[P-MT-31-1] 健常成人の脊柱起立筋の筋硬度分析―左右差の検証―
Keywords:脊柱起立筋, Real-time Tissue Elastography(RTE), 左右差
【はじめに,目的】
臨床での脊柱起立筋の筋緊張評価では,疾患に関わらず高い割合でパターン化した左右配列が確認できる。その筋緊張パターンは中・下位胸椎レベルでは右側に高く,腰椎レベルでは左側に高い。これは分節的な脊柱の運動が生じ難いこと,偏りのある定型的な体幹運動が生じやすいことを示唆し,体幹の安定を目的とした理学療法において不利益な事象と言える。この左右差に対し直接的にアプローチしても一過性であったり,逆に体幹の安定が悪化する例も存在し,体系化したアプローチの必要性を感じる。したがって,脊柱起立筋のパターン化した筋緊張の形成メカニズムを解明し,理学療法に還元する必要があると考える。
そこで今回はReal-time Tissue Elastography(RTE)を用いて胸腸肋筋(Iliocostalis Thoracis:IT)と腰最長筋(Longissimus Muscle:LM)の筋硬度を測定し,その左右差を検証することを目的とした。
【方法】
対象は研究に対して同意を得られた胸郭に著明な変形のない健常成人男性20名(平均年齢23.55±1.7歳)とした。脊柱起立筋の筋硬度は超音波画像診断装置(HI VISION Preirus,日立メディコ)に内蔵されているRTEを用いて測定した。測定肢位は腹臥位とし,中・下位胸椎レベルでは第9胸椎横突起と第9肋骨を,腰椎レベルでは第3腰椎棘突起近傍の多裂筋をそれぞれ画像上指標とし,ITおよびLMの短軸像を抽出した。安定したBモード画像が得られた上で,RTEを用いて左右3回ずつ撮像した。筋硬度の測定は音響カプラーアタッチメント(日立メディコ)を基準物質(A)とし,ITおよびLM(B)の相対値B/A(Strain Ratio:SR)を算出し,3回の平均値を求めた。統計処理にはSPSSver13を使用し,ITを対応のあるt-検定,LMをWilcoxon符号付順位和検定にて比較した。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
基準物質に対するITのSRは右側:3.09±0.86,左側:3.48±0.89であり右側が有意に低値であった(p=0.013)。LMのSRは右側:5.77±1.85,左側:5.04±1.66であり左側が有意に低値であった(p=0.037)。
【結論】
RTEにて脊柱起立筋の筋硬度を左右比較した結果,中・下位胸椎レベルでは右側が,腰椎レベルでは左側が有意に低値であった。SRの低値は筋硬度が高いこと示す。
この原因の一つとして胸郭の左側方偏位の存在(Ishizuka, 2013)が考えられる。胸郭左側方偏位にみられる典型的なアライメントでは,右側の上位肋骨前方回旋位および下位肋骨後方回旋位が定着しやすい。このとき右側ITの起始部と停止部の距離的延長が生じ,同部の硬度が高まる。同様に左側LMの筋緊張を高めることは,左寛骨を拳上および後退させ,仙骨の正中位を維持する活動として考えられる。したがって,右側の中・下位胸椎レベルと左側の腰椎レベルでの脊柱起立筋の筋硬度の高まりは,体幹の不安定性を最小限にする反応として考えられる。
今後は,同部の筋硬度の左右差が少ない群と大きい群との比較により,体幹の伸展活動に及ぼす影響について検証していく必要があると考える。
臨床での脊柱起立筋の筋緊張評価では,疾患に関わらず高い割合でパターン化した左右配列が確認できる。その筋緊張パターンは中・下位胸椎レベルでは右側に高く,腰椎レベルでは左側に高い。これは分節的な脊柱の運動が生じ難いこと,偏りのある定型的な体幹運動が生じやすいことを示唆し,体幹の安定を目的とした理学療法において不利益な事象と言える。この左右差に対し直接的にアプローチしても一過性であったり,逆に体幹の安定が悪化する例も存在し,体系化したアプローチの必要性を感じる。したがって,脊柱起立筋のパターン化した筋緊張の形成メカニズムを解明し,理学療法に還元する必要があると考える。
そこで今回はReal-time Tissue Elastography(RTE)を用いて胸腸肋筋(Iliocostalis Thoracis:IT)と腰最長筋(Longissimus Muscle:LM)の筋硬度を測定し,その左右差を検証することを目的とした。
【方法】
対象は研究に対して同意を得られた胸郭に著明な変形のない健常成人男性20名(平均年齢23.55±1.7歳)とした。脊柱起立筋の筋硬度は超音波画像診断装置(HI VISION Preirus,日立メディコ)に内蔵されているRTEを用いて測定した。測定肢位は腹臥位とし,中・下位胸椎レベルでは第9胸椎横突起と第9肋骨を,腰椎レベルでは第3腰椎棘突起近傍の多裂筋をそれぞれ画像上指標とし,ITおよびLMの短軸像を抽出した。安定したBモード画像が得られた上で,RTEを用いて左右3回ずつ撮像した。筋硬度の測定は音響カプラーアタッチメント(日立メディコ)を基準物質(A)とし,ITおよびLM(B)の相対値B/A(Strain Ratio:SR)を算出し,3回の平均値を求めた。統計処理にはSPSSver13を使用し,ITを対応のあるt-検定,LMをWilcoxon符号付順位和検定にて比較した。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
基準物質に対するITのSRは右側:3.09±0.86,左側:3.48±0.89であり右側が有意に低値であった(p=0.013)。LMのSRは右側:5.77±1.85,左側:5.04±1.66であり左側が有意に低値であった(p=0.037)。
【結論】
RTEにて脊柱起立筋の筋硬度を左右比較した結果,中・下位胸椎レベルでは右側が,腰椎レベルでは左側が有意に低値であった。SRの低値は筋硬度が高いこと示す。
この原因の一つとして胸郭の左側方偏位の存在(Ishizuka, 2013)が考えられる。胸郭左側方偏位にみられる典型的なアライメントでは,右側の上位肋骨前方回旋位および下位肋骨後方回旋位が定着しやすい。このとき右側ITの起始部と停止部の距離的延長が生じ,同部の硬度が高まる。同様に左側LMの筋緊張を高めることは,左寛骨を拳上および後退させ,仙骨の正中位を維持する活動として考えられる。したがって,右側の中・下位胸椎レベルと左側の腰椎レベルでの脊柱起立筋の筋硬度の高まりは,体幹の不安定性を最小限にする反応として考えられる。
今後は,同部の筋硬度の左右差が少ない群と大きい群との比較により,体幹の伸展活動に及ぼす影響について検証していく必要があると考える。