[P-MT-24-1] 椎体骨折患者の退院時歩行能力に影響を及ぼす受傷前後の因子また身体機能についての検討
Keywords:椎体骨折, 骨粗鬆症, IADL
【はじめに,目的】骨粗鬆症性椎体骨折(以下,椎体骨折)による歩行能力低下は,ADLの低下を招き要介護の原因となることは周知の事実であるものの,その保存療法に関する一定の見解やガイドラインは策定されていない。我々は椎体骨折患者に対する安静臥床期間が身体機能に及ぼす影響について報告したが,歩行能力については検討できていなかった。そこで今回,当院にて入院加療を行った椎体骨折患者の退院時歩行能力に影響を及ぼす受傷前後の因子また身体機能について検討し,椎体骨折後に必要となる系統的な理学療法を見出すことを目的とする。
【方法】2014年12月から2016年7月に椎体骨折の診断を受け,当院に入院となった72例(男性11例,女性61例,平均年齢80.8±7.2歳)を対象とした。受傷前と退院時の歩行能力を比較し,維持あるいは向上した群を維持向上群,低下した群を低下群に振り分け,検討項目について比較した。検討項目は,受傷前因子として年齢,性別,BMI,介護保険認定の有無,転倒歴,入院前生活関連動作(以下IADL),受傷後因子とはMMSE,入院期間,visual analogue scale(以下VAS),骨密度(以下YAM),骨吸収マーカー(以下NTX),骨形成マーカー(以下P1NP),椎体圧潰率である。さらに退院時身体機能として握力,10M歩行,開眼片側立位時間,TUGも比較検討した。なお,入院前IADLとは受傷前に実際に行っていた7項目(ごみ出し,炊事,洗濯,掃除,買い物,金銭管理,服薬)で,本人あるいは家族に問診した。統計処理は,R2.8.1を使用し,統計学的手法はMann-WhitneyのU検定,ならびにχ2乗検定を行った。
【結果】維持向上群は50例(男性7例,女性43例,年齢80.4±7.3歳),低下群は22例(男性4例,女性18例,年齢81.9±7.1歳)であった。入院前IADL項目における群間比較では,炊事(維持向上群:72.0%,低下群:40.9%)(p=0.01)ならびに買い物(維持向上群:60.0%,低下群:31.8%)(p=0.03)の項目に有意な差を認めた。一方,退院時の身体機能の比較では,握力(維持向上群:17.3±6.2kg,低下群:13.8±3.5kg)(p=0.02),開眼片側立位時間(維持向上群:16.3±22.5s,低下群:8.5±12.7s)(p=0.03)ならびにTUG(維持向上群:17.1±6.2s,低下群:26.6±19.6s)(p=0.01)おいて有意な差を認めた。MMSE,VAS,YAM,NTX,P1NP,椎体圧潰率,10M歩行に有意差は認めなかった。
【結論】日常生活で炊事や買い物動作を行っている高齢者は,椎体骨折受傷後も歩行能力において比較的良好に維持できると推察され,理学療法開始時における受傷前の生活状況把握は重要である。受傷前の生活レベルが低い患者は歩行能力が低下する可能性が示唆されるため,筋力やバランス能力への理学療法を早期から立案し,IADLにつながる理学療法の推進,さらに退院後は患者参加型の家事支援を組み込むことが歩行能力の維持につながると考える。
【方法】2014年12月から2016年7月に椎体骨折の診断を受け,当院に入院となった72例(男性11例,女性61例,平均年齢80.8±7.2歳)を対象とした。受傷前と退院時の歩行能力を比較し,維持あるいは向上した群を維持向上群,低下した群を低下群に振り分け,検討項目について比較した。検討項目は,受傷前因子として年齢,性別,BMI,介護保険認定の有無,転倒歴,入院前生活関連動作(以下IADL),受傷後因子とはMMSE,入院期間,visual analogue scale(以下VAS),骨密度(以下YAM),骨吸収マーカー(以下NTX),骨形成マーカー(以下P1NP),椎体圧潰率である。さらに退院時身体機能として握力,10M歩行,開眼片側立位時間,TUGも比較検討した。なお,入院前IADLとは受傷前に実際に行っていた7項目(ごみ出し,炊事,洗濯,掃除,買い物,金銭管理,服薬)で,本人あるいは家族に問診した。統計処理は,R2.8.1を使用し,統計学的手法はMann-WhitneyのU検定,ならびにχ2乗検定を行った。
【結果】維持向上群は50例(男性7例,女性43例,年齢80.4±7.3歳),低下群は22例(男性4例,女性18例,年齢81.9±7.1歳)であった。入院前IADL項目における群間比較では,炊事(維持向上群:72.0%,低下群:40.9%)(p=0.01)ならびに買い物(維持向上群:60.0%,低下群:31.8%)(p=0.03)の項目に有意な差を認めた。一方,退院時の身体機能の比較では,握力(維持向上群:17.3±6.2kg,低下群:13.8±3.5kg)(p=0.02),開眼片側立位時間(維持向上群:16.3±22.5s,低下群:8.5±12.7s)(p=0.03)ならびにTUG(維持向上群:17.1±6.2s,低下群:26.6±19.6s)(p=0.01)おいて有意な差を認めた。MMSE,VAS,YAM,NTX,P1NP,椎体圧潰率,10M歩行に有意差は認めなかった。
【結論】日常生活で炊事や買い物動作を行っている高齢者は,椎体骨折受傷後も歩行能力において比較的良好に維持できると推察され,理学療法開始時における受傷前の生活状況把握は重要である。受傷前の生活レベルが低い患者は歩行能力が低下する可能性が示唆されるため,筋力やバランス能力への理学療法を早期から立案し,IADLにつながる理学療法の推進,さらに退院後は患者参加型の家事支援を組み込むことが歩行能力の維持につながると考える。