The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-18] ポスター(運動器)P18

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-18-3] 脊椎矯正固定術術後患者における固定範囲が回復期リハビリテーション病院でのADLの予後に及ぼす影響

川口 俊太朗1, 伊藤 貴史1,3, 遠藤 敦士2 (1.苑田会リハビリテーション病院, 2.竹の塚脳神経リハビリテーション病院, 3.苑田第三病院)

Keywords:脊椎疾患, 固定術, ADL

【はじめに,目的】

近年,高齢化と医療の進歩に伴い,重篤な脊椎疾患に対して外科的治療の選択が増加している。当法人の急性期病院は,脊椎変性疾患患者に対して腰椎椎体間固定術,椎弓切除術が施行されている。また脊椎の変形が著しい患者に対し,脊椎矯正固定術(以下:固定術)を施行されることが多く,症例によって3椎間以上の多椎間固定術を施行している。しかし,固定術が必要とされる患者に関しては,術前から著明な歩行能力低下,運動機能障害,ADLの低下が見られることがあり,回復期リハビリテーション病院(以下:回リハ病院)に転院される患者も少なくない。また多椎間固定術を施行している患者は,過度な脊柱の可動が禁忌動作となるため,ADLの獲得に時間を要し在宅復帰を困難にしていることがある。しかし固定術患者の固定範囲の違いが回復期での運動機能やADLへの影響について明らかにされていないことが多い。そこで今回,回リハ病院に転院された固定術術後患者の固定範囲が退院時FIMに及ぼす影響について検討し,予後予測や治療方法の検討の一助とすることを目的とした。


【方法】

対象は,当法人の回リハ病院に入院された固定術術後患者44名(男性16名,女性28名,平均年齢73.2歳)とした。除外基準は,脊椎以外に著明な合併症を有しているものとした。

調査項目は,固定範囲,退院時FIM(細項目),FIM利得,FIM効率,転帰先,退院時歩行手段とした。

統計処理は,胸腰椎を跨いで固定術を行っているものをlong群,腰椎から下位の固定術を行なっている者をshort群とし,各郡の差の比較を行った。分析にはMann-WhitneyのU検定で行い,有意水準は5%とした。


【結果】

有意差を認めた項目は,FIM細項目の清拭(平均:short5.7点,long3.7点),下位更衣(平均:short5.7点,long4.3点),トイレ動作(平均:short6.5点,long5.3点),排便管理(平均:short6.9点,long5.7点),浴槽移乗(平均:short4.8点,long3.9点),在院日数,FIM効率となった。


【結論】

short群と比較しlong群では,下位更衣・トイレ・入浴動作で有意差を認め,以下の項目で自立した動作獲得に難渋することが示唆された。またlong群は有意に在院日数が長い結果となったが歩行では有意差は認められず脊椎の固定範囲が歩行の予後に影響しないという結果となった。下位更衣・トイレ・入浴動作は,多椎間固定術による脊柱可動性の制限,固定椎体へ過度なストレス回避のために動作制限していることが影響していると考えられる。固定椎間数が増加すると隣接椎間関節障害のリスクが高まると報告されていることから回リハ病院入院時の早期のうちから補助具の使用による代償的な動作指導を長期的に行い,安全な動作方法の定着を促すことが非常に重要となると考えられる。