[P-MT-29-2] 股関節屈曲・外旋・内旋筋力が動的安定性に与える影響
―Multi-Direction Reach Testを用いての検討―
Keywords:動的安定性, 転倒, 筋力
【はじめに,目的】
転倒による骨折の主な原因としては,高齢による姿勢アライメントの変化や筋力低下,平衡感覚等の低下が挙げられており,中でも下肢の筋力低下は転倒の危険性を4.9倍も上昇させることが報告されている。股関節屈筋である腸腰筋は姿勢アライメントの維持や歩行の改善,FRTと相関を認めるなどの報告がある。また外旋筋,内旋筋の一部は大腿骨頭の安定化に寄与することが示されており,内外旋筋力の筋張力バランスの低下は股関節安定性の低下を招くと報告されている。さらにこれらの筋は歩行時の支持脚の安定性や股関節周囲筋の筋力向上に影響するとされている。以上のことから股関節屈曲・外旋・内旋筋力は動的安定性に影響を与えていると思われる。そこで今回,これらの筋力が動的安定性へ与える影響をCOP偏移能力を簡易的に評価できるMulti-Direction Reach Test(以下MDRT)を利用して検討した。
【方法】
対象は健常成人13名とした。股関節屈曲筋力,外旋筋力,内旋筋力は最大等尺性筋力を徒手筋力計(アニマ社製,μTas F-1)を用いて測定した。各筋力は2回測定し,平均値を採用した。各平均値にアーム長を乗じ対象者の体重で除したトルク体重比(Nm/kg)を算出した。測定肢はボールをける際の支持脚となる側とした。動的安定性の評価はMDRTを用い,前方リーチ(以下AR),側方リーチ(以下LR),後方リーチ(以下BR)の3方向のリーチ距離を測定(cm)。測定回数は2回実施し,最大値を採用した。解析には測定したリーチ距離を身長で除した値を用いた。統計学的解析は,正規分布に従うか確認し,ARと各筋力についてはSpearmanの順位相関係数,LR,BRと各筋力においては,Pearsonの積率相関係数を用いて相関を求めた。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
BRと股関節屈曲筋力,内旋筋力の間でr=0.70(P<0.01),r=0.77(P<0.01)と相関を認めた。それ以外の項目においては,有意差を認めなかった。
【結論】
BRにおいては股関節屈曲筋力,内旋筋力が影響していることが示唆された。Nashnerらは,後方に重心が偏位した際に,足関節戦略では体幹前面筋が活動すると報告しており,福井は大腰筋は身体重心を大きく覆う唯一の筋であり,上半身と下半身の重心位置の関係を保つために重要であると述べている。そのためBRの際に体幹前面に位置する腸腰筋が重心を制御したことで相関認めたと考えられる。
またBRと股関節内旋筋力においては,測定肢位である股関節屈曲90°では中殿筋前部線維の活動が高まるとの報告があり,立位では中殿筋前部線維は股関節屈曲作用を有するため,重心が後方に偏移した際に,活動することで重心移動を制御したものと考えられる。また股関節内旋は骨盤前傾を促すため,BRの際に股関節が伸展することで,骨盤が後傾することになる。そのため内旋筋が活動することで骨盤を前傾方向へ誘導し,重心の後方偏位を制御しているものと考えられる。
転倒による骨折の主な原因としては,高齢による姿勢アライメントの変化や筋力低下,平衡感覚等の低下が挙げられており,中でも下肢の筋力低下は転倒の危険性を4.9倍も上昇させることが報告されている。股関節屈筋である腸腰筋は姿勢アライメントの維持や歩行の改善,FRTと相関を認めるなどの報告がある。また外旋筋,内旋筋の一部は大腿骨頭の安定化に寄与することが示されており,内外旋筋力の筋張力バランスの低下は股関節安定性の低下を招くと報告されている。さらにこれらの筋は歩行時の支持脚の安定性や股関節周囲筋の筋力向上に影響するとされている。以上のことから股関節屈曲・外旋・内旋筋力は動的安定性に影響を与えていると思われる。そこで今回,これらの筋力が動的安定性へ与える影響をCOP偏移能力を簡易的に評価できるMulti-Direction Reach Test(以下MDRT)を利用して検討した。
【方法】
対象は健常成人13名とした。股関節屈曲筋力,外旋筋力,内旋筋力は最大等尺性筋力を徒手筋力計(アニマ社製,μTas F-1)を用いて測定した。各筋力は2回測定し,平均値を採用した。各平均値にアーム長を乗じ対象者の体重で除したトルク体重比(Nm/kg)を算出した。測定肢はボールをける際の支持脚となる側とした。動的安定性の評価はMDRTを用い,前方リーチ(以下AR),側方リーチ(以下LR),後方リーチ(以下BR)の3方向のリーチ距離を測定(cm)。測定回数は2回実施し,最大値を採用した。解析には測定したリーチ距離を身長で除した値を用いた。統計学的解析は,正規分布に従うか確認し,ARと各筋力についてはSpearmanの順位相関係数,LR,BRと各筋力においては,Pearsonの積率相関係数を用いて相関を求めた。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
BRと股関節屈曲筋力,内旋筋力の間でr=0.70(P<0.01),r=0.77(P<0.01)と相関を認めた。それ以外の項目においては,有意差を認めなかった。
【結論】
BRにおいては股関節屈曲筋力,内旋筋力が影響していることが示唆された。Nashnerらは,後方に重心が偏位した際に,足関節戦略では体幹前面筋が活動すると報告しており,福井は大腰筋は身体重心を大きく覆う唯一の筋であり,上半身と下半身の重心位置の関係を保つために重要であると述べている。そのためBRの際に体幹前面に位置する腸腰筋が重心を制御したことで相関認めたと考えられる。
またBRと股関節内旋筋力においては,測定肢位である股関節屈曲90°では中殿筋前部線維の活動が高まるとの報告があり,立位では中殿筋前部線維は股関節屈曲作用を有するため,重心が後方に偏移した際に,活動することで重心移動を制御したものと考えられる。また股関節内旋は骨盤前傾を促すため,BRの際に股関節が伸展することで,骨盤が後傾することになる。そのため内旋筋が活動することで骨盤を前傾方向へ誘導し,重心の後方偏位を制御しているものと考えられる。