[P-MT-25-3] エコー所見をもとに段階的に理学療法を実施した外傷性外側広筋,腸脛靱帯断裂の1例
Keywords:筋断裂, 超音波診断装置, 運動療法
【はじめに,目的】
筋・腱断裂後において長期間の固定は拘縮や癒着を生じ,反対に高強度の運動を早期から行なうと再断裂やギャップ形成のリスクが高い。再断裂リスクを最小化し最大限の機能を得るためには手術所見や組織修復過程を考慮した上で組織強度に見合った運動を可及的早期から実施する必要がある。本症例では手術所見や組織修復過程に加え,超音波診断装置を使用し筋腱の動態を動的に観察したエコー所見を踏まえて段階的に理学療法を実施した。エコー所見をもとに理学療法を実施した外傷性外側広筋,腸脛靱帯断裂症例の経過および機能成績を報告する。
【方法】
20代男性,草刈り機の刃が左大腿遠位部に接触し受傷した。当院へ救急搬送され,左外側広筋,腸脛靱帯断裂と診断され,受傷当日にデブリードマン,筋・靱帯縫合が行われた。外側広筋は筋膜,腱成分をKessler縫合,腸脛靱帯は単結節縫合が用いられた。術後は3週間Knee Brace固定,touch歩行許可となった。
手術翌日から理学療法を開始した。症例報告や組織治癒過程をもとに医師と協議し,術後3週後から膝関節自動屈曲運動と部分荷重,4週から膝関節自他動運動,5週からKnee Brace除去し全荷重,6週からCKC筋力トレーニングを実施する予定とした。各運動開始時に超音波診断装置(LOGIQ S8,GE社製)を用い断裂部を中心とする長軸像を描出し断裂部にギャップを生じないか確認した。術後3週では最大自動屈曲,術後4週では疼痛を生じる直前の最大他動屈曲,術後6週ではスクワット(膝関節45度屈曲位)でエコー所見を評価した。
【結果】
各運動開始時で断裂部のギャップは認めず,予定通り段階的に理学療法を実施した。術後3ヶ月,超音波診断装置で確認した断裂部において外側広筋は膝関節伸展位で瘢痕組織様の低エコーを示していたが,膝関節屈曲位では筋線維の連続性を認め,ギャップ形成なく治癒していた。また腸脛靱帯の連続性も確認できた。MRI所見も同様であり外側広筋,腸脛靱帯の連続性を認めた。術後3ヶ月評価において運動時痛,歩行時痛なし。膝関節ROMは屈曲155度,伸展0度,extension lagなし。しゃがみ,正座可能だった。膝関節90度屈曲位での等尺性膝関節伸展筋力(患側/健側)は174.3/212.1Nmであり健側比82.2%だった。
【結論】
超音波診断装置を使用し,エコー所見を踏まえて段階的に理学療法を実施した結果,創部の癒着や断裂部のギャップ形成なく良好な膝関節機能を獲得することができた。ヒトにおける外傷性筋断裂の報告は少なく,症例報告や一般的な組織治癒過程を頼りに運動療法を進めざるを得なかったが,超音波診断装置を使用することで損傷組織を可視化でき安全に運動を行うことが可能だった。一方で,エコー所見にてギャップ形成がないことを確認できても,連続した負荷により筋・腱組織が断裂する可能性は否定できない。実施している運動が安全かどうか定期的に損傷組織のエコー所見を評価する必要がある。
筋・腱断裂後において長期間の固定は拘縮や癒着を生じ,反対に高強度の運動を早期から行なうと再断裂やギャップ形成のリスクが高い。再断裂リスクを最小化し最大限の機能を得るためには手術所見や組織修復過程を考慮した上で組織強度に見合った運動を可及的早期から実施する必要がある。本症例では手術所見や組織修復過程に加え,超音波診断装置を使用し筋腱の動態を動的に観察したエコー所見を踏まえて段階的に理学療法を実施した。エコー所見をもとに理学療法を実施した外傷性外側広筋,腸脛靱帯断裂症例の経過および機能成績を報告する。
【方法】
20代男性,草刈り機の刃が左大腿遠位部に接触し受傷した。当院へ救急搬送され,左外側広筋,腸脛靱帯断裂と診断され,受傷当日にデブリードマン,筋・靱帯縫合が行われた。外側広筋は筋膜,腱成分をKessler縫合,腸脛靱帯は単結節縫合が用いられた。術後は3週間Knee Brace固定,touch歩行許可となった。
手術翌日から理学療法を開始した。症例報告や組織治癒過程をもとに医師と協議し,術後3週後から膝関節自動屈曲運動と部分荷重,4週から膝関節自他動運動,5週からKnee Brace除去し全荷重,6週からCKC筋力トレーニングを実施する予定とした。各運動開始時に超音波診断装置(LOGIQ S8,GE社製)を用い断裂部を中心とする長軸像を描出し断裂部にギャップを生じないか確認した。術後3週では最大自動屈曲,術後4週では疼痛を生じる直前の最大他動屈曲,術後6週ではスクワット(膝関節45度屈曲位)でエコー所見を評価した。
【結果】
各運動開始時で断裂部のギャップは認めず,予定通り段階的に理学療法を実施した。術後3ヶ月,超音波診断装置で確認した断裂部において外側広筋は膝関節伸展位で瘢痕組織様の低エコーを示していたが,膝関節屈曲位では筋線維の連続性を認め,ギャップ形成なく治癒していた。また腸脛靱帯の連続性も確認できた。MRI所見も同様であり外側広筋,腸脛靱帯の連続性を認めた。術後3ヶ月評価において運動時痛,歩行時痛なし。膝関節ROMは屈曲155度,伸展0度,extension lagなし。しゃがみ,正座可能だった。膝関節90度屈曲位での等尺性膝関節伸展筋力(患側/健側)は174.3/212.1Nmであり健側比82.2%だった。
【結論】
超音波診断装置を使用し,エコー所見を踏まえて段階的に理学療法を実施した結果,創部の癒着や断裂部のギャップ形成なく良好な膝関節機能を獲得することができた。ヒトにおける外傷性筋断裂の報告は少なく,症例報告や一般的な組織治癒過程を頼りに運動療法を進めざるを得なかったが,超音波診断装置を使用することで損傷組織を可視化でき安全に運動を行うことが可能だった。一方で,エコー所見にてギャップ形成がないことを確認できても,連続した負荷により筋・腱組織が断裂する可能性は否定できない。実施している運動が安全かどうか定期的に損傷組織のエコー所見を評価する必要がある。