[P-MT-40-4] 大腿骨近位部骨折患者における自宅復帰に影響する因子の検討
Keywords:大腿骨近位部骨折, 自宅復帰, ADL
【目的】
高齢者の大腿骨近位部骨折は,地域包括ケアシステム構築において重要な対象疾患の一つであり,早期から在宅を見据えた歩行・ADLなどの動作介入は,術後合併症予防ならびに在院日数の短縮も期待される。自宅復帰に関わる因子として,年齢,受傷前の歩行能力,認知機能の程度,介護者の有無などの報告がされており,術後早期から活用できる指標が求められる。今後,当院における大腿骨近位部骨折の予後予測チャート作成に向け,今回,自宅復帰に影響する因子を後方視的に調査・検討することを目的とした。
【対象と方法】
対象は,平成26年1月から平成27年12月までに自宅で転倒受傷し当院で大腿骨近位部骨折に対して手術(人工骨頭挿入術または観血的骨接合術)を施行した75歳以上の女性72名(平均年齢85.1±5.78歳)とし,自宅に退院した群(自宅群)45名,自宅以外へ退院した群(非自宅群)27名の2群に分類した。検討項目は,カルテより年齢,BMI,手術後離床開始日数,手術後歩行開始日数,入院前の歩行・トイレ・入浴・更衣と退院時の歩行・トイレ・入浴・更衣,認知症の有無を抽出し2群間で比較した。ADLの項目に関してはBarthel Indexの点数を用いた。統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定とX2検定を行った。有意差がみられた項目に関して,ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は危険値5%未満とした。
【結果】
自宅群/非自宅群の平均値と標準偏差値は,年齢82.7±5.5/89.0±3.8歳,BMI 21.7±4.0/20.0±3.4,手術後離床開始日数2.5±1.6日/3.3±2.1日,手術後歩行開始日数5.5±3.2/5.9±3.1日,入院前の歩行14.2±1.8点/13.0±2.5点,トイレ9.8±1.0/8.3±2.4点,入浴3.9±2.1/1.7±2.4点,更衣9.8±1.0/8.1±2.5点,退院時の歩行12.9±3.1点/7.0±4.7点,トイレ9.0±2.0/6.5±2.7点,入浴1.9±2.5/0.0±0.0点,更衣9.2±1.8/5.4±2.7点であった。認知症の有無は,有り14/21名,無し31/6名であった。2群間で有意差がみられたのが,年齢,入院前の歩行・トイレ・入浴・更衣,退院時の歩行・トイレ・入浴・更衣と認知症の有無であった。ロジスティック回帰解析での自宅退院の因子は,退院時更衣動作が影響していた。
【考察】
今回の結果から年齢,入院前のADL,退院時のADL,認知症の有無が自宅復帰に影響する因子として挙げられた。これは,岡田らによるADL(着替え・入浴・排泄)が自立していることが,自宅で生活していることと有意な関連があるとした報告と同様の結果であった。これらの結果からも,早期から立位・歩行に併せトイレ動作・更衣動作の自立度を高めることは,自宅復帰の一要因になりうると考える。今後,術式による自宅復帰率の違いなども調査を行い,大腿骨近位部骨折の予後予測チャートを作成し,他職種間で共有できるよう努めたい。
高齢者の大腿骨近位部骨折は,地域包括ケアシステム構築において重要な対象疾患の一つであり,早期から在宅を見据えた歩行・ADLなどの動作介入は,術後合併症予防ならびに在院日数の短縮も期待される。自宅復帰に関わる因子として,年齢,受傷前の歩行能力,認知機能の程度,介護者の有無などの報告がされており,術後早期から活用できる指標が求められる。今後,当院における大腿骨近位部骨折の予後予測チャート作成に向け,今回,自宅復帰に影響する因子を後方視的に調査・検討することを目的とした。
【対象と方法】
対象は,平成26年1月から平成27年12月までに自宅で転倒受傷し当院で大腿骨近位部骨折に対して手術(人工骨頭挿入術または観血的骨接合術)を施行した75歳以上の女性72名(平均年齢85.1±5.78歳)とし,自宅に退院した群(自宅群)45名,自宅以外へ退院した群(非自宅群)27名の2群に分類した。検討項目は,カルテより年齢,BMI,手術後離床開始日数,手術後歩行開始日数,入院前の歩行・トイレ・入浴・更衣と退院時の歩行・トイレ・入浴・更衣,認知症の有無を抽出し2群間で比較した。ADLの項目に関してはBarthel Indexの点数を用いた。統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定とX2検定を行った。有意差がみられた項目に関して,ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は危険値5%未満とした。
【結果】
自宅群/非自宅群の平均値と標準偏差値は,年齢82.7±5.5/89.0±3.8歳,BMI 21.7±4.0/20.0±3.4,手術後離床開始日数2.5±1.6日/3.3±2.1日,手術後歩行開始日数5.5±3.2/5.9±3.1日,入院前の歩行14.2±1.8点/13.0±2.5点,トイレ9.8±1.0/8.3±2.4点,入浴3.9±2.1/1.7±2.4点,更衣9.8±1.0/8.1±2.5点,退院時の歩行12.9±3.1点/7.0±4.7点,トイレ9.0±2.0/6.5±2.7点,入浴1.9±2.5/0.0±0.0点,更衣9.2±1.8/5.4±2.7点であった。認知症の有無は,有り14/21名,無し31/6名であった。2群間で有意差がみられたのが,年齢,入院前の歩行・トイレ・入浴・更衣,退院時の歩行・トイレ・入浴・更衣と認知症の有無であった。ロジスティック回帰解析での自宅退院の因子は,退院時更衣動作が影響していた。
【考察】
今回の結果から年齢,入院前のADL,退院時のADL,認知症の有無が自宅復帰に影響する因子として挙げられた。これは,岡田らによるADL(着替え・入浴・排泄)が自立していることが,自宅で生活していることと有意な関連があるとした報告と同様の結果であった。これらの結果からも,早期から立位・歩行に併せトイレ動作・更衣動作の自立度を高めることは,自宅復帰の一要因になりうると考える。今後,術式による自宅復帰率の違いなども調査を行い,大腿骨近位部骨折の予後予測チャートを作成し,他職種間で共有できるよう努めたい。