[P-MT-38-4] 慢性腰痛女性における呼吸機能と脊柱可動性の検討
Keywords:慢性腰痛, 呼吸機能, 脊柱可動性
【はじめに,目的】
慢性腰痛の身体的要因として呼吸筋である横隔膜や腹横筋の機能不全が挙げられる。特に慢性腰痛女性では胸椎可動性低下も指摘されており,胸椎可動性低下に伴う胸腹部可動性低下や呼吸筋機能低下は肺機能を低下させる可能性がある。しかし慢性腰痛と呼吸機能の関連を示した研究は少ない。そこで今回女性を対象に肺活量,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性を測定し慢性腰痛の有無によって違いがあるか,また呼吸機能と各項目の関連性を検討した。
【方法】
対象者は病院に勤務している看護師,看護助手,リハビリテーション部の女性にアンケートを行い,健常な女性10名(健常群:年齢23.2歳,BMI:19.42kg/m2)と,慢性腰痛のある女性10名(腰痛群:年齢22.7歳,BMI:19.83kg/m2)を対象とした。腰痛群は3ヵ月以上の慢性(反復性)腰痛がある者で,Oswestry Disability Indexのスコアが10点以上の者を選択した。整形外科的疾患,呼吸循環器疾患,神経疾患,妊娠の経験がある者は除外した。
肺機能,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性を測定した。肺機能はスパイロメーターを使用し,努力性肺活量(FVC,%FVC)を座位にて3回測定し最大値を採用した。呼吸筋力は口腔内圧計を使用し,最大吸気圧(PImax)と最大呼気圧(PEmax)を測定した。3回測定し最大値を採用した。胸腹部可動性は呼吸運動測定器を使用し,深呼吸時の呼吸運動を9段階のスケール値(0~8)で表した。測定肢位は背臥位で,利き手の上部胸郭(第3肋骨),下部胸郭(第8肋骨),腹部の3か所で3回ずつ測定し最大値を採用した。脊柱可動性はスパイナルマウスを使用し直立位,前屈位,後屈位の3条件で第7頸椎から第3仙骨までの脊柱傍線上を移動させた。胸椎の角度と腰椎の角度を算出し,前屈位と後屈位の角度の差を求め,これを胸椎,腰椎可動性と定義した。各肢位で2回測定し平均値を採用した。
肺機能,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性における健常群と腰痛群の比較にMann-WhitneyのU検定を用いた。各群のFCVと呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性との相関を検討するためSpearmanの積率相関係数を算出した。
【結果】
腰痛群の%FVCは,健常群より有意な低値が認められた(p<0.05)。FVC,PImax,PEmax,呼吸運動測定スケール値(上部胸郭,下部胸郭,腹部),胸椎および腰椎可動角度は2群間に有意差は認められなかった。
健常群はFVCと各項目の相関は認められなかった(rs=0.04~-0.29)。腰痛群はFVCと上部胸郭(rs=0.90),下部胸郭(rs=0.71),腹部(rs=0.64),胸腹部合計(rs=0.83)に相関を認めた。
【結論】
慢性腰痛女性は,健常女性より%FVCが低下している可能性が示された。慢性腰痛女性ではFVCと上部胸郭スケール値に強い正の相関が認められたことからFVC低下の一因として胸郭可動性が関連している可能性が考えられる。
慢性腰痛の身体的要因として呼吸筋である横隔膜や腹横筋の機能不全が挙げられる。特に慢性腰痛女性では胸椎可動性低下も指摘されており,胸椎可動性低下に伴う胸腹部可動性低下や呼吸筋機能低下は肺機能を低下させる可能性がある。しかし慢性腰痛と呼吸機能の関連を示した研究は少ない。そこで今回女性を対象に肺活量,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性を測定し慢性腰痛の有無によって違いがあるか,また呼吸機能と各項目の関連性を検討した。
【方法】
対象者は病院に勤務している看護師,看護助手,リハビリテーション部の女性にアンケートを行い,健常な女性10名(健常群:年齢23.2歳,BMI:19.42kg/m2)と,慢性腰痛のある女性10名(腰痛群:年齢22.7歳,BMI:19.83kg/m2)を対象とした。腰痛群は3ヵ月以上の慢性(反復性)腰痛がある者で,Oswestry Disability Indexのスコアが10点以上の者を選択した。整形外科的疾患,呼吸循環器疾患,神経疾患,妊娠の経験がある者は除外した。
肺機能,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性を測定した。肺機能はスパイロメーターを使用し,努力性肺活量(FVC,%FVC)を座位にて3回測定し最大値を採用した。呼吸筋力は口腔内圧計を使用し,最大吸気圧(PImax)と最大呼気圧(PEmax)を測定した。3回測定し最大値を採用した。胸腹部可動性は呼吸運動測定器を使用し,深呼吸時の呼吸運動を9段階のスケール値(0~8)で表した。測定肢位は背臥位で,利き手の上部胸郭(第3肋骨),下部胸郭(第8肋骨),腹部の3か所で3回ずつ測定し最大値を採用した。脊柱可動性はスパイナルマウスを使用し直立位,前屈位,後屈位の3条件で第7頸椎から第3仙骨までの脊柱傍線上を移動させた。胸椎の角度と腰椎の角度を算出し,前屈位と後屈位の角度の差を求め,これを胸椎,腰椎可動性と定義した。各肢位で2回測定し平均値を採用した。
肺機能,呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性における健常群と腰痛群の比較にMann-WhitneyのU検定を用いた。各群のFCVと呼吸筋力,胸腹部可動性,脊柱可動性との相関を検討するためSpearmanの積率相関係数を算出した。
【結果】
腰痛群の%FVCは,健常群より有意な低値が認められた(p<0.05)。FVC,PImax,PEmax,呼吸運動測定スケール値(上部胸郭,下部胸郭,腹部),胸椎および腰椎可動角度は2群間に有意差は認められなかった。
健常群はFVCと各項目の相関は認められなかった(rs=0.04~-0.29)。腰痛群はFVCと上部胸郭(rs=0.90),下部胸郭(rs=0.71),腹部(rs=0.64),胸腹部合計(rs=0.83)に相関を認めた。
【結論】
慢性腰痛女性は,健常女性より%FVCが低下している可能性が示された。慢性腰痛女性ではFVCと上部胸郭スケール値に強い正の相関が認められたことからFVC低下の一因として胸郭可動性が関連している可能性が考えられる。