第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-41] ポスター(運動器)P41

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-41-1] 人工膝関節全置換術後患者の術創部癒着を評価する測定器具の信頼性と妥当性

藤澤 俊介1, 古谷 英孝1, 山口 英典1, 田澤 智央1, 美崎 定也1, 杉本 和隆2 (1.苑田会人工関節センター病院リハビリテーション科, 2.苑田会人工関節センター病院整形外科)

キーワード:人工膝関節全置換, 術創部, 柔軟性

【はじめに,目的】

人工膝関節全置換術(TKA)を含む外科的手術による術創部の癒着は,疼痛,機能面に影響を及ぼすことが報告されている。TKAの術後成績を評価する上において術創部の柔軟性についても着目するべき点であると考える。Ferrieroらは,術創部の柔軟性の測定する器具としてAdheremeterを開発し,信頼性があることを報告した。今回,TKA後におけるAdheremeterの信頼性と妥当性を検証することとした。

【方法】

Adheremeterは,術創部を対象者が痛みに耐えうる範囲において上下内外方向へ最大伸張し,その最大位を結んだ4角形の可動面積{(内側+外側)×(上方+下方)÷2}を算出することによって術創部の柔軟性を評価する測定器具である。今回,術創部の柔軟性を示す変数として膝蓋上嚢部,膝蓋骨上部,膝蓋腱部の3点の合計面積を算出した。測定肢位は膝関節屈曲30°,90°,最終域とした。対象は,初回TKAを施行し,術後2ヵ月以上経過した者とした。除外基準は再置換術,骨関節の手術既往歴,皮膚疾患,火傷,リンパ浮腫を有する者とした。検者内信頼性は,2週間以内に同一患者に再測定を行い,検者間信頼性は,ランダムに選択された3名の理学療法士が同時期に同一患者に測定を行った。統計解析は検者内・間信頼性には級内相関係数,系統誤差の有無にはBland-Altman plotを用いた。外的基準として膝関節屈曲可動域,瘢痕に対する評価尺度であるVancouver Scar Scale(VSS),瘢痕を客観的因子及び主観的因子から評価するKyoto Scar Scale(KSS),手術した人工関節を意識しないで生活できている程度を評価する日本語版Forgotten Joint Score(JFJS-12),Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)疼痛項目,身体項目(WOMAC-P,-F),11段階のNumerical Rating Scaleによる最終屈曲位伸張感,階段昇降時伸張感とした。統計解析は単相関分析を用いた(有意水準5%)。

【結果】

対象は35名,男性7脚,女性42脚,平均年齢73±13歳であった。級内相関係数の結果,ICC(1,1):0.74(95%CI:0.54-0.87),ICC(2,1):0.84(95%CI:0.68-0.92)であり,Bland-Altman plotからも系統誤差は確認されなかった。単相関分析の結果,30°面積は最終屈曲位伸張感(r=-0.29),WOMAC-F(r=0.29),90°面積は階段昇降時伸張感(r=-0.41),屈曲可動域(r=0.39),WOMAC-F(r=0.33),最終屈曲位伸張感(r=-0.31),最終域面積は最終屈曲位伸張感(r=-0.37),階段昇降時伸張感(r=-0.35),VSS(r=-0.31),WOMAC-F(r=0.30),JFJS-12(r=0.28)にそれぞれ有意な相関を認めた。

【結論】

AdheremeterはTKA後の術創部の柔軟性を測定する上で信頼性,妥当性を兼ね備えた器具であることが示された。また,術創部の柔軟性が良いと屈曲可動域が良好であり身体機能が高く,膝を気にせず,階段昇降の伸張感も少ないことが確認された。