[P-MT-19-3] 当院における骨粗鬆症リエゾンサービスの現状
Keywords:骨粗鬆症, ロコモティブシンドローム, 運動器不安定症
【はじめに,目的】
近年,骨粗鬆症学会を中心に骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)に取り組む施設が増加している。当院では2015年4月より医師,看護師,理学療法士,作業療法士でOLSを開始した。目的は再転倒・骨折の予防,体幹筋強化などを目的とした運動療法の指導・習得である。今回は,OLS開始時より約1年間の現状,問題点と対策について報告する。
【方法】
2015年4月から2016年6月の期間中,当院で骨粗鬆症治療薬を投与されている患者の中で,外来にてOLSに同意の得られた患者を対象とした。対象は30名で年齢77±6.8歳,男性4名,女性26名であった。主病名は椎体骨折16名,大腿骨頸部骨折1名,上腕骨骨折3名,前腕骨骨折3名,その他6名であった。FOSTA-5.2±1.4,YAM値70.7±12.7%と骨密度が低く,ロコモ25は31.5±26.5点で要介護のリスクが高かった。
評価項目は形態測定とパフォーマンステストに加え,精神面やADL評価も行い,それに基づいてホームプログラムの指導を個別で行った。頻度は平均月1回であり,平均3カ月ごとに再評価を行った。
【結果】
開始後自己中断となった患者は13名であった。3名の患者は自宅での運動が可能となったため終了となった。継続できた14名中,自宅での運動が実施できたのは8名であった。それ以外の6名は外来時のみ運動を実施した。
自己中断群は10m歩行速度9.8±3.1秒,TUG12.2±2.6秒と歩行能力は比較的良好であったが,バランス能力は片脚立位9.5±20.4秒で運動器不安定症の基準を満たしており,2ステップ値は0.9±0.2と年齢基準値を下回っていた。MMSEは26.5±3.1点と認知症の進行に注意が必要であった。FIMは119.3±13.4点で移動項目や,移乗,入浴で介助が必要な患者が36.3%であった。自己中断した原因としては骨粗鬆症である自覚が乏しいこと,運動の必要性が理解不十分で無関心であること,公共交通機関の利用が困難などの理由で通院時の交通手段がなく,家族の送迎が必要なことが挙げられた。対策として当院のOLSパンフレットの作成,自宅での運動を記載するチェックシートの作成,定期的に身体機能や認知機能の評価を行いフィードバックを実行,骨粗鬆症患者や地域の方に向けた骨粗鬆症に関する教室の計画,受診日と合わせたリハの実施を行った。
【結論】
先行研究より運動指導を繰り返し行い,1年間の運動を継続したことで転倒は約半数,骨折は3分の1に軽減したとの報告がある。また,他の研究では運動介入により閉経後女性の骨密度維持・増加効果があると提唱している。このように,骨粗鬆症の治療の中で運動は必要不可欠であり,老化による身体機能や認知機能の低下を減少させるためにも運動に対する意識改革が今後も必要であると考える。また,身体機能や認知機能の個人差が大きく,運動療法は身体機能によって個別に処方される必要がある。その効果を判定し身体機能や認知機能の変化を追うと共に継続率の向上に努めたい。
近年,骨粗鬆症学会を中心に骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)に取り組む施設が増加している。当院では2015年4月より医師,看護師,理学療法士,作業療法士でOLSを開始した。目的は再転倒・骨折の予防,体幹筋強化などを目的とした運動療法の指導・習得である。今回は,OLS開始時より約1年間の現状,問題点と対策について報告する。
【方法】
2015年4月から2016年6月の期間中,当院で骨粗鬆症治療薬を投与されている患者の中で,外来にてOLSに同意の得られた患者を対象とした。対象は30名で年齢77±6.8歳,男性4名,女性26名であった。主病名は椎体骨折16名,大腿骨頸部骨折1名,上腕骨骨折3名,前腕骨骨折3名,その他6名であった。FOSTA-5.2±1.4,YAM値70.7±12.7%と骨密度が低く,ロコモ25は31.5±26.5点で要介護のリスクが高かった。
評価項目は形態測定とパフォーマンステストに加え,精神面やADL評価も行い,それに基づいてホームプログラムの指導を個別で行った。頻度は平均月1回であり,平均3カ月ごとに再評価を行った。
【結果】
開始後自己中断となった患者は13名であった。3名の患者は自宅での運動が可能となったため終了となった。継続できた14名中,自宅での運動が実施できたのは8名であった。それ以外の6名は外来時のみ運動を実施した。
自己中断群は10m歩行速度9.8±3.1秒,TUG12.2±2.6秒と歩行能力は比較的良好であったが,バランス能力は片脚立位9.5±20.4秒で運動器不安定症の基準を満たしており,2ステップ値は0.9±0.2と年齢基準値を下回っていた。MMSEは26.5±3.1点と認知症の進行に注意が必要であった。FIMは119.3±13.4点で移動項目や,移乗,入浴で介助が必要な患者が36.3%であった。自己中断した原因としては骨粗鬆症である自覚が乏しいこと,運動の必要性が理解不十分で無関心であること,公共交通機関の利用が困難などの理由で通院時の交通手段がなく,家族の送迎が必要なことが挙げられた。対策として当院のOLSパンフレットの作成,自宅での運動を記載するチェックシートの作成,定期的に身体機能や認知機能の評価を行いフィードバックを実行,骨粗鬆症患者や地域の方に向けた骨粗鬆症に関する教室の計画,受診日と合わせたリハの実施を行った。
【結論】
先行研究より運動指導を繰り返し行い,1年間の運動を継続したことで転倒は約半数,骨折は3分の1に軽減したとの報告がある。また,他の研究では運動介入により閉経後女性の骨密度維持・増加効果があると提唱している。このように,骨粗鬆症の治療の中で運動は必要不可欠であり,老化による身体機能や認知機能の低下を減少させるためにも運動に対する意識改革が今後も必要であると考える。また,身体機能や認知機能の個人差が大きく,運動療法は身体機能によって個別に処方される必要がある。その効果を判定し身体機能や認知機能の変化を追うと共に継続率の向上に努めたい。