[P-MT-16-5] 慢性腰痛におけるAKA-博田法の即時効果
特異的腰痛と非特異的腰痛のどちらに有効か?
Keywords:慢性腰痛, AKA, 仙腸関節
【はじめに】
国民生活基礎調査によると,本邦における国民の有訴率は,男性では腰痛が第1位,女性では肩こりに次いで第2位と突出して多く,腰痛人口,通院者率,日常生活への影響のある者率は高齢になるに従い増加傾向にある。しかし,医療機関を受診しても腰痛が緩和した者は約20%と低く,働き盛りの離職者を生んでいる。また,65歳以上の高齢者の外来受診率は,脊柱障害が高血圧性疾患に次いで第2位と突出して多くADLの水準を下げないための対策が求められている。
近年,関節運動学的アプローチ-博田法(以下AKA)は急性腰痛に対して即効性のある技術として活用されているが,慢性腰痛を分類してAKAの適応・有効率を検証した報告はない。
【方法】
平成23年から平成28年に当施設に来所した高齢者のうち,①現在から1ヶ月以内に症状が存在,②持続期間が3ヶ月以上,③Vidual Analogue Scale(以下VAS)が「2以上」の腰痛患者23例(男性9例,女性14例),平均年齢77.3±7.9歳を対象とした。
AKA施行前後のVASをWilcoxonの符号付き順位検定と対応のあるt検定を用いて比較した。また,特異的腰痛と非特異的腰痛でのAKA施行前後のVASを有意水準を5%未満として,Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した。
【結果】
AKA施行後は,全例でVASが低下し,82.6%(23例中19例)はVASが0になった。VASの平均値は,AKA施行前が5.6±1.8(特異的腰痛5.9±1.5,非特異的腰痛5.4±1.9で,各群の値を比較した結果,有意差はなかった),施行後が0.6±1.4(特異的腰痛1.40±1.9,非特異的腰痛0.0±0.0で,各群の値を比較した結果,有意差が認められた(p<0.01))で,AKA施行前後でのVASを比較した結果,有意差が認められた(p<0.001)。
また,中等度以上(VAS=>5)の腰痛例18例(特異的9例,非特異的9例)におけるVASの平均値は,施行前が6.3±1.3(特異的腰痛6.2±1.2,非特異的腰痛6.3±1.4で,有意差はなかった),施行後は,0.8±1.6(特異的腰痛1.6±1.9,非特異的腰痛0.0±0.0で,有意差が認められた(p<0.05))で,AKA施行前後でのVASを比較した結果,有意差が認められた(p<0.001)。
なお,中等度以上の腰痛例において,AKA施行後に「5以上」VASが低下した者の割合は,特異的腰痛で55.6%(9例中5例),非特異的腰痛で100%(9例中9例)と,非特異的腰痛が特異的腰痛の約2倍,高値であった。
【結論】
AKAは慢性腰痛においても有意に痛みを軽減させ,8割の患者で痛みを消失させた。AKAの適応については,特異的腰痛に比べ非特異的腰痛に有効(有効率100%)で,中等度以上の腰痛での有効率は特異的腰痛の約2倍であった。
本研究では,慢性腰痛でも特に非特異的腰痛においてAKAの高い有効性が示されたが,その理由は,非特異的腰痛は主に仙腸関節の機能障害に由来する可逆性の痛みであるのに対し,特異的腰痛は脊椎の変性を基盤とした不可逆性の変化に起因する痛みであるためと考えられた。
国民生活基礎調査によると,本邦における国民の有訴率は,男性では腰痛が第1位,女性では肩こりに次いで第2位と突出して多く,腰痛人口,通院者率,日常生活への影響のある者率は高齢になるに従い増加傾向にある。しかし,医療機関を受診しても腰痛が緩和した者は約20%と低く,働き盛りの離職者を生んでいる。また,65歳以上の高齢者の外来受診率は,脊柱障害が高血圧性疾患に次いで第2位と突出して多くADLの水準を下げないための対策が求められている。
近年,関節運動学的アプローチ-博田法(以下AKA)は急性腰痛に対して即効性のある技術として活用されているが,慢性腰痛を分類してAKAの適応・有効率を検証した報告はない。
【方法】
平成23年から平成28年に当施設に来所した高齢者のうち,①現在から1ヶ月以内に症状が存在,②持続期間が3ヶ月以上,③Vidual Analogue Scale(以下VAS)が「2以上」の腰痛患者23例(男性9例,女性14例),平均年齢77.3±7.9歳を対象とした。
AKA施行前後のVASをWilcoxonの符号付き順位検定と対応のあるt検定を用いて比較した。また,特異的腰痛と非特異的腰痛でのAKA施行前後のVASを有意水準を5%未満として,Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した。
【結果】
AKA施行後は,全例でVASが低下し,82.6%(23例中19例)はVASが0になった。VASの平均値は,AKA施行前が5.6±1.8(特異的腰痛5.9±1.5,非特異的腰痛5.4±1.9で,各群の値を比較した結果,有意差はなかった),施行後が0.6±1.4(特異的腰痛1.40±1.9,非特異的腰痛0.0±0.0で,各群の値を比較した結果,有意差が認められた(p<0.01))で,AKA施行前後でのVASを比較した結果,有意差が認められた(p<0.001)。
また,中等度以上(VAS=>5)の腰痛例18例(特異的9例,非特異的9例)におけるVASの平均値は,施行前が6.3±1.3(特異的腰痛6.2±1.2,非特異的腰痛6.3±1.4で,有意差はなかった),施行後は,0.8±1.6(特異的腰痛1.6±1.9,非特異的腰痛0.0±0.0で,有意差が認められた(p<0.05))で,AKA施行前後でのVASを比較した結果,有意差が認められた(p<0.001)。
なお,中等度以上の腰痛例において,AKA施行後に「5以上」VASが低下した者の割合は,特異的腰痛で55.6%(9例中5例),非特異的腰痛で100%(9例中9例)と,非特異的腰痛が特異的腰痛の約2倍,高値であった。
【結論】
AKAは慢性腰痛においても有意に痛みを軽減させ,8割の患者で痛みを消失させた。AKAの適応については,特異的腰痛に比べ非特異的腰痛に有効(有効率100%)で,中等度以上の腰痛での有効率は特異的腰痛の約2倍であった。
本研究では,慢性腰痛でも特に非特異的腰痛においてAKAの高い有効性が示されたが,その理由は,非特異的腰痛は主に仙腸関節の機能障害に由来する可逆性の痛みであるのに対し,特異的腰痛は脊椎の変性を基盤とした不可逆性の変化に起因する痛みであるためと考えられた。