[P-MT-17-2] 乳がん多発骨転移の疼痛により活動性低下を生じた患者に運動療法を施行した一症例
Keywords:多発骨転移, 運動療法, 疼痛
【はじめに,目的】
多発骨転移のがんのリハビリテーション(以下がんリハ)は病的骨折を起こすリスクがあるが,寝たきりや多くの合併症リスクを予防することの方が重要と報告されている。今回,乳がんの多発骨転移患者において,病的骨折のリスクが高い患者に運動療法を実施し,身体機能が改善した症例について報告する。
【方法】
症例は60代男性。当院にてX年に右乳がんと診断された。精査の結果,骨盤,肋骨,胸椎に転移所見を認めた。抗癌剤治療を中心に薬物療法を行っていたが,5年後に腰椎の疼痛が増強し,オキシコンチン60mgで疼痛コントロールされていたが困難となり,当院入院となった。MRIにてC2,C5-C7,T1,T8-T12,L1,L3に骨転移増大を認め,Th11-L3に14日間放射線治療が施行された。がんリハ開始前に骨転移キャンサーボードでがんリハの目標を設定した。Spinal Instability Neoplastic Scoreは16点であり,脊柱の不安定性は強いが,Performance Status-3で廃用が進んでいるため,筋力維持・強化を図ること,またトイレ移動の維持と腰部に負担の少ない移動手段の獲得を目標に進めることとなった。Barthel Index(以下BI)は80点,減点項目は移動と階段であり,移動は20m以上の独歩が困難,階段は医師の指示により非実施であった。筋力は徒手筋力測定器にて膝伸展筋力を評価し,右16.5kgf,左15.0kgfであり,体重支持指数(以下WBI)は右29%。左27%であった。TUGは16.7秒であった。神経所見としては,感覚は左大腿にしびれを認め,運動麻痺はなく,Frankel分類はDであった。安静時の疼痛は,放射線治療後に入院前の投薬量と同量でコントロール可能となったが,独歩のときの腰痛はVisual Analogue Scale(以下VAS)-90mmであった。移動時の疼痛が強いことにより,運動することに否定的であった。活動性低下に対するリスクを説明し,また負担の少ないADLを指導することにより,行動変容を促した。その他のがんリハ実施内容は,下肢のレジスタンストレーニング,持久力トレーニングとして自転車エルゴメーターを主に実施した。運動負荷のリスク管理としては,リハビリ前後に疼痛と神経所見が増悪していないか確認した。
【結果】
放射線治療後にがんリハを開始し,14日間実施した。膝伸展筋力は右21.0kgf,左19.5kgf,WBIでは右38%,左35%に改善,TUGは14.1秒に改善を認めた。移動による腰痛は両側T字杖歩行でVAS-60mm,固定式歩行器歩行ではVAS-35mmであり,独歩にくらべて疼痛は軽減した。BIは両側T字杖を使用することにより,45m以上の移動が獲得されたため,90点に改善した。また,がんリハ介入前に比べて,セルフエクササイズを積極的に実施するなど行動の変化を認め,活動性向上を認めた。その後,リハビリの継続および在宅での見取りに向けた環境整備目的に転院となった。
【結論】
多発骨転移のがんリハは病的骨折のリスクが高いが,骨転移キャンサーボードなどで事前に状態を確認し,運動負荷に注意して実施することは身体機能改善に重要と思われた。
多発骨転移のがんのリハビリテーション(以下がんリハ)は病的骨折を起こすリスクがあるが,寝たきりや多くの合併症リスクを予防することの方が重要と報告されている。今回,乳がんの多発骨転移患者において,病的骨折のリスクが高い患者に運動療法を実施し,身体機能が改善した症例について報告する。
【方法】
症例は60代男性。当院にてX年に右乳がんと診断された。精査の結果,骨盤,肋骨,胸椎に転移所見を認めた。抗癌剤治療を中心に薬物療法を行っていたが,5年後に腰椎の疼痛が増強し,オキシコンチン60mgで疼痛コントロールされていたが困難となり,当院入院となった。MRIにてC2,C5-C7,T1,T8-T12,L1,L3に骨転移増大を認め,Th11-L3に14日間放射線治療が施行された。がんリハ開始前に骨転移キャンサーボードでがんリハの目標を設定した。Spinal Instability Neoplastic Scoreは16点であり,脊柱の不安定性は強いが,Performance Status-3で廃用が進んでいるため,筋力維持・強化を図ること,またトイレ移動の維持と腰部に負担の少ない移動手段の獲得を目標に進めることとなった。Barthel Index(以下BI)は80点,減点項目は移動と階段であり,移動は20m以上の独歩が困難,階段は医師の指示により非実施であった。筋力は徒手筋力測定器にて膝伸展筋力を評価し,右16.5kgf,左15.0kgfであり,体重支持指数(以下WBI)は右29%。左27%であった。TUGは16.7秒であった。神経所見としては,感覚は左大腿にしびれを認め,運動麻痺はなく,Frankel分類はDであった。安静時の疼痛は,放射線治療後に入院前の投薬量と同量でコントロール可能となったが,独歩のときの腰痛はVisual Analogue Scale(以下VAS)-90mmであった。移動時の疼痛が強いことにより,運動することに否定的であった。活動性低下に対するリスクを説明し,また負担の少ないADLを指導することにより,行動変容を促した。その他のがんリハ実施内容は,下肢のレジスタンストレーニング,持久力トレーニングとして自転車エルゴメーターを主に実施した。運動負荷のリスク管理としては,リハビリ前後に疼痛と神経所見が増悪していないか確認した。
【結果】
放射線治療後にがんリハを開始し,14日間実施した。膝伸展筋力は右21.0kgf,左19.5kgf,WBIでは右38%,左35%に改善,TUGは14.1秒に改善を認めた。移動による腰痛は両側T字杖歩行でVAS-60mm,固定式歩行器歩行ではVAS-35mmであり,独歩にくらべて疼痛は軽減した。BIは両側T字杖を使用することにより,45m以上の移動が獲得されたため,90点に改善した。また,がんリハ介入前に比べて,セルフエクササイズを積極的に実施するなど行動の変化を認め,活動性向上を認めた。その後,リハビリの継続および在宅での見取りに向けた環境整備目的に転院となった。
【結論】
多発骨転移のがんリハは病的骨折のリスクが高いが,骨転移キャンサーボードなどで事前に状態を確認し,運動負荷に注意して実施することは身体機能改善に重要と思われた。