[P-MT-18-4] 成人脊柱変形患者に対する後方矯正固定術が日常生活動作及び健康関連QOLに及ぼす影響
Keywords:成人脊柱変形, 日常生活動作, 健康関連QOL
【はじめに】
成人脊柱変形に対する脊椎固定術にて多くの愁訴は改善し健康関連QOLは改善する。しかし,多椎間に行われた矯正固定術で脊柱は柔軟性を失い,術後体幹屈曲を主とする日常生活動作(ADL)については困難を認める。そこで我々は,成人脊柱変形に対する矯正固定術後の困難となり得る「動作困難感」について調査し,術後の爪切りやかがみ動作など前屈動作は術前より困難であった。それらの「動作困難感」は,徐々に改善傾向を認めると報告したが,「しているADL」については明らかでない。
【目的】
成人脊柱変形患者に対する後方矯正固定術後の日常生活動作への影響を明らかにし,理学療法介入を探ること。
【方法】
対象は2013年8月から2014年9月に当院整形外科にて,手術予定の成人脊柱変形患者47名のうち測定が可能であった30名(女性28名,男性2名,平均年齢65.9歳,身長147.1cm,体重48.9kg,BMI22.5kg/m2)とした。術後6ヶ月までは硬性コルセット,術後12ヶ月までは軟性コルセットを装着し,骨癒合が得られるまで過度な体幹前屈・回旋動作は制限している。評価項目はADLはFunctional Independence Measure(FIM)の各運動項目の術前,退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月とし,健康関連QOLはOswestry Disability Index(ODI)とScoliosis Research Society-22(SRS-22)の術前,術後6ヶ月,術後12ヶ月とした。統計解析はFIMの各運動項目,ODI,SRS-22の推移の検討にはWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した。解析にはSPSS,Statistics21を使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
健康関連QOLは術前と比べて術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意な改善を認めた(ODI 40.2→30.1→27.7,SRS-22は2.5→3.4→3.3(p<0.01))。FIM運動項目で,術前と比べて退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意に低下を認めた項目は清拭(7.0→5.5→6.2→6.6(p<0.05)),更衣下衣(6.9→4.7→6.0→6.2(p<0.001)),移乗浴槽(6.8→5.9→6.1→6.4(p<0.05))であった。一方,術前と比べて術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意に改善を認めた項目は歩行(6.5→6.2→6.7→6.8(p<0.05))であった。
【結論】
成人脊柱変形患者に対する矯正固定術にて健康関連QOLや歩行は改善した。一方,清拭や更衣下衣などの前屈を伴う動作や,浴槽へ沈み込んだり上がったりする浴槽動作は,術後12ヶ月においても低下していることが明らかとなった。術後12ヶ月以降は,軟性コルセットを外した生活動作が可能となる為,今後更なる調査が必要である。骨癒合や体幹前屈動作の可否を医師と確認しながら,経過時期に合わせた動作指導が必要である。
成人脊柱変形に対する脊椎固定術にて多くの愁訴は改善し健康関連QOLは改善する。しかし,多椎間に行われた矯正固定術で脊柱は柔軟性を失い,術後体幹屈曲を主とする日常生活動作(ADL)については困難を認める。そこで我々は,成人脊柱変形に対する矯正固定術後の困難となり得る「動作困難感」について調査し,術後の爪切りやかがみ動作など前屈動作は術前より困難であった。それらの「動作困難感」は,徐々に改善傾向を認めると報告したが,「しているADL」については明らかでない。
【目的】
成人脊柱変形患者に対する後方矯正固定術後の日常生活動作への影響を明らかにし,理学療法介入を探ること。
【方法】
対象は2013年8月から2014年9月に当院整形外科にて,手術予定の成人脊柱変形患者47名のうち測定が可能であった30名(女性28名,男性2名,平均年齢65.9歳,身長147.1cm,体重48.9kg,BMI22.5kg/m2)とした。術後6ヶ月までは硬性コルセット,術後12ヶ月までは軟性コルセットを装着し,骨癒合が得られるまで過度な体幹前屈・回旋動作は制限している。評価項目はADLはFunctional Independence Measure(FIM)の各運動項目の術前,退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月とし,健康関連QOLはOswestry Disability Index(ODI)とScoliosis Research Society-22(SRS-22)の術前,術後6ヶ月,術後12ヶ月とした。統計解析はFIMの各運動項目,ODI,SRS-22の推移の検討にはWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した。解析にはSPSS,Statistics21を使用し,有意水準を5%未満とした。
【結果】
健康関連QOLは術前と比べて術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意な改善を認めた(ODI 40.2→30.1→27.7,SRS-22は2.5→3.4→3.3(p<0.01))。FIM運動項目で,術前と比べて退院時,術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意に低下を認めた項目は清拭(7.0→5.5→6.2→6.6(p<0.05)),更衣下衣(6.9→4.7→6.0→6.2(p<0.001)),移乗浴槽(6.8→5.9→6.1→6.4(p<0.05))であった。一方,術前と比べて術後6ヶ月,術後12ヶ月に有意に改善を認めた項目は歩行(6.5→6.2→6.7→6.8(p<0.05))であった。
【結論】
成人脊柱変形患者に対する矯正固定術にて健康関連QOLや歩行は改善した。一方,清拭や更衣下衣などの前屈を伴う動作や,浴槽へ沈み込んだり上がったりする浴槽動作は,術後12ヶ月においても低下していることが明らかとなった。術後12ヶ月以降は,軟性コルセットを外した生活動作が可能となる為,今後更なる調査が必要である。骨癒合や体幹前屈動作の可否を医師と確認しながら,経過時期に合わせた動作指導が必要である。