[P-MT-17-1] 多職種による包括的なアプローチにより自宅退院可能となった多発性骨髄腫の1例
Keywords:多発性骨髄腫, 病的骨折, 多職種連携
【はじめに,目的】
多発性骨髄腫は溶骨性変化による易骨折性を呈するため,日常生活動作(ADL)の際に病的骨折や麻痺などの発生に注意する必要がある。また,化学療法・放射線療法など治療期間が長期に及ぶため,廃用症候群予防のために早期から運動療法を開始することが望ましい。今回,多発性骨髄腫に対し化学療法と自家末梢血幹細胞移植を行い,生着後に自宅退院となった症例を約1年間に渡り担当した。長期の治療に伴う有害事象を最小限に抑えるために,化学療法開始前より理学療法士(PT)を含む多職種で連携し,診療を行った症例について報告する。
【方法】
症例は65歳女性で,四肢・脊椎の溶骨性変化による骨痛により体動困難となり当院に入院し,入院後精査により多発性骨髄腫と診断された。初回入院時の理学療法評価では,上下肢MMT3レベル,Barthel Index(BI)35点であり,車椅子移乗困難であった。四肢・脊椎に多発骨病変があり,易骨折性と疼痛のため荷重制限と疼痛コントロールが必要であったため,骨転移キャンサーボード,緩和ケアチームが介入した。治療経過と理学療法評価から,多職種で包括的な目標設定を行い,理学療法プログラムを立案・実施した。
【結果】
化学療法実施前は,車椅子移乗までという活動度制限の中で筋力トレーニング,有酸素運動,動作練習を中心に行い,身体機能の改善,車椅子移乗自立を獲得した。化学療法実施中は,治療経過に応じて,骨転移キャンサーボード,緩和ケアチーム,病棟スタッフの多職種でカンファレンスを行い,理学療法目標を設定し,荷重制限を両上下肢均等荷重→両下肢2/3部分荷重→全荷重へと変更し,活動度を車椅子→両松葉杖歩行→両T字杖歩行獲得へと拡大した。化学療法,自家末梢血幹細胞移植に伴い骨髄抑制,嘔気,食欲不振などの副作用が見られたが,PTの介入だけではなく病棟スタッフの促しで自主トレーニングを継続し,身体機能の維持をはかった。多職種で連携したことで病的骨折や麻痺を予防しつつADLを拡大し,身体機能を維持・向上することができた。治療終了後は,在宅調整のための転院を挟み自宅退院となった。当院退院時の理学療法評価は上下肢MMT5レベル,両T字杖歩行自立を獲得しBIは100点であった。
【結論】
溶骨性変化を呈する多発性骨髄腫の患者に対する理学療法では,病的骨折や麻痺を予防する必要がある。また長期に渡る治療経過,治療に伴う有害事象の程度を把握し,廃用症候群の予防,QOLやADLの拡大を目的とした理学療法が重要となる。多職種での包括的なアプローチにより,より具体的な目標設定が可能となり,充実した理学療法プログラムの実施につながると考えられた。
多発性骨髄腫は溶骨性変化による易骨折性を呈するため,日常生活動作(ADL)の際に病的骨折や麻痺などの発生に注意する必要がある。また,化学療法・放射線療法など治療期間が長期に及ぶため,廃用症候群予防のために早期から運動療法を開始することが望ましい。今回,多発性骨髄腫に対し化学療法と自家末梢血幹細胞移植を行い,生着後に自宅退院となった症例を約1年間に渡り担当した。長期の治療に伴う有害事象を最小限に抑えるために,化学療法開始前より理学療法士(PT)を含む多職種で連携し,診療を行った症例について報告する。
【方法】
症例は65歳女性で,四肢・脊椎の溶骨性変化による骨痛により体動困難となり当院に入院し,入院後精査により多発性骨髄腫と診断された。初回入院時の理学療法評価では,上下肢MMT3レベル,Barthel Index(BI)35点であり,車椅子移乗困難であった。四肢・脊椎に多発骨病変があり,易骨折性と疼痛のため荷重制限と疼痛コントロールが必要であったため,骨転移キャンサーボード,緩和ケアチームが介入した。治療経過と理学療法評価から,多職種で包括的な目標設定を行い,理学療法プログラムを立案・実施した。
【結果】
化学療法実施前は,車椅子移乗までという活動度制限の中で筋力トレーニング,有酸素運動,動作練習を中心に行い,身体機能の改善,車椅子移乗自立を獲得した。化学療法実施中は,治療経過に応じて,骨転移キャンサーボード,緩和ケアチーム,病棟スタッフの多職種でカンファレンスを行い,理学療法目標を設定し,荷重制限を両上下肢均等荷重→両下肢2/3部分荷重→全荷重へと変更し,活動度を車椅子→両松葉杖歩行→両T字杖歩行獲得へと拡大した。化学療法,自家末梢血幹細胞移植に伴い骨髄抑制,嘔気,食欲不振などの副作用が見られたが,PTの介入だけではなく病棟スタッフの促しで自主トレーニングを継続し,身体機能の維持をはかった。多職種で連携したことで病的骨折や麻痺を予防しつつADLを拡大し,身体機能を維持・向上することができた。治療終了後は,在宅調整のための転院を挟み自宅退院となった。当院退院時の理学療法評価は上下肢MMT5レベル,両T字杖歩行自立を獲得しBIは100点であった。
【結論】
溶骨性変化を呈する多発性骨髄腫の患者に対する理学療法では,病的骨折や麻痺を予防する必要がある。また長期に渡る治療経過,治療に伴う有害事象の程度を把握し,廃用症候群の予防,QOLやADLの拡大を目的とした理学療法が重要となる。多職種での包括的なアプローチにより,より具体的な目標設定が可能となり,充実した理学療法プログラムの実施につながると考えられた。