第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-31] ポスター(運動器)P31

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-31-3] 矢状面脊柱骨盤アライメントを外観上で把握する試み
全脊柱撮像から計測される各種パラメーターの信頼性の検討

山田 翔太1,2, 榎原 毅2, 上原 徹1, 木村 新吾1, 庄司 直人2, 稲田 充3, 上島 通浩2 (1.名古屋市立西部医療センターリハビリテーション科, 2.名古屋市立大学医学研究科環境労働衛生学分野, 3.名古屋市立西部医療センター整形外科脊椎センター)

キーワード:矢状面脊椎骨盤アライメント, 信頼性, 全脊柱撮像

【はじめに,目的】

全脊柱撮像より計測される矢状面脊柱骨盤アライメント(SSPA)は,腰痛の素因と関係しているとの報告がある。X線の曝露がなく,簡便に人の外観上から得られる姿勢パラメーターでSSPAを推定する間接測定法が確立できれば,臨床応用のみならず,腰痛予防対策など公衆衛生上の意義も大きい。そこで,本研究では間接測定法確立の第一段階として,代表的な指標である胸椎後彎角(TKA),腰椎前彎角(LLA),仙骨傾斜角(SS),Sagittal Vertical Axis(SVA),Pelvic Incidence(PI)のX線画像の計測を行い,比較基準値となる計測の信頼性検討を行った。



【対象と方法】

名古屋市立西部医療センターにて頚椎症性脊髄症,腰部脊柱管狭窄症と診断され手術を施行した20名(男性11名,女性9名,平均年齢62.0±15.3歳)とした。診療目的で撮影された全脊柱撮像からSchwabらの計測に基づきTKA,LLA,SS,SVA,Legayeらの提唱したPIをacetabular domes methodを用い計測した。画像検査者は理学療法士の男性3名(平均年齢37.3±7.4歳)である。1回目の計測から24時間以上空けたのちに計測順を変更して再度計測した。統計解析はR2.8.1を用い,検査者内・検査者間信頼性を評価するために級内相関ICC1,ICC3を求めた。また各測定の系統誤差を評価するためにBland-Altman解析を行った。信頼性の評価はLandis(1977)の基準に従い,ICC>0.8をExcellentとした。



【結果】

各計測値の1回計測の検査者内信頼性ICC(1,1)は3名ともTKA,LLA,SS,SVAは全て0.8以上であった。PIのICC(1,1)は最大0.89(95%CI:0.74-0.95)から最小0.65(0.31-0.84)となり,検査者毎にばらつきを認めた。PIの2回計測の信頼性ICC(1,2)は0.94(0.85-0.98)から0.79(0.48-0.92)であり,PIの信頼性を担保するには2回以上の計測が必要と示唆された。3名の検査者が1回計測した時の検査者間信頼性ICC(3,1)は,全計測値とも0.87以上であった。Bland-Altman解析は,3名の検査者とも[1回目の測定-2回目の測定]の差(d)の平均に系統誤差は認められず,また,Bland-Altman Plotの偏回帰係数(β)においても比例誤差は認められなかった。



【結論】

TKA,LLA,SS,SVAは,任意1名の検査者が1回計測することで十分な検査者内・検査者間信頼性を担保している。一方,PIは検査者1名でよいが検査者内信頼性を高めるには複数回測定が必要である。また系統誤差や比例誤差も認めず,検査者の習熟に影響を受けないことが確認できた。