[P-MT-19-5] 高位脛骨骨切り術後患者における患者教育ツール確立にむけて
~アンケートを用いた現状把握~
Keywords:高位脛骨骨切り術, 不安, 患者教育
【はじめに,目的】
近年,全人工膝関節置換術(TKA)や全人工股関節置換術において機能的改善のみならず,術後痛の軽減や心理的安定性の向上に患者教育の有用性が報告されている。しかしながら,高位脛骨骨切り術(HTO)における患者教育についての有用性を示した報告は少ない。そこで,今回我々はHTO術後患者の患者教育ツール確立に向けて心理的要素における現状把握を行うために術前から1年後(抜釘時)までの不安,満足度をアンケートにて実施し,その経時的変化や主観的な意見も合わせて調査し検討することを目的とした。
【方法】
2015年1月~2016年8月に当院にてHTOを施行し,データ収集をできた32例(男性6例,女性26例,平均年齢63.8歳)を対象とした。術前(Pre),退院時(Ent),1年後(PO1Y)にアンケートを配付し,情報を収集した。アンケートは,HTO術後の不安について自由記述と不安及び満足度の程度をVisual Analog Scale(VAS)にて回答を得た。不安の項目は生活,今後の治療計画(治療),膝の経過(経過)とし,術後の満足度についてはEnt,PO1Yで調査した。統計学的処理は各項目の不安に関してはPre,Ent,PO1YをSteel-Dwass法にて比較し,満足度に関しては退院時,1年後をWelchのt検定にて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
不安について(Pre,Ent,PO1Y),術後の満足度について(Ent,PO1Y)VASの経時的変化の平均値を示す。生活:4.1→4.3→1.8,治療:3.3→4.3→2.2,経過:4.0→4.7→2.6,満足度:7.4→7.7であった。有意差があった項目は生活のPreとPO1Y(p=0.04),EntとPO1Y(p=0.02)の項目であった。その他の項目では有意差はなかった。自由記述での代表的な不安を各項目について(Pre,Ent,PO1Y)記載する。生活(仕事44%→痛み57%→不安なし75%),治療(痛み,筋力100%→リハビリ55%→予後40%),経過(仕事66%→痛み43%→不安なし67%)であった。
【結論】
生活の不安において,不安のVASがPO1Yに有意な減少が認められたがpreとEntでは変化がみられなかった。Ent時には仕事復帰や痛みに対する不安が自由記述されている。しかし,PO1Yにはこれらの不安は解消されており,このことは患者教育内容に反映する必要があると思われた。治療や経過に関してPre,Entと比較し,PO1Yでの不安のVASの平均値は軽減したものの,各時期での有意差は認められなかった。Entでは「痛みがいつまで続くのか」「仕事はいつから復帰できるのか」といった意見があり,入院中に多くの不安を解決出来ていない。平川らはTKA術後患者においての術後リハの流れを示したビデオと担当理学療法士の説明や質疑応答を行う患者教育を実施し,心理状態の安定性と術後痛の軽減に有用であると報告している。今後はPre,Entに抱いていた治療や経過の不安に対して,ビデオやパンフレットなど具体的なツールを検討し,有用な患者教育を行っていきたい。
近年,全人工膝関節置換術(TKA)や全人工股関節置換術において機能的改善のみならず,術後痛の軽減や心理的安定性の向上に患者教育の有用性が報告されている。しかしながら,高位脛骨骨切り術(HTO)における患者教育についての有用性を示した報告は少ない。そこで,今回我々はHTO術後患者の患者教育ツール確立に向けて心理的要素における現状把握を行うために術前から1年後(抜釘時)までの不安,満足度をアンケートにて実施し,その経時的変化や主観的な意見も合わせて調査し検討することを目的とした。
【方法】
2015年1月~2016年8月に当院にてHTOを施行し,データ収集をできた32例(男性6例,女性26例,平均年齢63.8歳)を対象とした。術前(Pre),退院時(Ent),1年後(PO1Y)にアンケートを配付し,情報を収集した。アンケートは,HTO術後の不安について自由記述と不安及び満足度の程度をVisual Analog Scale(VAS)にて回答を得た。不安の項目は生活,今後の治療計画(治療),膝の経過(経過)とし,術後の満足度についてはEnt,PO1Yで調査した。統計学的処理は各項目の不安に関してはPre,Ent,PO1YをSteel-Dwass法にて比較し,満足度に関しては退院時,1年後をWelchのt検定にて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
不安について(Pre,Ent,PO1Y),術後の満足度について(Ent,PO1Y)VASの経時的変化の平均値を示す。生活:4.1→4.3→1.8,治療:3.3→4.3→2.2,経過:4.0→4.7→2.6,満足度:7.4→7.7であった。有意差があった項目は生活のPreとPO1Y(p=0.04),EntとPO1Y(p=0.02)の項目であった。その他の項目では有意差はなかった。自由記述での代表的な不安を各項目について(Pre,Ent,PO1Y)記載する。生活(仕事44%→痛み57%→不安なし75%),治療(痛み,筋力100%→リハビリ55%→予後40%),経過(仕事66%→痛み43%→不安なし67%)であった。
【結論】
生活の不安において,不安のVASがPO1Yに有意な減少が認められたがpreとEntでは変化がみられなかった。Ent時には仕事復帰や痛みに対する不安が自由記述されている。しかし,PO1Yにはこれらの不安は解消されており,このことは患者教育内容に反映する必要があると思われた。治療や経過に関してPre,Entと比較し,PO1Yでの不安のVASの平均値は軽減したものの,各時期での有意差は認められなかった。Entでは「痛みがいつまで続くのか」「仕事はいつから復帰できるのか」といった意見があり,入院中に多くの不安を解決出来ていない。平川らはTKA術後患者においての術後リハの流れを示したビデオと担当理学療法士の説明や質疑応答を行う患者教育を実施し,心理状態の安定性と術後痛の軽減に有用であると報告している。今後はPre,Entに抱いていた治療や経過の不安に対して,ビデオやパンフレットなど具体的なツールを検討し,有用な患者教育を行っていきたい。