[P-MT-18-2] 後期高齢女性における立位矢状面アライメントとバランス能力の関係
Keywords:後期高齢者, 姿勢, バランス能力
【はじめに,目的】
加齢に伴う高齢者の特徴的な姿勢変化として,円背といわれる脊柱後彎姿勢が多くみられる。脊柱後彎の影響は骨盤を介して下肢関節にも波及しており,バランス能力へも影響を及ぼすことが予測される。矢状面の下肢関節角度は簡便に評価が可能であり,バランス能力との関係を検討することで転倒リスクを考慮する際の一助となる可能性がある。
そこで,本研究では後期高齢女性における立位時の矢状面アライメントとバランス能力との関係について検討することを目的とした。
【方法】
対象は山間部地域の病院に入院,あるいは通院している後期高齢女性26名(平均年齢82.3±4.9歳)とした。中枢疾患が既往にある者,動作時痛,著明な視力,前庭,感覚障害がある者,研究の趣旨理解が困難な者は除外した。
矢状面アライメント評価は静止立位にて行った。脊柱アライメントはSpinal Mouse(index社製)を用いて骨盤前傾角度,胸椎後弯角度,腰椎前弯角度,脊柱前傾角度を測定した。3回測定を行い,その平均値を解析に採用した。下肢アライメントは利き足側の上前腸骨棘,上後腸骨棘,大転子,膝関節中心,外果,第5中足骨頭にマーカーをつけ,デジタルカメラにて静止画を撮影し,画像解析ソフトImage J Ver1.48を用いて股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度を測定し,実測値を解析に採用した。静的バランス能力の評価にタンデム立位時間,動的バランス能力の評価にTimed Up & Go test(以下TUGとする)を測定した。タンデム立位は前方肢を左右入れ替え,それぞれ2回ずつ測定を行い,最大保持時間を解析に採用した。TUGは2回測定を行い,早い方を解析に採用した。
統計学的解析にはSPSS Ver23を用いて骨盤前傾角度,胸椎後弯角度,腰椎前弯角度,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度とタンデム立位時間,TUGとの間の関係をPearsonの相関係数,およびSpearmanの順位相関係数を用いて危険率5%未満を有意として検定を行った。
【結果】
腰椎前弯角度,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度はTUGと有意な正の相関(それぞれr=0.396,r=0.415,r=0.460,r=0.370)を認めた。胸椎後弯角度,足関節背屈角度はタンデム立位時間と有意な正の相関(r=0.463,r=0.348)を認め,腰椎前弯角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度は有意な負の相関(r=-0.362,r=-0.357,r=-0.449)を認めた。
【結論】
腰椎前弯角度が減少,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度が増加するほどバランス能力が低下する可能性があることが示唆された。
これらのことから,筋力増強などの高強度の運動によるバランス能力改善が困難な虚弱高齢者などに対して,立位アライメントを修正することで転倒リスクの軽減が可能であると考える。また,転倒予防の面からも脊柱の生理的弯曲や下肢関節の伸展角度を維持することで転倒リスクの軽減が可能であると考える。
加齢に伴う高齢者の特徴的な姿勢変化として,円背といわれる脊柱後彎姿勢が多くみられる。脊柱後彎の影響は骨盤を介して下肢関節にも波及しており,バランス能力へも影響を及ぼすことが予測される。矢状面の下肢関節角度は簡便に評価が可能であり,バランス能力との関係を検討することで転倒リスクを考慮する際の一助となる可能性がある。
そこで,本研究では後期高齢女性における立位時の矢状面アライメントとバランス能力との関係について検討することを目的とした。
【方法】
対象は山間部地域の病院に入院,あるいは通院している後期高齢女性26名(平均年齢82.3±4.9歳)とした。中枢疾患が既往にある者,動作時痛,著明な視力,前庭,感覚障害がある者,研究の趣旨理解が困難な者は除外した。
矢状面アライメント評価は静止立位にて行った。脊柱アライメントはSpinal Mouse(index社製)を用いて骨盤前傾角度,胸椎後弯角度,腰椎前弯角度,脊柱前傾角度を測定した。3回測定を行い,その平均値を解析に採用した。下肢アライメントは利き足側の上前腸骨棘,上後腸骨棘,大転子,膝関節中心,外果,第5中足骨頭にマーカーをつけ,デジタルカメラにて静止画を撮影し,画像解析ソフトImage J Ver1.48を用いて股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度を測定し,実測値を解析に採用した。静的バランス能力の評価にタンデム立位時間,動的バランス能力の評価にTimed Up & Go test(以下TUGとする)を測定した。タンデム立位は前方肢を左右入れ替え,それぞれ2回ずつ測定を行い,最大保持時間を解析に採用した。TUGは2回測定を行い,早い方を解析に採用した。
統計学的解析にはSPSS Ver23を用いて骨盤前傾角度,胸椎後弯角度,腰椎前弯角度,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度,足関節背屈角度とタンデム立位時間,TUGとの間の関係をPearsonの相関係数,およびSpearmanの順位相関係数を用いて危険率5%未満を有意として検定を行った。
【結果】
腰椎前弯角度,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度はTUGと有意な正の相関(それぞれr=0.396,r=0.415,r=0.460,r=0.370)を認めた。胸椎後弯角度,足関節背屈角度はタンデム立位時間と有意な正の相関(r=0.463,r=0.348)を認め,腰椎前弯角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度は有意な負の相関(r=-0.362,r=-0.357,r=-0.449)を認めた。
【結論】
腰椎前弯角度が減少,脊柱前傾角度,股関節屈曲角度,膝関節屈曲角度が増加するほどバランス能力が低下する可能性があることが示唆された。
これらのことから,筋力増強などの高強度の運動によるバランス能力改善が困難な虚弱高齢者などに対して,立位アライメントを修正することで転倒リスクの軽減が可能であると考える。また,転倒予防の面からも脊柱の生理的弯曲や下肢関節の伸展角度を維持することで転倒リスクの軽減が可能であると考える。