年齢:27.5±5.2歳)とした。測定肢位は左右に10°ずつ傾斜する傾斜板上での自然坐位(坐位),自動で最大まで坐面を右側へ傾斜した坐位(右傾斜位),同左側へ傾斜した坐位(左傾斜位)の3肢位とした。測定肢位を後方よりデジタルカメラで撮影し,画像解析ソフトScion Imageを用いて,両側の肩甲帯傾斜角度(肩峰後角と肩甲棘内側を結ぶ線と,垂線との角度),第9胸椎(Th9)高位側方傾斜角度(Th9高位での任意の2点を結ぶ線と,水平線との角度)を計測した。また,側方移動の指標として,第7頚椎(C7)棘突起とTh9棘突起のx座標を計測した。さらに,左右傾斜位各々の値から坐位での値を減じて変化量を算出した。左右傾斜別に,Th9高位側方傾斜角度およびC7・Th9側方移動量と,両側肩甲帯傾斜角度の関係について,ピアソンの相関係数を算出し,検討した。なお,統計にはJSTATを用い,危険率5%未満を有意とした。


【結果】

右傾斜時におけるTh9高位側方傾斜角度(0.3°)と左肩甲帯傾斜角度(0.8°)の間(r=0.69,p<0.01),C7側方移動量(10.4cm)と左肩甲帯傾斜角度の間(r=0.53,p<0.05)に有意な相関があり,Th9高位の右側方傾斜とC7の右側方移動が大きくなるほど,左肩甲帯の上方傾斜が大きくなった。左傾斜時におけるTh9高位側方傾斜角度(-0.9°)と右肩甲帯傾斜角度(-0.5°)の間(r=-0.68,p<0.01),C7側方移動量(-12.0cm)と右肩甲帯傾斜角度の間(r=-0.58,p<0.05)に有意な相関があり,Th9高位の左側方傾斜とC7の左側方移動が大きくなるほど,右肩甲帯の上方傾斜が大きくなった。坐面傾斜側の肩甲帯傾斜角度と体幹の動きに相関はなかった。


【結論】

左右ともに,坐面傾斜側へのTh9高位の側方傾斜,C7の側方移動が大きくなるほど,対側肩甲帯の上方傾斜が大きくなることが示された。これにより,体幹を大きく動かすことで対応した者では,姿勢制御としての対側肩甲帯の上方傾斜が多く生じることが考えられる。この対応が機能的に有利か不利かは言及できないが,肩甲帯上方傾斜位から上肢運動が行われる際には,肩甲帯の動きに影響が生じることが予測される。坐面傾斜側肩甲帯と体幹の動きに相関はなく,肩関節に愁訴のない被験者では,両者の動きの関係は多様であることが考えられる。