The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-35] ポスター(運動器)P35

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-35-4] 人工股関節置換術後患者における外出時の不安調査

山本 真士 (中国電力(株)中電病院)

Keywords:人工股関節置換術, 外出, 不安

【はじめに】

人工股関節置換術(total hip arthroplasty:以下,THA)後の患者は,変形性股関節症による疼痛からは解放され,日常生活の制限は大幅に改善される。しかし,臨床現場において,THA術後にも関わらず,退院後の生活で「なかなか外出ができない」,「怖くて外出ができない」などといった声を聴取する。THA術後の『外出』における不安は,自宅周囲の環境や同居家族などの要因が影響してくることが予想される。そこで,本調査では退院後1ヶ月の患者を対象に,退院後の外出における不安についてアンケート調査を行い,患者が不安と感じた要因について検討を行ったので報告する。



【対象および方法】

対象は当院でTHA術後患者43名に,退院後約1ヶ月の定期受診の際に,アンケートを手渡して回答を得た。性別は,男性6名,女性37名であり,平均年齢は71.2±7.8歳であった。

アンケート内容は年齢などの基本情報,外出機会,外出する際の不安の有無,外出頻度,外出時間,股関節周囲の機能,外出手段,退院先や自宅の環境,同居家族や車の運転の有無,外出する際の不安要因,満足度について,アンケート用紙にて回答を得た。

統計学的処理はアンケートで「外出」する際に,不安を感じたことがある群(以下,不安群)と不安を感じなかった群(以下,非不安群)の2群に分け,年齢の比較に対応のないT検定を行い,その他の項目に関してはマンホイットニーのU検定を行った。危険率は5%未満を有意とした。



【結果】

年齢の平均は不安群67.8±10.2歳,非不安群71.8±7.4歳であり,統計学的有意差は認めなかった。各項目においては,外出頻度p=0.035,外出時間p=0.049,本人による車の運転p=0.002,股関節の関節可動域p=0.048,満足度p=0.006と有意水準以下であり,有意差を認めた。その他の項目については有意差を認めなかった。

【考察】

対象者43名にアンケートを実施した結果,約半数の患者が退院後1ヶ月の時点でも外出が不安という回答であった。

「外出」に対する不安は,身体的要因のみならず,退院後の自宅環境や同居家族などの影響が大きいと考えたが,今回の調査では不安の有無にこれらは影響を与えないという結果であった。一方で,外出の頻度や時間については不安の有無で有意差を認めた。

当院では,退院後の不安軽減を目的に退院前指導を実施しているが,病院の特性上,病院内での指導がメインであり,実場面での指導は十分に実施できていない現状である。平成28年の診療報酬改定において,生活機能に関するリハビリテーションの実施場所の拡充が図られた。退院後の「外出」に対する不安を軽減するには,実場面での指導をさらに充実させることや退院前の試験外出・外泊を積極的に促すなどの対応が必要と考えた。また,家族からの情報収集や家屋状況の写真などを用いて,不安の軽減に努めることが重要と考えた。今後はこれらの対策を実施したうえで,再調査を行う予定である。