[P-MT-27-5] 変形性膝関節症(軽度~中等度)患者に対する運動療法の有効性
~機能改善と疼痛改善に着目して~
Keywords:変形性膝関節症, 運動療法, 膝関節内反角度
【はじめに,目的】
軽度から中等度の変形性膝関節症(以下,膝OA)の保存療法では,NSAIDs内服やヒアルロン酸製剤の関節注射,理学療法が一般的に行われている。理学療法の中でも,特に動作に視点をおいて機能改善を目指す運動療法や徒手療法を施行することにより,疼痛などの臨床所見のみでなく内側型膝OAの重症度をしめす膝関節内反角度が改善する症例も多く経験する。そこで今回,機能改善を目指す運動療法によって膝関節内反角度がどの程度改善するか検証することを目的とした。
【方法】
対象は内側型膝OAと診断されたK-L分類Glade3以下の患者10名とした。
運動療法プログラムの内容は①膝関節後内側軟部組織の柔軟性改善,②膝関節伸展可動域改善,③脛骨外方偏位の軽減(脛骨大腿関節の適合性改善),④膝蓋大腿関節モビリティ改善を目的として,6つの運動により構成した。介入は1日2回,3ヵ月間,自宅で自主的に行って頂いた。またPTによる診療を週1回行い,プログラムの実施状況を管理した。
評価指標は,安静立位時およびスクワット最大膝屈曲時における前額面上の①両膝関節間隙距離(関節裂隙の高さ)と②床面に対する下腿傾斜角とした。測定方法は床に貼った長さ40cm,幅2.5cmのテープ上に被験者の両側内果が通るように立たせた。ビデオカメラは被験者から2mの距離,床から60cmの高さで横置きに設置した。正面から安静立位とスクワット動作を3回撮影した。撮影された動画から,画像解析システムToMoCo-Lite(東総システム)を用いて各指標を計測した。また①変形性膝関節患者機能評価尺度(JKOM)および②VAS(Visual Analogue Scale)により疼痛の程度を自己記入式により運動介入前と3か月後に行った。
分析は,3回の平均値を代表値として,介入前後の比較を対応のあるt検定を用いて行った。
【結果】
両膝間隙距離は,運動介入前:4.7±2.1cm,3ヵ月後:3.9±1.8cmと有意に減少した(p<0.001)。下腿傾斜角は,右下肢側で運動介入前82.0±1.8度,3ヵ月後82.6±1.8度,左下肢側で運動介入前80.5±3.2度,3ヵ月後82.0±3.1度といずれも有意に増加した(各々p<0.05,p<0.01)。さらにVASは運動介入前4.3±3.0,3ヵ月後2.3±1.9と有意に低下し(p<0.03),JKOMの膝の痛みやこわばりは,運動介入前11.6±6.3,3ヵ月後5.7±3.2と有意に低下した(p<0.03)。
【結論】
近年,大腿四頭筋筋力増強運動が有効であるとの報告が多数報告されてきたが,その運動では膝関節内反は改善しないとされている。しかし本研究の運動療法では両膝間隙距離と下腿傾斜角の改善により膝関節内反が改善する可能性が示唆され,軽度から中等度の内側型膝OAに対して膝関節内反角度を軽減できる可能性を示唆した。これにより運動力学的な機械的ストレスを減少し,疼痛が軽減したと推察された。
軽度から中等度の変形性膝関節症(以下,膝OA)の保存療法では,NSAIDs内服やヒアルロン酸製剤の関節注射,理学療法が一般的に行われている。理学療法の中でも,特に動作に視点をおいて機能改善を目指す運動療法や徒手療法を施行することにより,疼痛などの臨床所見のみでなく内側型膝OAの重症度をしめす膝関節内反角度が改善する症例も多く経験する。そこで今回,機能改善を目指す運動療法によって膝関節内反角度がどの程度改善するか検証することを目的とした。
【方法】
対象は内側型膝OAと診断されたK-L分類Glade3以下の患者10名とした。
運動療法プログラムの内容は①膝関節後内側軟部組織の柔軟性改善,②膝関節伸展可動域改善,③脛骨外方偏位の軽減(脛骨大腿関節の適合性改善),④膝蓋大腿関節モビリティ改善を目的として,6つの運動により構成した。介入は1日2回,3ヵ月間,自宅で自主的に行って頂いた。またPTによる診療を週1回行い,プログラムの実施状況を管理した。
評価指標は,安静立位時およびスクワット最大膝屈曲時における前額面上の①両膝関節間隙距離(関節裂隙の高さ)と②床面に対する下腿傾斜角とした。測定方法は床に貼った長さ40cm,幅2.5cmのテープ上に被験者の両側内果が通るように立たせた。ビデオカメラは被験者から2mの距離,床から60cmの高さで横置きに設置した。正面から安静立位とスクワット動作を3回撮影した。撮影された動画から,画像解析システムToMoCo-Lite(東総システム)を用いて各指標を計測した。また①変形性膝関節患者機能評価尺度(JKOM)および②VAS(Visual Analogue Scale)により疼痛の程度を自己記入式により運動介入前と3か月後に行った。
分析は,3回の平均値を代表値として,介入前後の比較を対応のあるt検定を用いて行った。
【結果】
両膝間隙距離は,運動介入前:4.7±2.1cm,3ヵ月後:3.9±1.8cmと有意に減少した(p<0.001)。下腿傾斜角は,右下肢側で運動介入前82.0±1.8度,3ヵ月後82.6±1.8度,左下肢側で運動介入前80.5±3.2度,3ヵ月後82.0±3.1度といずれも有意に増加した(各々p<0.05,p<0.01)。さらにVASは運動介入前4.3±3.0,3ヵ月後2.3±1.9と有意に低下し(p<0.03),JKOMの膝の痛みやこわばりは,運動介入前11.6±6.3,3ヵ月後5.7±3.2と有意に低下した(p<0.03)。
【結論】
近年,大腿四頭筋筋力増強運動が有効であるとの報告が多数報告されてきたが,その運動では膝関節内反は改善しないとされている。しかし本研究の運動療法では両膝間隙距離と下腿傾斜角の改善により膝関節内反が改善する可能性が示唆され,軽度から中等度の内側型膝OAに対して膝関節内反角度を軽減できる可能性を示唆した。これにより運動力学的な機械的ストレスを減少し,疼痛が軽減したと推察された。