[P-MT-39-2] 大腿骨近位部骨折患者における術後1週座位での下肢荷重率と歩行再獲得の関連
Keywords:大腿骨近位部骨折, 座位下肢荷重率, 歩行再獲得
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折の歩行能力に関して,荷重開始後1週の運動能力,術後1週の歩行能力などが予後や家庭復帰の目安になるとして報告されている。特に近年,在院日数の短縮にあわせ,術後早期に歩行能力に関する予後を予測する必要性がある。予後予測はより簡便な方法で明確な因子を用いることで,臨床で効率的に実施可能な指標になりえる。そのため,本研究では村田らの下肢荷重率測定法を使用し,歩行再獲得との関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象の取り込み基準は,平成28年1月から平成28年10月までに大腿骨頚部骨折もしくは転子部骨折の診断で,人工骨頭置換術か観血的整復固定術を施行した患者とした。除外基準は,a)他部位に整形外科的既往歴のある者,b)重篤な併存疾患(心疾患,神経疾患等)を有する者,c)認知障害が有り評価困難である者,d)術後一週時点で移乗不可能な者,e)荷重制限がある者とした。測定項目は,ア)基本的患者属性(年齢,性別,術前待機日数,身長,体重,BMI,術式),イ)術後1週の等尺性股関節外転筋力体重比(以下,外転筋力)と等尺性膝関節伸展筋力体重比(以下,膝伸展筋力),ウ)術後1週座位での下肢荷重率(以下,荷重率),エ)当院退院時歩行能力とした。荷重率は45cm台に腰掛けて体重計に足を乗せ,殿部が浮かないように最大努力下で押すよう指示して測定した。安定して得られた数値を体重で除した値の百分率を荷重率とした。統計解析は,統計解析ソフトRコマンダーにて行い,記述統計で対象者の基本属性を確認した。術後2週時点で歩行が50m以上可能か否かで可能群・不可群の2群に分け,筋力と荷重率の群間の差をみるために分布に応じてt検定・Mann-WhitneyのU検定を適用した。また,Spearmanの順位相関分析を用いて,荷重率と他項目との関連を調査した。その際,有意水準は5%とした。
【結果】
取り込み基準と除外基準を満たしたものは,19名(男性9名・女性10名)であった。調査項目の平均値(標準偏差)は年齢74.9(10.7)歳,術前待機日数9.2(4.3)日,身長157.7(11.4)cm,体重52.0(8.8)kg,BMI20.9(2.2)kg/m2であった。術式は,人工骨頭置換術が17名・観血的整復固定術(γネイル)が2名であった。2群の差の検定の結果有意差があったものは,患側外転筋力(P値=0.0005)と患側膝伸展筋力(P値=0.001),健側膝伸展筋力(P値=0.0004),健側の荷重率(P値=0.01)であった。患側の荷重率はP値=0.15で有意差を認めなかった。また,患側の荷重率と筋力値は,患側股外転筋(r=0.49),患側膝伸展筋(r=0.43)で中等度の正の相関があった。
【結論】
今回の結果より,患側の股外転筋力と膝伸展筋力,座位での下肢荷重率は歩行能力と関連しており,歩行自立の危険因子である可能性が示唆された。今後,前向き研究を行うことで予測因子となり得るか,さらなる研究の継続が必要と考えられる。
大腿骨近位部骨折の歩行能力に関して,荷重開始後1週の運動能力,術後1週の歩行能力などが予後や家庭復帰の目安になるとして報告されている。特に近年,在院日数の短縮にあわせ,術後早期に歩行能力に関する予後を予測する必要性がある。予後予測はより簡便な方法で明確な因子を用いることで,臨床で効率的に実施可能な指標になりえる。そのため,本研究では村田らの下肢荷重率測定法を使用し,歩行再獲得との関連を調査することを目的とした。
【方法】
対象の取り込み基準は,平成28年1月から平成28年10月までに大腿骨頚部骨折もしくは転子部骨折の診断で,人工骨頭置換術か観血的整復固定術を施行した患者とした。除外基準は,a)他部位に整形外科的既往歴のある者,b)重篤な併存疾患(心疾患,神経疾患等)を有する者,c)認知障害が有り評価困難である者,d)術後一週時点で移乗不可能な者,e)荷重制限がある者とした。測定項目は,ア)基本的患者属性(年齢,性別,術前待機日数,身長,体重,BMI,術式),イ)術後1週の等尺性股関節外転筋力体重比(以下,外転筋力)と等尺性膝関節伸展筋力体重比(以下,膝伸展筋力),ウ)術後1週座位での下肢荷重率(以下,荷重率),エ)当院退院時歩行能力とした。荷重率は45cm台に腰掛けて体重計に足を乗せ,殿部が浮かないように最大努力下で押すよう指示して測定した。安定して得られた数値を体重で除した値の百分率を荷重率とした。統計解析は,統計解析ソフトRコマンダーにて行い,記述統計で対象者の基本属性を確認した。術後2週時点で歩行が50m以上可能か否かで可能群・不可群の2群に分け,筋力と荷重率の群間の差をみるために分布に応じてt検定・Mann-WhitneyのU検定を適用した。また,Spearmanの順位相関分析を用いて,荷重率と他項目との関連を調査した。その際,有意水準は5%とした。
【結果】
取り込み基準と除外基準を満たしたものは,19名(男性9名・女性10名)であった。調査項目の平均値(標準偏差)は年齢74.9(10.7)歳,術前待機日数9.2(4.3)日,身長157.7(11.4)cm,体重52.0(8.8)kg,BMI20.9(2.2)kg/m2であった。術式は,人工骨頭置換術が17名・観血的整復固定術(γネイル)が2名であった。2群の差の検定の結果有意差があったものは,患側外転筋力(P値=0.0005)と患側膝伸展筋力(P値=0.001),健側膝伸展筋力(P値=0.0004),健側の荷重率(P値=0.01)であった。患側の荷重率はP値=0.15で有意差を認めなかった。また,患側の荷重率と筋力値は,患側股外転筋(r=0.49),患側膝伸展筋(r=0.43)で中等度の正の相関があった。
【結論】
今回の結果より,患側の股外転筋力と膝伸展筋力,座位での下肢荷重率は歩行能力と関連しており,歩行自立の危険因子である可能性が示唆された。今後,前向き研究を行うことで予測因子となり得るか,さらなる研究の継続が必要と考えられる。