第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-30] ポスター(運動器)P30

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-30-5] 腱板修復術後の肩関節機能は術後6ヶ月でどこまで回復するのか?

石川 博明1,2, 村木 孝行1,2, 山本 宣幸3, 井樋 栄二3, 出江 紳一2 (1.東北大学病院リハビリテーション部, 2.東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻肢体不自由学分野, 3.東北大学整形外科)

キーワード:腱板修復術後, 肩挙上筋活動, 肩甲上腕関節運動

【はじめに,目的】腱板修復術後のリハビリテーションは正常な肩関節機能を再獲得するために行われる。一般的なプロトコルでは,術後6ヶ月で労働作業やスポーツが許可され,術後リハビリテーションの終了目安となるが,どの程度まで肩関節機能が回復しているのかは不明である。本研究の目的は,腱板修復術後患者の肩関節機能を経時的に評価し,術後6ヶ月時点での回復の程度を明らかにすることである。


【方法】当院にて腱板修復術を受けた16名(年齢:63±9歳,男:10名,女:6名)と健常な中高年者8名(年齢:61±7歳,男:3名,女:5名)を対象とした。他動関節可動域(ROM)は,ゴニオメーターを用いて胸郭に対する上腕骨の挙上角度および下垂位での肩外旋角度を測定した。肩甲上腕関節(GH)の挙上運動の評価は,自動で肩甲骨面挙上30°位,60°位に保持し,胸郭に対する上腕骨の挙上角度とデジタル傾斜計を用いて測定した肩甲骨上方回旋角度の差として定義した。また,同様の肢位にて,超音波エラストグラフィを用いて三角筋中部線維(MD)と棘上筋(SSP)の硬さを測定し,これらを肩挙上筋活動の指標とした。なお,自動挙上時に筋が硬くなるほど筋活動が高いことを意味する。腱板修復術後症例においては,すべての測定を術後6週,3ヶ月,6ヶ月の各時期に行い,各パラメーターの経時的変化について反復測定一元配置分散分析および多重比較法を用いて検討した。また,術後6ヶ月時点での腱板修復術後症例と健常者の違いについて対応のないt検定を用いて検討した。


【結果】腱板修復術後の経時的変化において,ROMは,挙上,外旋ともに術後6週と比べて術後3ヶ月,術後6ヶ月で有意に拡大した(p<0.01)。GH挙上運動は,挙上30°位,挙上60°位ともに術後6週と比べて術後3ヶ月,術後6ヶ月で有意に拡大した(p<0.01)。MDの硬さは,挙上30°位で術後6週と比べて術後6ヶ月で有意に低下した。(p<0.05)。SSPの硬さは,挙上30°位,挙上60°位ともに術後6週と比べて術後3ヶ月,術後6ヶ月で有意に増加した(p<0.05)。術後6ヶ月時点での腱板修復術後症例と健常者の比較において,健常者の挙上ROM(164°±8°,173°±6°),挙上60°位でのGH挙上運動(54°±4°,57°±1°)は有意に高値を示した(p<0.05)。


【結論】腱板修復術後6ヶ月で,ROMやGH挙上運動,肩挙上筋活動は有意に改善することが明らかになった。しかし,挙上ROMや挙上60°位でのGH挙上運動においては健常者と同程度まで回復しておらず,今後は術後6ヶ月以降の回復の程度を明らかにする必要性が示唆された。