[P-MT-29-1] 骨盤傾斜角の差異による側方リーチ動作における運動学的分析
~股関節外転筋活動に着目して~
Keywords:側方リーチ動作, 筋電図, 股関節
【はじめに,目的】
立位側方リーチを行った際の体幹筋の筋活動についての報告は散見するが,下肢筋群の筋活動についての報告はみられない。今回は,骨盤傾斜角の差異による側方リーチ動作における股関節外転筋活動について,分析・検討した。
【方法】
対象は,整形外科疾患の既往がない若年健常者29名とした。開始肢位は立位における肩関節外転90°とし,骨盤前傾・中間・後傾位における5cmの側方リーチ動作を課題とした。その際,重心動揺計(ユメニック社製UM-BARII)を用いて,動作時の前後方向への重心動揺が少ないことを確認した。筋活動の測定には筋電計(ノラクソン社製テレマイオDTS)を用い,測定筋は左右の大殿筋上部・下部線維,大腿筋膜張筋,中殿筋とした。片脚立位時の筋電図積分値(IEMG)をもとに,各筋の%IEMGを算出した。3つの骨盤肢位における%IEMGの比較には一元配置分散分析を,非荷重側と荷重側の比較には対応のあるt検定を用いて検定を行った。
【結果】
3つの骨盤肢位における4筋の%IEMGは,非荷重側,荷重側ともに有意差がみられなかった。次に非荷重側,荷重側を比較した結果を記す。大殿筋上部線維の%IEMGは,前傾位(非荷重側:36%,荷重側:48%),中間位(非荷重側:38%,荷重側:43%),後傾位(非荷重側:60%,荷重側:62%)で有意差はみられなかった。また大殿筋下部線維の%IEMにおいても,前傾位(非荷重側:73%,荷重側:84%),中間位(非荷重側:72%,荷重側:79%),後傾位(非荷重側:89%,荷重側:90%)で有意差はみられなかった。しかし大腿筋膜張筋の%IEMGは,前傾位(非荷重側:18%,荷重側:34%),中間位(非荷重側:16%,荷重側:41%),後傾位(非荷重側:25%,荷重側:48%)で有意差がみられた。中殿筋の%IEMGにおいても前傾位(非荷重側:17%,荷重側:32%),中間位(非荷重側:18%,荷重側:34%),後傾位(非荷重側:30%,荷重側:42%)で有意差がみられた。
【結論】
3つの骨盤肢位における%IEMGは4筋ともに有意差を認めなかったが,非荷重側と荷重側の比較では大腿筋膜張筋と中殿筋に有意差がみられた。山田ら(2004)は,前傾位で大殿筋,中間位で中殿筋,後傾位で大腿筋膜張筋が優位に作用すると報告している。しかし本研究では,前傾位・中間位・後傾位における各股関節外転筋の筋活動に差異はみられなかった。片脚立位時に外転筋は体重の約2倍の張力が必要とされる(Oatis,2012)。このことから,側方リーチした際の荷重量が100%に近づくにつれて発揮する張力は大きくなることが伺える。しかし,重心動揺計から得られた荷重量が約71%であったことから,大きな筋活動が必要とされず各肢位において差がみられなかったことが示唆される。
今回の研究結果から,片脚立位が困難な場合であっても側方リーチを行うことによって,股関節外転筋の筋活動を得られることが示唆された。
立位側方リーチを行った際の体幹筋の筋活動についての報告は散見するが,下肢筋群の筋活動についての報告はみられない。今回は,骨盤傾斜角の差異による側方リーチ動作における股関節外転筋活動について,分析・検討した。
【方法】
対象は,整形外科疾患の既往がない若年健常者29名とした。開始肢位は立位における肩関節外転90°とし,骨盤前傾・中間・後傾位における5cmの側方リーチ動作を課題とした。その際,重心動揺計(ユメニック社製UM-BARII)を用いて,動作時の前後方向への重心動揺が少ないことを確認した。筋活動の測定には筋電計(ノラクソン社製テレマイオDTS)を用い,測定筋は左右の大殿筋上部・下部線維,大腿筋膜張筋,中殿筋とした。片脚立位時の筋電図積分値(IEMG)をもとに,各筋の%IEMGを算出した。3つの骨盤肢位における%IEMGの比較には一元配置分散分析を,非荷重側と荷重側の比較には対応のあるt検定を用いて検定を行った。
【結果】
3つの骨盤肢位における4筋の%IEMGは,非荷重側,荷重側ともに有意差がみられなかった。次に非荷重側,荷重側を比較した結果を記す。大殿筋上部線維の%IEMGは,前傾位(非荷重側:36%,荷重側:48%),中間位(非荷重側:38%,荷重側:43%),後傾位(非荷重側:60%,荷重側:62%)で有意差はみられなかった。また大殿筋下部線維の%IEMにおいても,前傾位(非荷重側:73%,荷重側:84%),中間位(非荷重側:72%,荷重側:79%),後傾位(非荷重側:89%,荷重側:90%)で有意差はみられなかった。しかし大腿筋膜張筋の%IEMGは,前傾位(非荷重側:18%,荷重側:34%),中間位(非荷重側:16%,荷重側:41%),後傾位(非荷重側:25%,荷重側:48%)で有意差がみられた。中殿筋の%IEMGにおいても前傾位(非荷重側:17%,荷重側:32%),中間位(非荷重側:18%,荷重側:34%),後傾位(非荷重側:30%,荷重側:42%)で有意差がみられた。
【結論】
3つの骨盤肢位における%IEMGは4筋ともに有意差を認めなかったが,非荷重側と荷重側の比較では大腿筋膜張筋と中殿筋に有意差がみられた。山田ら(2004)は,前傾位で大殿筋,中間位で中殿筋,後傾位で大腿筋膜張筋が優位に作用すると報告している。しかし本研究では,前傾位・中間位・後傾位における各股関節外転筋の筋活動に差異はみられなかった。片脚立位時に外転筋は体重の約2倍の張力が必要とされる(Oatis,2012)。このことから,側方リーチした際の荷重量が100%に近づくにつれて発揮する張力は大きくなることが伺える。しかし,重心動揺計から得られた荷重量が約71%であったことから,大きな筋活動が必要とされず各肢位において差がみられなかったことが示唆される。
今回の研究結果から,片脚立位が困難な場合であっても側方リーチを行うことによって,股関節外転筋の筋活動を得られることが示唆された。