第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-24] ポスター(運動器)P24

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-24-5] 腰椎圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術後の疼痛を多面的に検証した2症例の報告

嘉摩尻 伸, 大門 恭平 (岸和田盈進会病院リハビリテーションセンター)

キーワード:圧迫骨折, Balloon kyphoplasty, 痛み

【はじめに,目的】

近年,圧迫骨折に対する手術的治療において経皮的椎体形成術(Balloon kyphoplasty:BKP)が治療選択のひとつとなっており,著しい除痛効果や機能予後,日常生活動作を改善させると報告されている(Yuan, 2016)。一方で疼痛緩和機序は明らかではなく(萩原,2010),術後においても疼痛が残存し,治療が難渋する場面を経験する。このように慢性的に疼痛を訴える患者に対しては,術後早期から痛みに関連するとされる認知的・情動的側面への介入が必要とされている(平川,2014)。しかし,BKP後に残存する疼痛に対して,認知的・情動的側面から多面的に検証した報告はない。そこで本研究では,BKP後の疼痛に対して,認知的・情動的側面から理学療法効果の経過を検証した。

【方法】

対象は,腰椎圧迫骨折によりBKPの適応で,3週間以上入院した2名の患者であった。

症例1は,第1腰椎圧迫骨折を呈した80歳女性で,術前評価としてFunctional Independence Measure(FIM)92点,Visual Analogue Scale(VAS)100mm,2点識別覚は20mmであった。症例2は,第4腰椎圧迫骨折を呈した76歳女性。術前評価としてFIM107点,VAS81mm,2点識別覚は27mmであった。尚,2症例ともに認知機能低下や,術後合併症・異常な神経症状などはみられなかった。また,治療プログラムは筋力増強練習,課題指向型練習,日常生活動作練習による標準的なリハビリテーションを実施した。術後評価項目は術前評価項目に加えて,6分間歩行距離(6MD),不安と抑うつの程度をHospital Anxiety And Depression Scale(HADS),痛みに対する破局的思考をPain Catastrophizing Scale(PCS)とし,術後1週目と3週目に実施した。

【結果】

症例1では術後VASが1週目と3週目で0mmとなり,FIMは105点から124点,6MDは270mから425mと大きく改善を認めた。また,HADS・PCSでは術後1週目から3週目ともに0点,2点識別覚は20mmから16mmと著明な変化はみられなかった。症例2では術後1週目のVASが84mmから3週目82mmと変化がみられず,術前の疼痛が残存した。FIMは116点から119点,6MDは415mから422m,2点識別覚は25mmから20mmで著明な変化を認めなかった。また,HADSでは15点から11点,PCSでは19点から24点となった。

【結論】

症例1の術後経過と比較して症例2では,痛み,HADS,PCSに著明な違いを認めた。これらのことから,腰椎圧迫骨折術後患者に対する標準的なリハビリテーションは,身体機能への改善は認めるものの,痛み,不安・抑うつ,痛みに対する破局的思考の改善に対しては不十分である可能性がある。よって,術後早期から標準的なリハビリテーションに加え,痛みの認知的・情動的側面を含む包括的な評価と治療戦略が必要である。