[P-MT-18-1] 腰椎変性側弯症患者の歩行解析による脊柱運動の特徴と臨床症状との関連性
Keywords:腰椎変性側弯症, 臨床症状, 側屈角度変化量
【はじめに,目的】
腰椎変性側弯症(Degenerative Lumbar Scoliosis:DLS)は,加齢による椎間板変性を基盤に生じたCobb角10°以上の側弯変形を腰椎部に有し,それに起因して腰痛や馬尾・神経根症状などの臨床症状を伴うものとして定義されている。DLS患者の臨床症状は静的アライメント異常が主な原因であり,歩行動作により増悪するとされている。そのため,静的アライメント異常が歩行時脊柱運動に影響を及ぼし歩行機能の低下を引き起こす可能性がある。しかし,DLS患者の詳細な歩行時脊柱運動と臨床症状や静的アライメント異常との関連性について明らかにした研究はない。そこで本研究は,静的アライメントが歩行時脊柱運動に与える影響および歩行時脊柱運動と臨床症状との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院を受診してDLSと診断され,本研究に同意の得られた11名をDLS群とした。また下肢や脊椎に整形外科的疾患の現病歴および既往歴のない健常高齢者10名をControl群とした。使用機器は赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion Systems社,UK),床反力計(AMTI社,USA)を使用した。マーカーはPlug-in-Gaitモデル(Plug in gait,ⓇPeak,Oxford,UK)を参考に全身の計35箇所に貼付し,胸椎と腰椎の座標系を作成するために追加で7箇所に貼付した。課題動作は10 mの快適速度歩行とし,計5試行測定した。解析区間は踵接地から次の同側の踵接地までの1歩行周期とした。得られたマーカー座標はVicon Workstation(Vicon Motion Systems社,UK)とVicon Bodybuilder(Vicon Motion Systems社,UK)を用いて解析し,体幹・胸椎・腰椎の1歩行周期中における側屈角度変化量(側屈ROM)を算出した。臨床症状の評価には,主観的評価としてVisual Analogue Scale(VAS)を用いて腰痛と下肢痛を評価した。また日本整形外科学会腰痛疾患質問票(Japanese orthopedic association back pain evaluation questionnaire:JOABPEQ)による評価も実施した。静的アライメントの評価には立位全脊柱レントゲン画像からCobb角,Sagittal Vertical Axis(SVA),Coronal Imbalance(CI)を計測した。
【結果】
DLS群はControl群と比較して歩行時の体幹・腰椎側屈ROMが有意に低値を示した。歩行時脊柱運動と臨床症状との関連性において,腰椎側屈ROMと腰痛VASとの間に強い負の相関,体幹・腰椎側屈ROMとJOABPEQの疼痛関連障害・歩行機能障害項目との間にそれぞれ強い正の相関がみられた。歩行時脊柱運動と静的アライメントとの関連性において,体幹側屈ROMとCIとの間に強い負の相関がみられた。
【結論】
本研究の結果から,DLS患者においてCIや腰痛が増加するほど,歩行中の体幹・腰椎側屈ROMが減少し,歩行機能が低下することが示唆された。
腰椎変性側弯症(Degenerative Lumbar Scoliosis:DLS)は,加齢による椎間板変性を基盤に生じたCobb角10°以上の側弯変形を腰椎部に有し,それに起因して腰痛や馬尾・神経根症状などの臨床症状を伴うものとして定義されている。DLS患者の臨床症状は静的アライメント異常が主な原因であり,歩行動作により増悪するとされている。そのため,静的アライメント異常が歩行時脊柱運動に影響を及ぼし歩行機能の低下を引き起こす可能性がある。しかし,DLS患者の詳細な歩行時脊柱運動と臨床症状や静的アライメント異常との関連性について明らかにした研究はない。そこで本研究は,静的アライメントが歩行時脊柱運動に与える影響および歩行時脊柱運動と臨床症状との関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院を受診してDLSと診断され,本研究に同意の得られた11名をDLS群とした。また下肢や脊椎に整形外科的疾患の現病歴および既往歴のない健常高齢者10名をControl群とした。使用機器は赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion Systems社,UK),床反力計(AMTI社,USA)を使用した。マーカーはPlug-in-Gaitモデル(Plug in gait,ⓇPeak,Oxford,UK)を参考に全身の計35箇所に貼付し,胸椎と腰椎の座標系を作成するために追加で7箇所に貼付した。課題動作は10 mの快適速度歩行とし,計5試行測定した。解析区間は踵接地から次の同側の踵接地までの1歩行周期とした。得られたマーカー座標はVicon Workstation(Vicon Motion Systems社,UK)とVicon Bodybuilder(Vicon Motion Systems社,UK)を用いて解析し,体幹・胸椎・腰椎の1歩行周期中における側屈角度変化量(側屈ROM)を算出した。臨床症状の評価には,主観的評価としてVisual Analogue Scale(VAS)を用いて腰痛と下肢痛を評価した。また日本整形外科学会腰痛疾患質問票(Japanese orthopedic association back pain evaluation questionnaire:JOABPEQ)による評価も実施した。静的アライメントの評価には立位全脊柱レントゲン画像からCobb角,Sagittal Vertical Axis(SVA),Coronal Imbalance(CI)を計測した。
【結果】
DLS群はControl群と比較して歩行時の体幹・腰椎側屈ROMが有意に低値を示した。歩行時脊柱運動と臨床症状との関連性において,腰椎側屈ROMと腰痛VASとの間に強い負の相関,体幹・腰椎側屈ROMとJOABPEQの疼痛関連障害・歩行機能障害項目との間にそれぞれ強い正の相関がみられた。歩行時脊柱運動と静的アライメントとの関連性において,体幹側屈ROMとCIとの間に強い負の相関がみられた。
【結論】
本研究の結果から,DLS患者においてCIや腰痛が増加するほど,歩行中の体幹・腰椎側屈ROMが減少し,歩行機能が低下することが示唆された。