第52回日本理学療法学術大会

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[P-MT-43] ポスター(運動器)P43

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-43-1] 関節リウマチ患者における人工関節術後の退院時歩行速度に影響を及ぼす術前因子の検討

加古 誠人1, 鈴木 謙太郎1, 寺井 千晶1, 安田 尚太郎1, 松山 美乃里1, 佐藤 幸治1, 門野 泉2, 小嶋 俊久3 (1.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.名古屋大学医学系研究科整形外科学)

キーワード:関節リウマチ, 人工関節, 歩行速度

【はじめに,目的】

関節リウマチ(RA)は,自己免疫学的機序を背景に慢性増殖滑膜炎により関節の軟骨・骨破壊が生じる炎症性疾患である。RA治療は,生物学的製剤の導入により寛解が治療目標となっている一方で,長期罹患に伴い関節破壊が進行し,疼痛や歩行障害に対し,人工関節置換術が必要になるとされている。特に歩行能力は退院の可否の因子であるため,術前より退院時の歩行能力を予測し,適切なリハビリテーションを行うことが重要となる。そこで本研究は,人工関節術を施行したRA患者の退院時歩行速度に影響を及ぼす因子を検討することを目的とした。


【方法】

対象は,2015年5月から2016年5月までの期間に人工股関節置換術(THA)および人工膝関節置換術(TKA)を目的に当院へ入院したRA患者21例とした。歩行速度は,術前,退院時に10m最大歩行速度をそれぞれ2度測定し,速い値を採用した。年齢,罹患年数,身長,体重を診療録より抜粋し,体組成は体組成計(Inbody720)を用いて骨格筋量,体脂肪量,BMIを測定し,四肢筋肉量から骨格筋指数であるSkeletal Mass Index(SMI)を算出した。運動機能は,ハンドヘルドダイナモメータ(μtasF-100)を用い,術側,非術則の股関節外転および膝関節伸展筋トルクを算出した。術側,非術側の膝蓋骨近位10cmにおける大腿周径,下腿最大周径を測定した。痛みの評価は,痛みの程度をVisual analogue scale(VAS),痛みに対する破局的思考をPain catastrophizing scale(PCS)を用いて測定した。また,不安,抑うつをHospital anxiety and depression scale(HADS)を用いて測定した。統計処理は,退院時歩行速度に対する各指標間の関連をPeasonの相関係数を用いた。結果は,平均値±標準偏差で示し,有意水準は5%未満とした。


【結果】

対象者の内訳は,男性6例,女性15例,年齢66.8±11.6歳,身長152.6±8.8cm,体重51.0±9.0kgであり,THAは5例,TKAは16例であった。術前歩行速度は1.11±0.47m/sであり,退院時歩行速度は0.91±0.33m/sであった。術前骨格筋量(r=.640,p<0.01),術前SMI(r=.568,p=0.01)と有意な正の相関を示した。術前両側股関節外転筋力(術側:r=.814,p<0.01/非術側:r=.758,p<0.01),術前術側膝関節伸展筋力(r=.617,p<0.01)と有意な正の相関を示した。術前両側下腿最大周径(術側:r=.541,p=0.02/非術側:r=.482,p=0.04)と有意な正の相関を示した。


【結論】

RA患者の人工関節術後の退院時歩行速度に,術前の骨格筋量,SMI,股関節外転,膝関節伸展筋力,下腿最大周径など,筋力に関わる因子が関連することが明らかになった。一方,VAS,PCSなど術前の痛みや,術前の不安抑うつと有意な相関が認められなかったことより,術前の痛みや精神機能は退院時の歩行速度へ影響が少なく,筋力の影響が大きいことが示唆された。本研究の結果は,術前リハビリテーション介入方策の一助となる。