The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-22] ポスター(運動器)P22

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-22-2] 人工股関節置換術後の大腿神経麻痺に対して早期より神経筋電気刺激を随意運動と同時に施行した1症例

赤羽 弘泰, 永富 丈博, 大羽 明美 (北アルプス医療センターあづみ病院リハビリテーション科)

Keywords:人工股関節置換術, 大腿神経麻痺, 神経筋電気刺激

【はじめに,目的】

人工股関節置換術(以下,THA)に伴って生じる大腿神経麻痺は,比較的まれな合併症である。大腿神経麻痺を呈した場合,腸腰筋・大腿四頭筋などの大腿前面筋の麻痺が出現する。これにより歩行動作中の膝折れが発生しやすく,転倒および転倒恐怖感が増加し,結果としてADL・QOLの低下を引き起こす。しかし,大腿神経麻痺に対しての治療が確立されていないのも現状である。今回,左THA後に大腿神経麻痺を呈し,早期より随意運動と同時に神経筋電気刺激(以下,NMES)を施行した結果,短期間で筋力回復が認められた症例を経験したので報告する。


【方法】

[症例]

年齢:70歳代,性別:女性,BMI:31,入院前ADL:自立,既往歴:右THA,左変形性膝関節症,高血圧,高脂血症。

[現病歴]

左股関節痛が徐々に悪化し2015年12月に当院整形外科を受診。2016年5月に左変形性股関節症に対してTHAを施行された。術式はBauer法により前外側侵入にて施行され,脱臼肢位は伸展・外旋・内転であった。術後プログラムとして術後1週は接地程度,術後1~4週まで半荷重,術後4週から全荷重の指示で実施した。

[経過]

手術翌日より,左大腿四頭筋の筋収縮が認められず膝関節伸展MMTは0であった。主治医より,針筋電図上も電気的信号が認められず,術後の大腿神経麻痺と診断された。術後1週目の評価として,MMTは股関節屈曲2,膝関節伸展0,歩行は膝装具装着して3動作揃え型の歩行器歩行であった。理学療法プログラムとして,術後1週の半荷重開始より自動運動・荷重練習の際,随意運動に合わせてNMES(伊藤超短波株式会社NM-F1)を大腿四頭筋に同時に施行した。NMESの設定は周波数50Hz,パルス幅200μsec,強度は筋収縮が得られ疼痛閾値下での最大値で実施した。介入は術後8週間継続して実施し,大腿四頭筋の筋活動を定期的に表面筋電図にて評価した。


【結果】

8週間の理学療法介入の結果,MMTは股関節屈曲5,膝関節伸展5まで改善し,表面筋電図上も大腿直筋・内側広筋・外側広筋すべてに有意な変化を認めた。歩行は膝装具も不要になり,ロッキング・膝折れなく2動作前型で杖歩行自立,ADLも自立となり自宅退院に至った。


【結論】

今回,大腿神経麻痺を呈した症例に対して,随意運動と同時にNMESを使用した結果,短期間で筋力回復が認められADL自立,自宅退院となった。当院では本症例と同様の患者が他に3例いたが,自動運動のみあるいは自動運動とNMESを単独で実施しているだけでは,短期間での筋力回復は認められなかった。MMT0の状態でも術後早期より随意運動に合わせてNMESを施行することで脱神経萎縮の抑制に加え,運動制御の面から不使用による脳の機能不全の予防にも効果があったと考えられる。これらの効果と神経の自然回復が合わさり早期に筋力回復が認められたと考える。今回の結果が同疾患患者や治療に難渋する理学療法士に対して一助になれば良いと考える。