The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-40] ポスター(運動器)P40

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-40-5] 年齢別にみた超高齢女性の大腿骨近位部骨折後の身体機能と退院先の関係

大岡 恒雄1, 浦辺 幸夫2, 前田 慶明2, 島 俊也1, 白川 泰山1 (1.マッターホルンリハビリテーション病院, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究科)

Keywords:超高齢者, 大腿骨近位部骨折, 退院先

【はじめに,目的】

我が国は超高齢社会の進行に伴い,85歳あるいは90歳以上のいわゆる超高齢者(oldest old)が大腿骨近位部骨折を受傷することが多くなっている。当院では,超高齢者における大腿骨近位部骨折術後の運動療法の機会が増加している。超高齢者の大腿骨近位部骨折患者に関する先行研究では,術後の歩行再獲得率や自宅退院の関連因子などについて報告があるが,超高齢者を年齢別に分け身体機能や退院先を比較した報告は渉猟した限りでは見当たらない。

本研究は,90歳以上の対象で他の年齢層と比較し身体機能や退院先に違いがあるかを明らかにし,効果的な理学療法の一助になることを目的とした。



【方法】

対象は,平成24年6月1日~平成28年10月1日の4年4カ月の期間,当院にて手術後に入院治療した80歳以上の大腿骨近位部骨折患者女性133名とした。対象を80歳から5歳ごとに3群に分けた(80~84歳群45名,85~89歳群48名,90歳以上群40名)。各群で退院先,年齢,身長,体重,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),入院時と退院時の10m歩行時間および術側の等尺性膝伸展筋力,機能的自立度評価表(FIM)などを調査した。統計学的分析は,3群の調査項目の比較は一元配置分散分析を行い,90歳以上群の自宅群と非自宅群の比較は対応のないt検定を行った。危険率は5%未満を有意とした。



【結果】

80~84歳群の退院先は自宅37名(87%),施設6名(10%),転院2名(3%),死亡0名であった。85~89歳群では同様に,自宅34名(65%),施設12名(32%),転院3名(3%),死亡0名であった。90歳以上群では自宅17名(42%),施設14名(34%),転院5名(12%),死亡5名(12%)であった。

80~84歳群の10m歩行時間は,入院時14.2±7.5秒,退院時10.8±3.2秒となった(p<0.05)。85~89歳群では,入院時21.0±13.3秒,退院時14.2±6.1秒となった(p<0.05)。90歳以上群では,入院時28.7±15.1秒,退院時18.9±8.9秒となった(p<0.05)。80~84歳群の入院時のFIMは,入院時の85~89歳群と90歳以上群の値より有意に高かった(p<0.05)。80~84歳群と90歳以上群では体重,入院時と退院時の術側の等尺性膝伸展筋力,FIMで90歳以上群の方が有意に低値であった(p<0.05)。

90歳以上の自宅群は非自宅群に比べ,体重,HDS-R,入院時と退院時の10m歩行時間,入院時と退院時の術側等尺性膝伸展筋力,入院時と退院時のFIMで有意な差がみられた(p<0.05)。



【結論】

80~84歳群の自宅復帰率(87%)に対し,明らかに90歳以上群は低かった(42%)。90歳以上群で自宅群と非自宅群を比較した結果,90歳以上群の自宅復帰率を高めるための関連項目が多く示された。認知機能の改善に対する理学療法のコンセンサスは不十分な反面,超高齢者に理学療法を実施するうえでポイントになると考えた。