The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-20] ポスター(運動器)P20

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-20-5] Pilon骨折術後に脛骨前面中央部で歩行時痛を訴えた症例に対し後足部アライメント修正が効果的であった一例

千田 佑太, 小野寺 智亮, 梅田 健太郎, 荒木 浩二郎, 菅原 亮太, 谷口 達也 (医療法人徳洲会札幌徳洲会病院整形外科外傷センター)

Keywords:Pilon骨折, アライメント, 足底挿板療法

【はじめに,目的】

Pilon骨折は高エネルギー外傷で生じる関節内骨折であり,受傷外力や手術侵襲に伴う軟部組織損傷により足関節ROM制限が問題となりやすい。そのため足関節周囲での愁訴を訴える症例を多く経験するが,本症例は独歩開始後に脛骨前面中央部で歩行時痛が出現した一例である。今回,足底挿板療法により後足部アライメントを修正することで歩行時痛の改善が得られたため報告する。


【方法】

30代後半,男性,落馬により左開放性Pilon骨折(AO分類43-C3.2,Gustilo分類typeIIIA)を受傷した。受傷当日に創外固定術,受傷26日後に最終手術が施行され脛骨,腓骨をplateで固定された。最終手術後より足関節自他動ROM運動が許可された。最終術後4週より1/3部分荷重が開始となりその後は段階的に荷重量を漸増し7週より全荷重開始となった。12週で自宅退院となり以後外来にて週2回の頻度で理学療法が継続された。術後3ヵ月評価にて足関節ROM(自動/他動):背屈0°/5°底屈40°/45°回内0°回外20°,足関節MMT:下腿三頭筋2+,腓骨筋3,歩行時は脛骨前面中央部に骨が捻じれるような痛み(VAS:61mm)があり,圧痛や運動時痛は認めなかった。アライメントは左立脚時に膝関節外反,下腿外旋,後足部回外,内側縦アーチの増大,内側ホイップを認めた。


【結果】

理学療法は踵骨の直立化と下腿の内旋誘導を目的に外側ヒールウェッジ,内側縦アーチパットを挿入し,足底挿板による後足部アライメントの修正を行なった。また,後方組織の柔軟性改善を目的に足趾,足関節自他動ROM運動や腓骨筋を中心とした足関節周囲筋の筋力トレーニングを実施した。術後6カ月評価にて足関節ROM(自動/他動):背屈5°/10°底屈45°/50°回内0°回外20°,足関節MMT:下腿三頭筋3,腓骨筋4,脛骨前面中央部での歩行時痛は消失し,歩行時のアライメントは改善傾向である。


【結論】

本症例は後足部回外,膝関節外反アライメントによって脛骨前面中央部に捻じれのストレスがかかり疼痛が生じていたと考える。仲宿らはシンスプリントを歩行時における後足部のアライメントによって回内タイプと回外タイプに分類している。回外タイプは回外接地に伴う下腿の外旋と膝を含めた脛骨上部の内旋が生じることで脛骨中央部に捻じれのストレスが集中し骨性の疼痛が誘発されると推察している。本症例も同様の機序により脛骨前面中央部に疼痛が生じていた可能性がある。Pilon骨折術後のように足関節ROM制限に伴うアライメント不良によって歩行時痛を認める症例には足底挿板療法によりアライメントを修正することが重要と考える。