[P-MT-38-2] 腰椎疾患患者における術前と退院時での疼痛の変化に関連する因子の検討
Keywords:日本整形外科学会腰椎疾患質問票(JOABPEQ), 腰椎疾患, 疼痛
【はじめに,目的】
腰椎疾患術後患者においては,疼痛やしびれが術後早期に改善し,退院できる場合もあれば,疼痛が遷延してしまうこともある。今回我々は,腰椎疾患質問票(JOABPEQ)の疼痛関連障害の項目に着目し,術前と退院時での疼痛の変化に関連する因子を検討したので報告する。
【方法】
当院にて平成25年1月から平成28年4月までに腰椎手術を受け,リハビリテーションが施行された腰椎変性疾患ならびに椎体骨折の患者で,生検や感染患者を除く560名を対象とし,JOABPEQの項目をすべて満たしているn=180名を対象とした。評価項目は,基本属性(年齢,性別),JOABPEQの各項目(疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害)とし,術前,退院時の2時点で評価した。解析は,疼痛関連障害得点の変化と各因子とのSpearmanの順位相関係数を算出した。なお各疼痛関連障害得点の変化値は退院時の値から術前の値を引いた値とし,上昇幅を示す指標とした。次に従属変数は疼痛関連障害得点の変化,独立変数は,年齢,性別,術前の各JOABPEQ値として重回帰分析(強制投入法)を実施した。得られた回帰モデルの有意性,適合性,多重共線性はF検定,自由度調整済決定係数,Variance Inflation Factor(VIF)を算出し,確認した。統計ソフトはR version 3.2.4 Revisedを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は68.0±14.0歳で,女性52名(29%),男性128名(71%)であった。疼痛関連障害得点の変化の平均±標準偏差は24.1±41.0,術前の疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の中央値(四分位数範囲)は順に29(0-46),42(17-75),44(33-57),21(7-43),32(16-51)であった。疼痛関連障害の変化値と術前の疼痛関連障害(rs=-0.51,p<0.01),腰椎機能障害(rs=-0.22,p<0.01),社会生活障害(rs=-0.23,p<0.01),心理的障害(rs=-0.22,p<0.01)とで有意な相関関係が示された。重回帰分析の結果,疼痛関連障害得点の上昇幅には,術前の疼痛関連得点が低い(編回帰係数=-0.56,p<0.01),年齢が低い(編回帰係数=-0.21,p<0.01)が関連した。重回帰モデルの有意性は確認され(p<0.01),自由度調整済決定係数は0.35,VIFは全ての独立変数で2未満を示した。
【結論】
今回我々の調査では,疼痛関連障害得点の上昇幅には,術前の疼痛関連得点が低い,年齢が低いが関連することが示唆された。平成25年度の国民生活基礎調査では,日本人の腰痛の有訴者は人口1000人あたり105.7人であるが,65歳以上では腰痛は男女とも有訴率の第1位となり,加齢とともに増加する。腰椎疾患により手術を施行する患者は高齢者であることが多く,入院中の疼痛の改善度が低い可能性が示唆され,周術期の疼痛コントロールが重要であると考えた。
腰椎疾患術後患者においては,疼痛やしびれが術後早期に改善し,退院できる場合もあれば,疼痛が遷延してしまうこともある。今回我々は,腰椎疾患質問票(JOABPEQ)の疼痛関連障害の項目に着目し,術前と退院時での疼痛の変化に関連する因子を検討したので報告する。
【方法】
当院にて平成25年1月から平成28年4月までに腰椎手術を受け,リハビリテーションが施行された腰椎変性疾患ならびに椎体骨折の患者で,生検や感染患者を除く560名を対象とし,JOABPEQの項目をすべて満たしているn=180名を対象とした。評価項目は,基本属性(年齢,性別),JOABPEQの各項目(疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害)とし,術前,退院時の2時点で評価した。解析は,疼痛関連障害得点の変化と各因子とのSpearmanの順位相関係数を算出した。なお各疼痛関連障害得点の変化値は退院時の値から術前の値を引いた値とし,上昇幅を示す指標とした。次に従属変数は疼痛関連障害得点の変化,独立変数は,年齢,性別,術前の各JOABPEQ値として重回帰分析(強制投入法)を実施した。得られた回帰モデルの有意性,適合性,多重共線性はF検定,自由度調整済決定係数,Variance Inflation Factor(VIF)を算出し,確認した。統計ソフトはR version 3.2.4 Revisedを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は68.0±14.0歳で,女性52名(29%),男性128名(71%)であった。疼痛関連障害得点の変化の平均±標準偏差は24.1±41.0,術前の疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の中央値(四分位数範囲)は順に29(0-46),42(17-75),44(33-57),21(7-43),32(16-51)であった。疼痛関連障害の変化値と術前の疼痛関連障害(rs=-0.51,p<0.01),腰椎機能障害(rs=-0.22,p<0.01),社会生活障害(rs=-0.23,p<0.01),心理的障害(rs=-0.22,p<0.01)とで有意な相関関係が示された。重回帰分析の結果,疼痛関連障害得点の上昇幅には,術前の疼痛関連得点が低い(編回帰係数=-0.56,p<0.01),年齢が低い(編回帰係数=-0.21,p<0.01)が関連した。重回帰モデルの有意性は確認され(p<0.01),自由度調整済決定係数は0.35,VIFは全ての独立変数で2未満を示した。
【結論】
今回我々の調査では,疼痛関連障害得点の上昇幅には,術前の疼痛関連得点が低い,年齢が低いが関連することが示唆された。平成25年度の国民生活基礎調査では,日本人の腰痛の有訴者は人口1000人あたり105.7人であるが,65歳以上では腰痛は男女とも有訴率の第1位となり,加齢とともに増加する。腰椎疾患により手術を施行する患者は高齢者であることが多く,入院中の疼痛の改善度が低い可能性が示唆され,周術期の疼痛コントロールが重要であると考えた。