The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-25] ポスター(運動器)P25

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-25-4] 下肢骨折後の就寝様式に与える要因の検討

市丸 勝昭, 片渕 宏輔 (佐賀県医療センター好生館リハビリテーションセンター)

Keywords:下肢骨折, 就寝様式, 立ち上がり

【はじめに】

日本人の就寝様式は布団かベッドの二通りに大別できる。下肢骨折後は,自宅退院の際に布団からベッドへ就寝様式を変更される場合がある。今回,下肢骨折後の就寝様式に影響を及ぼす要因について,骨折部位,生活環境と生活動作,下肢の問題が日常生活動作に及ぼす影響,また健康関連QOLの視点から検討し,評価やプログラムの一助とする。


【方法】

当院で下肢骨折に対して入院加療し自宅退院された外来患者150例を対象とし,2015年11月に実施した。調査方法は郵送調査法の自己記入方式とし,Lower Extremity Functional Scale(LEFS),生活環境と生活動作,SF-8を評価した。対象者を,下肢骨折部位により股関節群,膝関節群,足関節群の3群と,就寝様式の変更により布団群,ベッドに変更群の2群に分け,それぞれ各項目を比較検討した。


【結果】

回答が得られた90名(回収率60.0%)のうち86名を有効回答とした(有効回答率95.5%)。布団からベッドへ就寝様式を変更した症例は全体の18.6%であった。股関節群は33.0%で,膝関節群の10.7%と足関節群の12.0%と比較し高い割合であった。骨折部位による3群間の比較では,LEFSにおける合計点数において股関節群と膝関節群が,足関節群に比較し有意に障害が大きく,SF-8は有意差を認めなかった。就寝様式の変更による2群間の比較では,ベッドに変更群がLEFSにおける合計点数と細項目の17項目において有意に日常生活動作が困難であり,生活環境と生活動作における「室内歩行」,「床からの立ち上がり」,「椅子からの立ち上がり」,「入浴動作」能力の低下,SF-8における身体機能の項目が有意に低下していた。就寝様式の変更有無に独立して影響する因子としての多変量解析の結果は「平らな場所を走る」,「床からの立ち上がり」の2項目が抽出された。


【結論】

床からの立ち上がり動作の再獲得と,下肢機能の回復が十分でなければ,ベッドへ就寝様式の変更を行う可能性が高いことが示唆された。ベッドへ就寝様式を変更する要因として,骨折部位に関しては,股関節群は転倒後症候群として日常生活動作に不安を感じやすいことが影響していると考える。LEFSに関しては,下肢骨折後の機能障害が大きい場合に日常生活動作の能力障害を補うためと考える。生活動作に関しては,室内歩行を除いた3項目は立ち上がり動作を伴うため,ベッド使用という環境調整で難易度の高い動作を補ったと考える。SF-8に関しては,ベッドに変更することにより,身体機能の低下以外の項目で有意な差を認めなかったと考える。本研究において,下肢骨折後において床からの立ち上がり動作ができるか否かは,就寝様式の変更の指標になることから,自宅退院の際など,環境調査に併せて評価すべき動作の一つであると考える。また,就寝様式がベッドへ変更できない場合は,立ち上がり動作の再獲得を目的としたリハビリテーションプログラムが有用であると考える。