[P-MT-27-4] 温泉療法が変形性膝関節症患者の膝痛改善に与える効果
メタアナリシスによる検証
Keywords:変形性膝関節症, 痛み, メタアナリシス
【目的】変形性膝関節症患者(膝OA)の膝痛に対する温泉療法の有効性をメタアナリシスにて検討すること。
【方法】
日本語及び英語の文献検索データベース(Medline,Embase,Cochrane library,CINAHL,医学中央雑誌)より“温泉療法”“運動器疾患”のキーワード及びMeSH用語を用いて検索を実施した。調査対象文献は温泉療法の効果を調査したRCTを含むすべての臨床研究とし,2週間以上の治療期間があったものとした。除外基準として1)研究方法が明確でないもの,2)変形性膝関節症患者へのデータが他の疾患と混在しているもの,3)総説論文とした。2名の査読者が論文タイトルと抄録よりこれらを判別した。対象となった論文からサンプルサイズ,治療群と対照群と治療内容の詳細,治療期間,介入期間,フォローアップ期間,評価方法を抽出した。膝OAの痛みの評価としてWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)を用いた。論文のrisk of biasはCochrane's risk of bias toolを用い,統計学的異質性はI2値で評価した。出版バイアスはfunnel plotsで判断した。統計ソフトはReview Manager 5.1を用いた。
【結果】
検索できた全516論文のうち,一次スクリーニングで膝OA以外の運動器疾患への効果を調査された456論文が除外された。残った60論文のうち除外規定により25論文が論文査読の対象となった。そのうち2論文は対照群がなく,7論文は温泉療法以外が主の治療,2論文はメタアナリシスできないデータであった,さらに6論文はWOMACを評価に使っていなかった。最終的に8論文がメタアナリシスの対象となった。WOMAC痛みスコアが分析できた7論文(介入群279例,対照群246例)では温泉療法群は有意に痛みを改善し(RR=-0.69;95% CI-0.87--0.51;p<0.00001),異質性は中程度であった(I2=61%;p=0.02)。WOMACこわばりスコアが分析可能であった6論文(介入群254例,対照群221例)でも介入群には有意な改善があり(RR=-0.23,95% CI-0.42--0.05,p<0.01),異質性は中程度であった(I2=71%,p=0.01)。こわばりスコアと同様の6論文で検討できたWOMAC機能スコアにおいても有意な改善があったが(RR=-0.27,95% CI-0.45--0.09,p<0.004),異質性(I2=78%,p=0.004)が高かった。パブリケーションバイアスはなかった。
【結論】
膝OAの痛みのついての薬物治療,運動療法のエビデンスはあるものの,温泉療法は十分ではなかったが,本研究でその効果の可能性が示唆された。しかし,統計学的異質性が中等度から高度であったことは,コントロール群の内容の違い,研究間の治療方法,治療期間,さらには温泉の含有成分などの幅を示していると考えられる。統合医療の一つとしてミネラル含有の温泉を用いた運動療法,物理療法についてその除痛効果の再考が必要である。
【方法】
日本語及び英語の文献検索データベース(Medline,Embase,Cochrane library,CINAHL,医学中央雑誌)より“温泉療法”“運動器疾患”のキーワード及びMeSH用語を用いて検索を実施した。調査対象文献は温泉療法の効果を調査したRCTを含むすべての臨床研究とし,2週間以上の治療期間があったものとした。除外基準として1)研究方法が明確でないもの,2)変形性膝関節症患者へのデータが他の疾患と混在しているもの,3)総説論文とした。2名の査読者が論文タイトルと抄録よりこれらを判別した。対象となった論文からサンプルサイズ,治療群と対照群と治療内容の詳細,治療期間,介入期間,フォローアップ期間,評価方法を抽出した。膝OAの痛みの評価としてWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)を用いた。論文のrisk of biasはCochrane's risk of bias toolを用い,統計学的異質性はI2値で評価した。出版バイアスはfunnel plotsで判断した。統計ソフトはReview Manager 5.1を用いた。
【結果】
検索できた全516論文のうち,一次スクリーニングで膝OA以外の運動器疾患への効果を調査された456論文が除外された。残った60論文のうち除外規定により25論文が論文査読の対象となった。そのうち2論文は対照群がなく,7論文は温泉療法以外が主の治療,2論文はメタアナリシスできないデータであった,さらに6論文はWOMACを評価に使っていなかった。最終的に8論文がメタアナリシスの対象となった。WOMAC痛みスコアが分析できた7論文(介入群279例,対照群246例)では温泉療法群は有意に痛みを改善し(RR=-0.69;95% CI-0.87--0.51;p<0.00001),異質性は中程度であった(I2=61%;p=0.02)。WOMACこわばりスコアが分析可能であった6論文(介入群254例,対照群221例)でも介入群には有意な改善があり(RR=-0.23,95% CI-0.42--0.05,p<0.01),異質性は中程度であった(I2=71%,p=0.01)。こわばりスコアと同様の6論文で検討できたWOMAC機能スコアにおいても有意な改善があったが(RR=-0.27,95% CI-0.45--0.09,p<0.004),異質性(I2=78%,p=0.004)が高かった。パブリケーションバイアスはなかった。
【結論】
膝OAの痛みのついての薬物治療,運動療法のエビデンスはあるものの,温泉療法は十分ではなかったが,本研究でその効果の可能性が示唆された。しかし,統計学的異質性が中等度から高度であったことは,コントロール群の内容の違い,研究間の治療方法,治療期間,さらには温泉の含有成分などの幅を示していると考えられる。統合医療の一つとしてミネラル含有の温泉を用いた運動療法,物理療法についてその除痛効果の再考が必要である。