[P-MT-34-4] 変形性股関節症患者の身体活動量および活動強度に影響する因子
3軸加速度計を用いた検討
Keywords:変形性股関節症, 身体活動量, 活動強度
【はじめに,目的】
我々はこれまでに,人工股関節全置換術(THA)前の身体活動量は術後早期の歩行能力や在院日数に関連するという結果を得ており,術前の変形性股関節症(股OA)患者にとって身体活動量低下の予防は重要であると考えられる。3軸加速度計は,患者の実際の日常生活において,歩数などで示される身体活動量に加え,活動強度の測定を行うことが可能である。股OA患者の身体活動量や活動強度は,痛みや身体機能,精神機能など様々な因子の影響を受けることが予測されるが,これらを包括的に検討した報告はない。本研究の目的は,3軸加速度計を用いて股OA患者の身体活動量および活動強度に影響する因子を検討することである。
【方法】
対象は2015年12月~2016年9月に当院にて片側THAを施行された患者のうち,術前に身体活動量および活動強度,下肢関節可動域,下肢筋力,10m歩行の測定,痛みおよび精神機能に関するアンケート評価を行い,歩行非自立であった2例を除いた40例(男性7例,女性33例,年齢66.9±10.5歳)とした。3軸加速度計(ActiGraph GT3X-BT)を用いて入院前1週間分の1日平均歩数,1日のうちの低強度の身体活動時間(light physical activity;LPA),中~高強度の身体活動時間(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を測定した。ハンドヘルドダイナモメーター(μTas F-100)を用い,術側,非術側の股関節外転および膝関節伸展トルクを算出した。Visual Analogue Scale(VAS),Pain Catastrophizing Scale(PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用い,痛みおよび精神機能を評価した。Pearsonの相関係数を用い歩数および活動強度と各評価項目にて相関関係を検討した。次に,歩数および活動強度を従属変数とし,これらと有意な相関関係を認めた各評価項目を独立変数に投入したステップワイズ重回帰分析を行った。いずれの検定も有意水準を5%とした。
【結果】
歩数は,術側および非術側股関節伸展可動域,非術側股関節外転可動域,非術側股関節外転トルク,HADS抑うつと有意に相関し,重回帰分析の結果,非術側股関節伸展可動域(p<0.01,β=0.41),HADS抑うつ(p<0.01,β=-0.36),非術側股関節外転可動域(p=0.02,β=0.35)が有意な関連因子として抽出された。LPAと有意に相関する因子は無かった。MVPAは,非術側股関節伸展可動域,非術側股関節外転可動域,年齢と有意に相関し,重回帰分析の結果,非術側股関節伸展可動域(p<0.05,β=0.34),年齢(p<0.05,β=-0.30)が有意な関連因子として抽出された。
【結論】
歩数,MVPAは,ともに非術側股関節伸展可動域と関連しており,非術側股関節伸展可動域の低下は身体活動量,活動強度を低下させる因子であった。また,股OA患者の精神的健康の低下は,身体活動量を低下させる因子であった。さらに,股OA患者では年齢とともに活動強度が低下することが示された。
我々はこれまでに,人工股関節全置換術(THA)前の身体活動量は術後早期の歩行能力や在院日数に関連するという結果を得ており,術前の変形性股関節症(股OA)患者にとって身体活動量低下の予防は重要であると考えられる。3軸加速度計は,患者の実際の日常生活において,歩数などで示される身体活動量に加え,活動強度の測定を行うことが可能である。股OA患者の身体活動量や活動強度は,痛みや身体機能,精神機能など様々な因子の影響を受けることが予測されるが,これらを包括的に検討した報告はない。本研究の目的は,3軸加速度計を用いて股OA患者の身体活動量および活動強度に影響する因子を検討することである。
【方法】
対象は2015年12月~2016年9月に当院にて片側THAを施行された患者のうち,術前に身体活動量および活動強度,下肢関節可動域,下肢筋力,10m歩行の測定,痛みおよび精神機能に関するアンケート評価を行い,歩行非自立であった2例を除いた40例(男性7例,女性33例,年齢66.9±10.5歳)とした。3軸加速度計(ActiGraph GT3X-BT)を用いて入院前1週間分の1日平均歩数,1日のうちの低強度の身体活動時間(light physical activity;LPA),中~高強度の身体活動時間(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を測定した。ハンドヘルドダイナモメーター(μTas F-100)を用い,術側,非術側の股関節外転および膝関節伸展トルクを算出した。Visual Analogue Scale(VAS),Pain Catastrophizing Scale(PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用い,痛みおよび精神機能を評価した。Pearsonの相関係数を用い歩数および活動強度と各評価項目にて相関関係を検討した。次に,歩数および活動強度を従属変数とし,これらと有意な相関関係を認めた各評価項目を独立変数に投入したステップワイズ重回帰分析を行った。いずれの検定も有意水準を5%とした。
【結果】
歩数は,術側および非術側股関節伸展可動域,非術側股関節外転可動域,非術側股関節外転トルク,HADS抑うつと有意に相関し,重回帰分析の結果,非術側股関節伸展可動域(p<0.01,β=0.41),HADS抑うつ(p<0.01,β=-0.36),非術側股関節外転可動域(p=0.02,β=0.35)が有意な関連因子として抽出された。LPAと有意に相関する因子は無かった。MVPAは,非術側股関節伸展可動域,非術側股関節外転可動域,年齢と有意に相関し,重回帰分析の結果,非術側股関節伸展可動域(p<0.05,β=0.34),年齢(p<0.05,β=-0.30)が有意な関連因子として抽出された。
【結論】
歩数,MVPAは,ともに非術側股関節伸展可動域と関連しており,非術側股関節伸展可動域の低下は身体活動量,活動強度を低下させる因子であった。また,股OA患者の精神的健康の低下は,身体活動量を低下させる因子であった。さらに,股OA患者では年齢とともに活動強度が低下することが示された。