[P-MT-26-5] 回復期リハビリテーション病棟入院時の栄養状態が大腿骨近位部骨折患者の術後経過に与える影響
Keywords:大腿骨近位部骨折, 栄養状態, FIM
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)に入院される患者の約40%が低栄養状態であると報告されている。大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改定第2版では,栄養介入により大腿骨近位部骨折患者の死亡率の低下,血中蛋白質量の回復,リハビリテーション期間の短縮が期待できる(GradeB)とされており,近年リハビリテーション栄養の考え方が急速に普及している。しかし大腿骨近位部骨折患者の栄養状態が身体機能やADLへの影響を検討した報告は少ない。本研究の目的は回リハ病棟入院時の栄養状態が術後経過に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
2016年1月1日から2016年9月30日までに大腿骨近位部骨折にて当院転院となった65歳以上の患者33例を対象とした。入院時の簡易栄養状態評価表(以下MNA-SF)により,8点以上を良好群,7点以下を低栄養群に分類した。良好群は19例(男性4例女性15例,平均年齢79.6±6.3歳),低栄養群は14例(男性3例女性11例,平均年齢81.9±6.6歳)であった。方法は当院入院時,退院時の膝伸展筋力,握力,10m歩行速度,3mTimed up go test(以下TUG),Berg Balance Scale(以下BBS),Functional Independence Mesure(以下FIM),転帰を調査した。体組成としてIn Body S10を使用して入院時の骨格筋指数(以下,SMI)と体脂肪率を計測した。各項目の退院時から入院時から差し引いた改善値を算出し,FIMの改善値はFIM効果[(退院時FIM-入院時FIM)/(126-入院時FIM)]とした。統計解析は群間比較にはMann-Whitney U検定,χ2検定,MNA-SFと各数値の相関をSpearmanの順位相関係数にて検討し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
在院日数は良好群50.6±15.4日と低栄養群57.6±12.2日であった。転帰は良好群で1例のみ施設退院で,その他は自宅退院であった。有意差を認めた項目は良好群,低栄養群それぞれ入院時10m歩行速度16.6±9.3秒と22.6±12.8秒(P<0.05),入院時FIM65.2±13.1点と56.4±8.7点(P<0.01),退院時FIM117.8±9.5点と113.6±6.6点であった(P<0.05)。その他の項目に有意差は認めなかった。改善値は10m歩行速度は-5.0±7.0秒と-8.9±4.8(P<0.01)秒,TUGは-8.1±9.3秒と-13.3±10.8秒(P<0.05),BBS10.0±8.8点,15.0±8.2点(P<0.05)であった。MNA-SFと有意差な相関を認めた項目は入院時10m歩行速度(r=0.34,P<0.05),入院時FIM(r=0.53,P<0.01),退院時FIM(r=0.47,P<0.01)であった。
【結論】
先行研究では低栄養状態の高齢者は機能回復に対して負の効果を与えることが報告されている。低栄養群は10m歩行速度,TUG,BBSが良好群よりも有意な改善を認めたが,退院時FIMは良好群が有意に高値であった。また,入院時MNA-SFと入院時,退院時FIMが中等度の相関を認めたことから,回リハ病棟入院時の栄養状態は入院時ADLだけでなく,退院時ADLにまで影響を及ぼすことが示唆された。
回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)に入院される患者の約40%が低栄養状態であると報告されている。大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改定第2版では,栄養介入により大腿骨近位部骨折患者の死亡率の低下,血中蛋白質量の回復,リハビリテーション期間の短縮が期待できる(GradeB)とされており,近年リハビリテーション栄養の考え方が急速に普及している。しかし大腿骨近位部骨折患者の栄養状態が身体機能やADLへの影響を検討した報告は少ない。本研究の目的は回リハ病棟入院時の栄養状態が術後経過に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
2016年1月1日から2016年9月30日までに大腿骨近位部骨折にて当院転院となった65歳以上の患者33例を対象とした。入院時の簡易栄養状態評価表(以下MNA-SF)により,8点以上を良好群,7点以下を低栄養群に分類した。良好群は19例(男性4例女性15例,平均年齢79.6±6.3歳),低栄養群は14例(男性3例女性11例,平均年齢81.9±6.6歳)であった。方法は当院入院時,退院時の膝伸展筋力,握力,10m歩行速度,3mTimed up go test(以下TUG),Berg Balance Scale(以下BBS),Functional Independence Mesure(以下FIM),転帰を調査した。体組成としてIn Body S10を使用して入院時の骨格筋指数(以下,SMI)と体脂肪率を計測した。各項目の退院時から入院時から差し引いた改善値を算出し,FIMの改善値はFIM効果[(退院時FIM-入院時FIM)/(126-入院時FIM)]とした。統計解析は群間比較にはMann-Whitney U検定,χ2検定,MNA-SFと各数値の相関をSpearmanの順位相関係数にて検討し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
在院日数は良好群50.6±15.4日と低栄養群57.6±12.2日であった。転帰は良好群で1例のみ施設退院で,その他は自宅退院であった。有意差を認めた項目は良好群,低栄養群それぞれ入院時10m歩行速度16.6±9.3秒と22.6±12.8秒(P<0.05),入院時FIM65.2±13.1点と56.4±8.7点(P<0.01),退院時FIM117.8±9.5点と113.6±6.6点であった(P<0.05)。その他の項目に有意差は認めなかった。改善値は10m歩行速度は-5.0±7.0秒と-8.9±4.8(P<0.01)秒,TUGは-8.1±9.3秒と-13.3±10.8秒(P<0.05),BBS10.0±8.8点,15.0±8.2点(P<0.05)であった。MNA-SFと有意差な相関を認めた項目は入院時10m歩行速度(r=0.34,P<0.05),入院時FIM(r=0.53,P<0.01),退院時FIM(r=0.47,P<0.01)であった。
【結論】
先行研究では低栄養状態の高齢者は機能回復に対して負の効果を与えることが報告されている。低栄養群は10m歩行速度,TUG,BBSが良好群よりも有意な改善を認めたが,退院時FIMは良好群が有意に高値であった。また,入院時MNA-SFと入院時,退院時FIMが中等度の相関を認めたことから,回リハ病棟入院時の栄養状態は入院時ADLだけでなく,退院時ADLにまで影響を及ぼすことが示唆された。