第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-23] ポスター(運動器)P23

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-23-2] 人工膝関節全置換術後早期患者の膝関節伸展筋力の強度の違いによる膝の同時収縮について

松井 直人1, 小林 巧2, 神成 透1, 堀内 秀人3, 角瀬 邦晃1, 野陳 佳織4, 大川 麻衣子5 (1.北海道整形外科記念病院リハビリテーション科, 2.北海道千歳リハビリテーション学院理学療法学科, 3.NTT東日本病院リハビリテーションセンター, 4.時計台記念病院リハビリテーション部通所リハビリテーション科, 5.札幌山の上病院リハビリテーション部)

キーワード:同時収縮, 人工膝関節全置換術, ハムストリングス

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)は,膝の痛み,可動域制限,あるいは筋力低下などを引き起こす。治療の一つに,機能改善を目的とした人工膝関節全置換術(TKA)がある。Jenniferらは,TKA患者の膝伸展運動における術側の膝屈伸筋の筋活動は非術側よりも有意に高かったと報告している。ADL上での活動に注目すると,様々な強度での同時収縮についての検討が必要と考えられるが,これまで膝伸展最大収縮時の同時収縮に関する報告のみであり,膝伸展筋力の強度の違いによって同時収縮が変化するかは不明である。本研究の目的は,TKA後早期患者の術側,非術側,高齢者,および若年者において膝伸展筋力の強度の違いによる膝同時収縮(Co-activation Index:CI)について調査,検討することである。

【方法】対象は,TKA後4週が経過した9名(TKA群:平均年齢68.2歳),健常高齢者10名(高齢群:平均年齢68.0歳),健常若年者10名(若年群:平均年齢22.9歳)とした。運動課題は,筋機能評価運動装置(Biodex medical systems社製)を使用し,膝関節60°屈曲位の座位にて等尺性膝関節伸展運動とした。膝伸展の等尺性最大随意収縮時の筋力を100%とし,最大随意収縮の80%,60%,40%,および20%をそれぞれモニター上で確認させながら,3秒間の収縮を行い,この時の筋活動量について測定した。筋活動量の測定には,筋電計(Noraxon社製)を使用し,導出筋は大腿二頭筋(BF)とした。CIは,次の式から算出した。CI=各収縮レベルにおける膝伸展運動時のBFの筋活動量/BFの最大随意収縮時の筋活動量。統計学的分析として,TKA群の術側,非術側,高齢群および若年群のCIについて各収縮レベルにおける群間および群内比較に一元配置分散分析を用い,多重比較としてBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。



【結果】群間比較において,TKA群の術側,非術側,高齢群および若年群の各群間に有意な差は認められなかった。群内比較において,TKA群の術側および非術側では収縮レベルによるCIに有意な差は認められなかった。高齢群の20%CI(0.05)は,100%CI(0.22)および80%CI(0.20)と比較し有意に低値を示した(p<0.05)。若年群の100%CI(0.18)は,他の全ての収縮レベルでのCI(80%=0.10,60%=0.06,40%=0.05,20%=0.03)と比較し有意に高値を示した(p<0.05)。



【結論】本研究の結果から,高齢群および若年群は膝伸展筋力の強度によってCIが異なるが,TKA群では膝伸展筋力の強度の違いによるCIに差が認められなかった。膝の同時収縮は関節安定性に貢献するとされる一方で,関節圧迫力を高めると報告されている。健常者では収縮力に応じた適切な膝同時収縮により関節安定性を得ているが,TKA患者では収縮力に応じた適切な同時収縮が行えず,関節に過度な負荷となるような神経筋制御機構の機能不全が存在するかもしれない。今後は,荷重下での運動強度によるCIなどにより詳細に検討していきたい。