[P-MT-16-1] 徒手牽引が有する鎮痛効果および関連する個人要因の検証
信号検出理論・パス解析モデルを用いて
Keywords:徒手牽引, 信号検出理論, パス解析
【はじめに】
徒手牽引は鎮痛を目的に臨床で用いられているが,鎮痛効果が牽引に特異的なものか,対象者のバイアスの影響を受けるのかは明らかにされていない。本研究の目的は,信号検出理論を用いて,徒手牽引の鎮痛効果が徒手刺激に特異的なものかを鑑別することである。また,個人要因と鎮痛効果の関連についても検討した。
【方法】
健常男性20名(28.4±6.4歳)に対して,与えられる痛みが高強度なのか低強度なのかを判別する強度判別課題を徒手刺激前後で実施し,判別結果から算出されるHit率(高強度の痛みを高強度と回答する率),False alarm率(低強度の痛みを高強度と回答する率),感度(d`),バイアス(C)を算出した。そして,算出された値を徒手牽引前後で比較し,徒手牽引の効果を検証した。なお,本実験での痛み刺激にはニューロメーターを使用し,被験者は2種類の痛み刺激条件(1.Aδ線維刺激,2.C線維刺激)で測定が実施された。課題は250Hz(Aδ線維),5Hz(C線維)の周波数ごとに実施した。また,実験前にはBig five尺度,the Inclusion of Other in the Self scaleを用いて性格特性ならびに他者との関係性を評価した。さらに徒手牽引中には治療に対する期待,徒手牽引後に快の度合いをVerbal Rating Scale(VRS)を用いて評価した。徒手刺激前後の各パラメータの差をWilcoxon Signed-rank Testを用いて比較した。また,算出した各パラメータと個人要因の変数を用いて,測定項目間の関係性をモデル化した後,それらのモデルの適合性をパス解析にて検証した。すべて有意水準は5%とした。
【結果】
Aδ線維刺激条件において,徒手牽引後のHit率が徒手牽引前よりも有意に減少した。つまり,徒手牽引はAδ線維由来の痛みに対して鎮痛効果を有しているという結果が得られた。徒手牽引×Aδ線維刺激の鎮痛効果についてのモデルを作成し,感度,バイアスに関連する因子を抽出した。Aδ線維のモデルでは,感度からHit率(0.79),バイアスからHit率(-0.60),情緒不安定性から感度(-0.48)へのパス係数に関して有意な関係を示した。以上の結果から,Hit率にはバイアスよりも感度の変化が関与することが示唆された。また,情緒不安定性が強いほど徒手牽引にて感度が低下しやすい傾向が示唆された。
【結論】
徒手牽引はAδ線維由来の痛みに対してバイアスよりも刺激由来の鎮痛効果の影響を受け,徒手牽引そのものによる影響と性格特性の影響のどちらも受けることが示唆された。
徒手牽引は鎮痛を目的に臨床で用いられているが,鎮痛効果が牽引に特異的なものか,対象者のバイアスの影響を受けるのかは明らかにされていない。本研究の目的は,信号検出理論を用いて,徒手牽引の鎮痛効果が徒手刺激に特異的なものかを鑑別することである。また,個人要因と鎮痛効果の関連についても検討した。
【方法】
健常男性20名(28.4±6.4歳)に対して,与えられる痛みが高強度なのか低強度なのかを判別する強度判別課題を徒手刺激前後で実施し,判別結果から算出されるHit率(高強度の痛みを高強度と回答する率),False alarm率(低強度の痛みを高強度と回答する率),感度(d`),バイアス(C)を算出した。そして,算出された値を徒手牽引前後で比較し,徒手牽引の効果を検証した。なお,本実験での痛み刺激にはニューロメーターを使用し,被験者は2種類の痛み刺激条件(1.Aδ線維刺激,2.C線維刺激)で測定が実施された。課題は250Hz(Aδ線維),5Hz(C線維)の周波数ごとに実施した。また,実験前にはBig five尺度,the Inclusion of Other in the Self scaleを用いて性格特性ならびに他者との関係性を評価した。さらに徒手牽引中には治療に対する期待,徒手牽引後に快の度合いをVerbal Rating Scale(VRS)を用いて評価した。徒手刺激前後の各パラメータの差をWilcoxon Signed-rank Testを用いて比較した。また,算出した各パラメータと個人要因の変数を用いて,測定項目間の関係性をモデル化した後,それらのモデルの適合性をパス解析にて検証した。すべて有意水準は5%とした。
【結果】
Aδ線維刺激条件において,徒手牽引後のHit率が徒手牽引前よりも有意に減少した。つまり,徒手牽引はAδ線維由来の痛みに対して鎮痛効果を有しているという結果が得られた。徒手牽引×Aδ線維刺激の鎮痛効果についてのモデルを作成し,感度,バイアスに関連する因子を抽出した。Aδ線維のモデルでは,感度からHit率(0.79),バイアスからHit率(-0.60),情緒不安定性から感度(-0.48)へのパス係数に関して有意な関係を示した。以上の結果から,Hit率にはバイアスよりも感度の変化が関与することが示唆された。また,情緒不安定性が強いほど徒手牽引にて感度が低下しやすい傾向が示唆された。
【結論】
徒手牽引はAδ線維由来の痛みに対してバイアスよりも刺激由来の鎮痛効果の影響を受け,徒手牽引そのものによる影響と性格特性の影響のどちらも受けることが示唆された。