[P-MT-23-3] 人工膝関節全置換術後患者における立ち上がり動作の筋活動パターン
Keywords:人工膝関節全置換術, 立ち上がり動作, 筋活動パターン
【目的】立ち上がり動作は多くの日常生活動作に関与する機能的な動作である。人工膝関節全置換術(TKA)後患者の立ち上がり動作の筋活動に関し,Miznerらは,TKA患者の術側は非術側と比較して大腿四頭筋の筋活動量が有意に低値であると報告するなど筋活動量に関する報告は散見される。しかし,これまで筋活動開始時間など筋活動パターンに関する報告は見当たらない。本研究の目的は,立ち上がり動作課題を用いて,TKA患者の術側および非術側,健常高齢者,健常若年者の筋活動開始時間について比較し,立ち上がり動作の筋活動パターンについて検討することである。
【方法】対象はTKA後4週が経過した10名(TKA群:平均年齢68.9歳)と健常高齢者10名(高齢群:平均年齢68.0歳),健常若年者10名(若年群:平均年齢23.0歳)とした。施行動作は,音刺激開始後すぐに立ち上がりを行う動作とした。Noraxon社製筋電計を使用し,TKA群は術側および非術側,高齢群および若年群は非利き足について測定した。導出筋は大殿筋(GM),中殿筋(GMe),長内転筋(AL),外側広筋(VL),大腿二頭筋(BF),前脛骨筋(TA)および外側腓腹筋(GL)とした。音刺激開始をtime0とし,time0から安静時の平均筋活動の2SDを最初に越えた時間を筋活動開始時間と定義した。統計学的分析として,TKA群の術側,非術側,高齢群および若年群の筋活動開始時間の比較および各群内における筋活動開始時間の比較に二元配置分散分析を実施し,多重比較の検定にBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】各群間の筋活動開始時間の比較について,BFは術側(0.48±0.19s)と比較し高齢群(0.71±0.19s)で有意に遅延し,GLは術側(0.40±0.21s)と若年群(0.46±0.19s)と比較し高齢群(0.76±0.19s)で有意に遅延した。各群内の筋活動開始時間の比較について,術側ではAL,VLおよびBFと比較しTAが有意に早かった。非術側ではVLとGLと比較しGMeとTAが有意に早かった。また,高齢群ではGLと比較しTAが有意に早かった。若年群ではAL,VLおよびBFと比較しTAが有意に早かった。
【結論】本研究結果から,TKA群では術側のBF,GLの筋活動開始時間が高齢群より有意に早くなることが観察された。TKA患者ではBFの活動を増加させることによって膝の安定性を高めていることが報告されており,術側では膝屈筋の活動を早めることで,動作開始前の姿勢安定化を図っている可能性が推察される。また,群内比較において,術側の筋活動パターンは非術側および高齢群と異なることが観察された。これらは重心位置や重心移動の速さ,体幹や下腿傾斜角など運動学的違いが影響していると考えられ,今後,TKA後の立ち上がり動作時の運動学的解析と併せて検討していきたい。
【方法】対象はTKA後4週が経過した10名(TKA群:平均年齢68.9歳)と健常高齢者10名(高齢群:平均年齢68.0歳),健常若年者10名(若年群:平均年齢23.0歳)とした。施行動作は,音刺激開始後すぐに立ち上がりを行う動作とした。Noraxon社製筋電計を使用し,TKA群は術側および非術側,高齢群および若年群は非利き足について測定した。導出筋は大殿筋(GM),中殿筋(GMe),長内転筋(AL),外側広筋(VL),大腿二頭筋(BF),前脛骨筋(TA)および外側腓腹筋(GL)とした。音刺激開始をtime0とし,time0から安静時の平均筋活動の2SDを最初に越えた時間を筋活動開始時間と定義した。統計学的分析として,TKA群の術側,非術側,高齢群および若年群の筋活動開始時間の比較および各群内における筋活動開始時間の比較に二元配置分散分析を実施し,多重比較の検定にBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】各群間の筋活動開始時間の比較について,BFは術側(0.48±0.19s)と比較し高齢群(0.71±0.19s)で有意に遅延し,GLは術側(0.40±0.21s)と若年群(0.46±0.19s)と比較し高齢群(0.76±0.19s)で有意に遅延した。各群内の筋活動開始時間の比較について,術側ではAL,VLおよびBFと比較しTAが有意に早かった。非術側ではVLとGLと比較しGMeとTAが有意に早かった。また,高齢群ではGLと比較しTAが有意に早かった。若年群ではAL,VLおよびBFと比較しTAが有意に早かった。
【結論】本研究結果から,TKA群では術側のBF,GLの筋活動開始時間が高齢群より有意に早くなることが観察された。TKA患者ではBFの活動を増加させることによって膝の安定性を高めていることが報告されており,術側では膝屈筋の活動を早めることで,動作開始前の姿勢安定化を図っている可能性が推察される。また,群内比較において,術側の筋活動パターンは非術側および高齢群と異なることが観察された。これらは重心位置や重心移動の速さ,体幹や下腿傾斜角など運動学的違いが影響していると考えられ,今後,TKA後の立ち上がり動作時の運動学的解析と併せて検討していきたい。