[P-MT-33-1] 股関節外転筋の等速性筋力及び収縮速度が着地時のKnee-inに与える影響
Keywords:Knee-in, 股関節外転筋力, 収縮速度
【はじめに,目的】
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷の受傷にはKnee-inなどの不良アライメントが関与するとされ,近年等尺性股関節外転筋力低下との関係が注目されている。しかしACL損傷の受傷機転の1つであるとされるジャンプ着地動作に近いと考えられる等速性股関節外転筋力や筋の収縮速度との関係性は明らかにされていない。そこで本研究は等速性股関節外転筋力や筋の収縮速度がジャンプ着地動作時のKnee-inに与える影響を明らかにし,ACL損傷予防の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は健常女子大学生25名(平均年齢20.6歳)とした。Knee-inの測定にはDrop-Jump Screening Testを採用した。前額面上から撮影した動画を基に2次元動作解析ソフトDart Fish(Dart Fish社製)を用いて両大転子間距離(Hip Separation:以下HS)に対する両膝蓋骨間距離(Knee Separation:以下KS)の割合の百分率を求めた(KS/HS×100)。この値は小さいほど強いKnee-inを示す。股関節外転筋の等速性筋力及び収縮速度の測定には筋機能解析運動装置CYBEX NORM(CYBEX社製)を用い,等尺性と等速性60・150deg/secの3条件で測定を行った。等速性トルク値の測定は求心性収縮と遠心性収縮のいずれも行い,得られた最大トルク値は体重で除し正規化した後に100を乗じた最大トルク体重比(PT)とした。また等尺性の測定値から発揮トルク体重比が100および50に達するまでに要した時間を計測し,それぞれTT100,TT50とした。測定は両側で行い左右の平均値を代表値とした。統計学的解析はKnee-inと股関節外転筋機能各項目との関連性をPeasonの相関係数を求めて検討した。なお有意水準はいずれも5%とした。
【結果】
Knee-inと,60deg/sec求心性PT(r=0.518 p=0.008),60deg/sec遠心性PT(r=0.623 p=0.001),150deg/sec遠心性PT(r=0.636 p=0.001),との間に有意な正の相関が認められ,TT50との間に有意な負の相関(r=-0.437 p=0.029)が認められた。
【結論】
着地時のKnee-inの制御には股関節外転筋の遠心性筋力やトルク発揮時間なども関与していることが示唆された。着地時に股関節は内転するとされており,閉鎖性運動連鎖の結果としてKnee-inを生じる可能性が考えられる。そのため,股関節内転を制御する股関節外転筋とKnee-inにおいて相関がみられたと考えられる。以上の事からACL損傷予防における評価やトレーニングにおいては股関節外転筋の遠心性筋力や収縮速度といった要素についても考慮する必要があることが示唆された。
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)損傷の受傷にはKnee-inなどの不良アライメントが関与するとされ,近年等尺性股関節外転筋力低下との関係が注目されている。しかしACL損傷の受傷機転の1つであるとされるジャンプ着地動作に近いと考えられる等速性股関節外転筋力や筋の収縮速度との関係性は明らかにされていない。そこで本研究は等速性股関節外転筋力や筋の収縮速度がジャンプ着地動作時のKnee-inに与える影響を明らかにし,ACL損傷予防の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は健常女子大学生25名(平均年齢20.6歳)とした。Knee-inの測定にはDrop-Jump Screening Testを採用した。前額面上から撮影した動画を基に2次元動作解析ソフトDart Fish(Dart Fish社製)を用いて両大転子間距離(Hip Separation:以下HS)に対する両膝蓋骨間距離(Knee Separation:以下KS)の割合の百分率を求めた(KS/HS×100)。この値は小さいほど強いKnee-inを示す。股関節外転筋の等速性筋力及び収縮速度の測定には筋機能解析運動装置CYBEX NORM(CYBEX社製)を用い,等尺性と等速性60・150deg/secの3条件で測定を行った。等速性トルク値の測定は求心性収縮と遠心性収縮のいずれも行い,得られた最大トルク値は体重で除し正規化した後に100を乗じた最大トルク体重比(PT)とした。また等尺性の測定値から発揮トルク体重比が100および50に達するまでに要した時間を計測し,それぞれTT100,TT50とした。測定は両側で行い左右の平均値を代表値とした。統計学的解析はKnee-inと股関節外転筋機能各項目との関連性をPeasonの相関係数を求めて検討した。なお有意水準はいずれも5%とした。
【結果】
Knee-inと,60deg/sec求心性PT(r=0.518 p=0.008),60deg/sec遠心性PT(r=0.623 p=0.001),150deg/sec遠心性PT(r=0.636 p=0.001),との間に有意な正の相関が認められ,TT50との間に有意な負の相関(r=-0.437 p=0.029)が認められた。
【結論】
着地時のKnee-inの制御には股関節外転筋の遠心性筋力やトルク発揮時間なども関与していることが示唆された。着地時に股関節は内転するとされており,閉鎖性運動連鎖の結果としてKnee-inを生じる可能性が考えられる。そのため,股関節内転を制御する股関節外転筋とKnee-inにおいて相関がみられたと考えられる。以上の事からACL損傷予防における評価やトレーニングにおいては股関節外転筋の遠心性筋力や収縮速度といった要素についても考慮する必要があることが示唆された。