[P-MT-39-3] 大腿骨近位部骨折患者の歩行開始時における特性について
―逆応答反応と第一歩におけるCOPの前方移動距離および速度との関連―
Keywords:大腿骨近位部骨折, 歩行開始, COP
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折患者(骨折者)は,歩行開始時に跛行を生じることが多く,歩行の実用性を低下させる。歩行開始時は,足圧中心(COP)の安静立位から一歩目の遊脚側後方への移動である逆応答反応が引き金となり,身体重心の前方移動に繋がる。しかし,骨折者の歩行開始時の逆応答反応と第一歩の関連性は明らかでない。そこで本研究の目的は,骨折者の逆応答反応と第一歩におけるCOPの前方移動距離,速度との関連を調査し,歩行開始時の力学的特性を検討することとした。
【方法】
対象は初回大腿骨近位部骨折術後患者6名(83.2±4.3歳,女性6名)とし,比較対照群として健常者9名(24.7±2.1歳,女性3名)を測定した。歩行分析には圧力計式歩行解析装置(床反力計)を用い,独歩にて計測した。計測は,床反力計上で5秒間の静止立位をとった後に,歩行を開始した。骨折者の第一歩は患側,健常者は右下肢からとし,5試行実施した内の3から5試行目のデータを平均した。逆応答反応は,開始5秒後から一側下肢が離れるまでのCOPの最大後方移動距離を算出した。第一歩における重心移動は,最初に足部が接地した位置から第一の床反力の最大値まで,第一から第二の床反力の最大値まで,第二の床反力の最大値までの3区間に分類し,それぞれの区間のCOPの前方移動距離と平均速度を求めた。統計学的解析は,両群の逆応答反応と第一歩におけるCOPの前方移動距離,平均速度の差をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した。また,骨折者の逆応答反応とCOPの平均速度の関係をSpearman順位相関係数にて求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
健常者と比べ骨折者では,逆応答反応の有意な低下を認めた(骨折者:18.1±7.2mm,健常者:30.7±10.5mm;p=.03)。COPの前方移動距離は,第一の床反力の最大値まででは有意に長く(骨折者:84.3±8.9mm,健常者:65.0±15.8mm;p=.03),第一から第二の床反力の最大値まででは有意に短縮していた(骨折者:75.3±60.8mm,健常者:123.9±14.7mm;p=.03)。第二の床反力の最大値までの距離に有意差は認めなかった(p>.05)。COPの平均速度は,第二の床反力の最大値まで(骨折者:213.2±99.9 mm/秒,健常者:288.6±27.8 mm/秒;p=.03)および,第一から第二の床反力の最大値までに有意な低下を認めた(骨折者:213.7±161.2 mm/秒,健常者:337.9±47.2 mm/秒;p=.03)。第一の床反力の最大値までに有意差は認めなかった(p>.05)。また,骨折者においては,逆応答反応と第二の床反力の最大値までのCOPの平均速度,および第一から第二の床反力の最大値までのCOPの平均速度に強い正の相関関係を認めた(いずれもρ=.83,p=.04)。
【結論】
本研究の結果から,骨折者は健常者と比較して逆応答反応が低下し,第一歩の円滑な前方への重心移動が停滞しており,骨折者においては逆応答反応と第一歩におけるCOPの平均速度と関連していることが歩行特性として抽出された。
大腿骨近位部骨折患者(骨折者)は,歩行開始時に跛行を生じることが多く,歩行の実用性を低下させる。歩行開始時は,足圧中心(COP)の安静立位から一歩目の遊脚側後方への移動である逆応答反応が引き金となり,身体重心の前方移動に繋がる。しかし,骨折者の歩行開始時の逆応答反応と第一歩の関連性は明らかでない。そこで本研究の目的は,骨折者の逆応答反応と第一歩におけるCOPの前方移動距離,速度との関連を調査し,歩行開始時の力学的特性を検討することとした。
【方法】
対象は初回大腿骨近位部骨折術後患者6名(83.2±4.3歳,女性6名)とし,比較対照群として健常者9名(24.7±2.1歳,女性3名)を測定した。歩行分析には圧力計式歩行解析装置(床反力計)を用い,独歩にて計測した。計測は,床反力計上で5秒間の静止立位をとった後に,歩行を開始した。骨折者の第一歩は患側,健常者は右下肢からとし,5試行実施した内の3から5試行目のデータを平均した。逆応答反応は,開始5秒後から一側下肢が離れるまでのCOPの最大後方移動距離を算出した。第一歩における重心移動は,最初に足部が接地した位置から第一の床反力の最大値まで,第一から第二の床反力の最大値まで,第二の床反力の最大値までの3区間に分類し,それぞれの区間のCOPの前方移動距離と平均速度を求めた。統計学的解析は,両群の逆応答反応と第一歩におけるCOPの前方移動距離,平均速度の差をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した。また,骨折者の逆応答反応とCOPの平均速度の関係をSpearman順位相関係数にて求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
健常者と比べ骨折者では,逆応答反応の有意な低下を認めた(骨折者:18.1±7.2mm,健常者:30.7±10.5mm;p=.03)。COPの前方移動距離は,第一の床反力の最大値まででは有意に長く(骨折者:84.3±8.9mm,健常者:65.0±15.8mm;p=.03),第一から第二の床反力の最大値まででは有意に短縮していた(骨折者:75.3±60.8mm,健常者:123.9±14.7mm;p=.03)。第二の床反力の最大値までの距離に有意差は認めなかった(p>.05)。COPの平均速度は,第二の床反力の最大値まで(骨折者:213.2±99.9 mm/秒,健常者:288.6±27.8 mm/秒;p=.03)および,第一から第二の床反力の最大値までに有意な低下を認めた(骨折者:213.7±161.2 mm/秒,健常者:337.9±47.2 mm/秒;p=.03)。第一の床反力の最大値までに有意差は認めなかった(p>.05)。また,骨折者においては,逆応答反応と第二の床反力の最大値までのCOPの平均速度,および第一から第二の床反力の最大値までのCOPの平均速度に強い正の相関関係を認めた(いずれもρ=.83,p=.04)。
【結論】
本研究の結果から,骨折者は健常者と比較して逆応答反応が低下し,第一歩の円滑な前方への重心移動が停滞しており,骨折者においては逆応答反応と第一歩におけるCOPの平均速度と関連していることが歩行特性として抽出された。