第52回日本理学療法学術大会

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[P-MT-30] ポスター(運動器)P30

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-30-3] 鏡視下腱板修復術後3カ月時の拳上可動域に影響する因子の検討

永渕 輝佳1, 永冨 孝幸1, 永井 宏達2, 濱田 浩志1, 二宮 晴夫3 (1.JCHO大阪病院リハビリテーション室, 2.兵庫医療大学大学院, 3.JCHO大阪病院リハビリテーション科)

キーワード:鏡視下腱板修復術, 関節可動域, リハビリテーション

【はじめに,目的】

鏡視下腱板修復術(以下ARCR)後の後療法において,関節可動域の回復が遅延する症例を経験することがある。戸野塚らは,ARCR後3カ月時点での挙上が120°,下垂位外旋が10°に満たない症例は術後2年での最終可動域に著しく影響すると報告している。そこで今回,ARCRの術後3カ月時点の挙上可動域に影響する因子について明らかにすることを目的に検討を行った。

【方法】

対象は2009年1月から2013年12月までに当院でARCRを施行した737例のうち3カ月以上経過を追えなかった症例,転院症例,広背筋移行術施行症例を除外した576例を対象とした。

これらの対象を術後3カ月時の挙上が120°以上であった441肩(男性258肩,女性183肩,平均年齢63.0±12.8歳)をH群,120°未満であった135肩(男性73肩,女性62肩,平均年齢66.8±10.0歳)をL群の2群に分類した。術後3カ月の挙上可動域に対する検討因子は,術前自動可動域(挙上,下垂位外旋,外転),術前筋力(90°外転,30°外転,下垂位外旋),術前運動時痛,保険種類,罹患期間,性別,年齢,糖尿病の有無,断裂形態(完全断裂,不全断裂),断裂部位(棘上筋断裂,2腱以上の断裂),修復状態(一次修復可能,不可能),術中の関節包解離術の有無,上腕二頭筋長頭腱切離術の有無,術後固定期間の有無とした。

統計学的検討にはEZRを用いた。上記検討因子をMann-WhitneyのU検定,カイ2乗検定を使用し比較検討を行い,2群間において有意差を認めた項目を独立変数とし,3カ月の挙上可動域が120°以上と未満の2群を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

2群間の比較では術前自動可動域(挙上,下垂位外旋,外転),術前筋力(90°外転,30°外転,下垂位外旋),年齢,糖尿病の有無,断裂部位,修復状態,術中の関節包解離術の有無,術後固定期間の有無において有意差を認めた。

ARCR術後3カ月時の挙上可動域に影響する因子は,術前自動屈曲は(オッズ比1.02,95%信頼区間1.01~1.02,p<0.01)H群143.2±67.9°,L群109.2±38.4°,術前90°外転筋力は(オッズ比1.01,95%信頼区間1.00~1.02,p<0.05)H群32.3±26.9N,L群17.1±21.3Nであった。糖尿病の有無は(オッズ比2.43,95%信頼区間1.49~3.97,p<0.01)糖尿病有りH群74肩(17%),L群40肩(30%)であり,修復状態に関しては(オッズ比0.42,95%信頼区間0.24~0.73,p<0.01)一次修復可能であったのはH群389肩(88%),L群103肩(76%)であった。

【結論】

今回の結果から術後3カ月時の挙上可動域制限因子は,術前自動挙上可動域,術前90°外転筋力の低下が示唆された。また,その他の要因としては腱板の修復が一次修復を行えなかった症例や術前に糖尿病を併存している症例であることが明らかとなった。