[P-MT-41-2] 人工膝関節置換術患者における簡易的に下肢筋力を評価できるパフォーマンステストの信頼性と妥当性
階段昇降困難感との関連性・2施設間研究
Keywords:人工膝関節置換術, 片脚スクワットテスト, 階段降段困難感
【目的】
人工膝関節置換術(Knee Joint Replacement:KJR)の治療成績は良好であるが,階段昇降動作時に困難感が残存する者が多いと報告されている。階段昇降能力を評価する上で下肢筋力や動作の質を評価することは重要であり,臨床上簡便に評価できる方法が望まれる。簡便に下肢筋力を評価できるパフォーマンステストとして片脚スクワットテスト(Single Leg Squat Test:SLST)があり,主に前十字靭帯損傷術後患者に用いられている。SLSTは片脚立位から支持側の膝関節を約50°まで屈曲させて開始肢位に戻る動作を連続5回行わせるものであり,KJR患者にも適応可能であると考える。そこで,本研究の目的はKJR患者を対象にSLSTが下肢筋力および階段昇降動作困難感と関連するものか信頼性を含めて検討することとした。
【方法】
対象は,2施設のいずれかで片側または両側の初回KJRを施行された者とした。除外基準は,階段昇降が一足一段で行えない者,レントゲン画像上大腿脛骨角が180°以上,170°以下の者,重篤な術後合併症がある者,心疾患・神経疾患・下肢関節疾患の手術既往がある者,認知障害がある者とした。片脚スクワット5回中3回以上膝関節が第2趾よりも内側に位置した場合をPoor,それ以外の場合をGoodと評価し,片側例Good,両側例のうち両側Goodの者を良好群,それ以外の者を不良群に分類した。対象者20名のSLSTを撮影し,動画をもとに評価を行い,信頼性の検討を行った。妥当性の検討における外的基準は,5段階の階段昇降動作困難感(1:困難なし,2:少し困難,3:中等度困難,4:困難,5:かなり困難),手術した人工関節を意識しないで生活できている程度の評価に用いる日本語版Forgotten Joint Score(JFJS-12),活動性の高い術後患者の評価に用いる日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS)とし,群間比較を行った。また,等尺性膝関節伸展筋トルク(筋力),5段階の階段昇降動作時の疼痛において,GoodとPoorの比較を行った(有意水準5%)。
【結果】
SLSTの信頼性は,検者内0.73,検者間0.83であった。妥当性の対象者は,良好群39名(平均年齢72.7歳,BMI25.3kg/m2,女性79%,Good61脚),不良群46名(71.7歳,26.7 kg/m2,女性91%,Good21脚,Poor63脚)であった。昇段動作困難感(良好群:1.5,不良群:1.8),JHAAS(8.8,7.8)に有意差は認められなかったが,降段動作困難感(1.7,2.2),JFJS-12(63.2点,49.5点)において良好群よりも不良群の方が有意に劣っていた。また,階段昇降動作時の疼痛(Good:1.6,Poor:1.8)に有意差は認められなかったが,筋力(1.1Nm/kg,0.8Nm/kg)においてGoodよりもPoorの方が有意に劣っていた。
【結論】
SLSTは信頼性が高い上,筋力,降段動作困難感,膝を気にする程度に関連するパフォーマンステストであることを示した。SLSTは治療の効果判定として臨床的意義があると考える。
人工膝関節置換術(Knee Joint Replacement:KJR)の治療成績は良好であるが,階段昇降動作時に困難感が残存する者が多いと報告されている。階段昇降能力を評価する上で下肢筋力や動作の質を評価することは重要であり,臨床上簡便に評価できる方法が望まれる。簡便に下肢筋力を評価できるパフォーマンステストとして片脚スクワットテスト(Single Leg Squat Test:SLST)があり,主に前十字靭帯損傷術後患者に用いられている。SLSTは片脚立位から支持側の膝関節を約50°まで屈曲させて開始肢位に戻る動作を連続5回行わせるものであり,KJR患者にも適応可能であると考える。そこで,本研究の目的はKJR患者を対象にSLSTが下肢筋力および階段昇降動作困難感と関連するものか信頼性を含めて検討することとした。
【方法】
対象は,2施設のいずれかで片側または両側の初回KJRを施行された者とした。除外基準は,階段昇降が一足一段で行えない者,レントゲン画像上大腿脛骨角が180°以上,170°以下の者,重篤な術後合併症がある者,心疾患・神経疾患・下肢関節疾患の手術既往がある者,認知障害がある者とした。片脚スクワット5回中3回以上膝関節が第2趾よりも内側に位置した場合をPoor,それ以外の場合をGoodと評価し,片側例Good,両側例のうち両側Goodの者を良好群,それ以外の者を不良群に分類した。対象者20名のSLSTを撮影し,動画をもとに評価を行い,信頼性の検討を行った。妥当性の検討における外的基準は,5段階の階段昇降動作困難感(1:困難なし,2:少し困難,3:中等度困難,4:困難,5:かなり困難),手術した人工関節を意識しないで生活できている程度の評価に用いる日本語版Forgotten Joint Score(JFJS-12),活動性の高い術後患者の評価に用いる日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS)とし,群間比較を行った。また,等尺性膝関節伸展筋トルク(筋力),5段階の階段昇降動作時の疼痛において,GoodとPoorの比較を行った(有意水準5%)。
【結果】
SLSTの信頼性は,検者内0.73,検者間0.83であった。妥当性の対象者は,良好群39名(平均年齢72.7歳,BMI25.3kg/m2,女性79%,Good61脚),不良群46名(71.7歳,26.7 kg/m2,女性91%,Good21脚,Poor63脚)であった。昇段動作困難感(良好群:1.5,不良群:1.8),JHAAS(8.8,7.8)に有意差は認められなかったが,降段動作困難感(1.7,2.2),JFJS-12(63.2点,49.5点)において良好群よりも不良群の方が有意に劣っていた。また,階段昇降動作時の疼痛(Good:1.6,Poor:1.8)に有意差は認められなかったが,筋力(1.1Nm/kg,0.8Nm/kg)においてGoodよりもPoorの方が有意に劣っていた。
【結論】
SLSTは信頼性が高い上,筋力,降段動作困難感,膝を気にする程度に関連するパフォーマンステストであることを示した。SLSTは治療の効果判定として臨床的意義があると考える。