The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-24] ポスター(運動器)P24

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-24-3] 脊椎圧迫骨折患者におけるサルコペニアと低栄養,日常生活動作能力との関係

高橋 浩平1,2, 久保 晃3, 石村 加代子1, 櫻澤 朋美1, 村田 厚1, 石田 美幸1, 福井 隆弘1, 増田 智子1, 岩田 知子4, 田村 哲郎4 (1.田村外科病院リハビリテーション科, 2.国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻, 3.国際医療福祉大学, 4.田村外科病院)

Keywords:脊椎圧迫骨折, サルコペニア, 栄養

【はじめに,目的】

我が国において脊椎圧迫骨折患者は増加傾向を示しており,その発生件数は年間約200万件とされている。脊椎圧迫骨折により,疼痛,機能障害をもたらし,生活の質を低下させる。

先行研究では,脊椎圧迫骨折患者は他の整形外科疾患と比べ,サルコペニアの有病率が高いことが報告されている。しかし,サルコペニアと日常生活動作(以下,ADL)能力,栄養状態との関連性などは示されていない。また,縦断的な身体機能やADL能力の回復の程度についても不明である。そこで本研究の目的は,脊椎圧迫骨折患者におけるサルコペニアの有無が,栄養状態やADL能力とどの様な関連が存在するかを明らかにすることとした。


【方法】

2016年2月から9月末までに脊椎圧迫骨折で当院に入院した65歳以上の高齢者24例のうち,下肢に神経障害を認めた例,意思疎通が困難なためサルコペニアの判定が行えなかった例,記録不備の例を除外した20例(平均年齢84.0±4.9歳,男性8名,女性12名)を対象とした。

研究デザインは前向きコホート研究とした。入院時は腰痛により歩行速度の測定が困難であったため,握力と下腿周径を用いてサルコペニアの有無を判定した。握力低下はAsian working group for sarcopeniaの基準である男性26kg未満,女性18kg未満とし,下腿周径低下はKawakamiらの報告による男性34cm未満,女性33cm未満とした。両項目が低下していた場合をサルコペニアと判定し,サルコペニア群と非サルコペニア群に分類した。両群で年齢,性別,体重,BMI,既往歴,入院前の歩行自立度(Functional Ambulation Category:以下,FAC),骨折の程度,骨折の個数,疼痛,入院時血液データ(TP,CRP),臥床日数,歩行練習開始までの日数,歩行開始時のFAC,在院日数,入院時および退院時の簡易栄養状態評価表(以下,MNA-SF)・エネルギー摂取率・Barthel Index(以下,BI)について比較した。2群間の比較には,χ2検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用いた。BIと他項目との関連性を検討するためSpearmanの順位相関係数を用いた。いずれも有意水準は5%とした。


【結果】

非サルコペニア群は4名(20%),サルコペニア群は16名(80%)であった。サルコペニア群は,入院時のMNA-SF,入院および退院時の体重,歩行練習開始時および退院時のFAC,退院時のBIが有意に低値を示した(p<0.05)。両群とも退院時に体重,下腿周径が減少した。BIと有意な相関を認めた項目は,入院時および退院時のMNA-SFと握力,歩行練習開始時および退院時のFAC,退院時の体重であった(p<0.05)。


【結論】

脊椎圧迫骨折では,サルコペニアの有病率が高く,栄養状態や歩行自立度,ADL能力の低下と関連することが強く示唆された。脊椎圧迫骨折患者では,栄養状態,サルコペニアを評価した上で,理学療法と栄養管理を組み合わせたリハ栄養介入が重要である。