[P-MT-43-3] 人工膝関節全置換術前後における自由歩行と最大歩行速度の違いは外部膝関節内反モーメント・歩行パラメーターに影響するのか?
Keywords:人工膝関節全置換術, 外部膝関節内反モーメント, 歩行速度
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(TKA)前後において,理学療法により身体機能が改善し歩行速度が向上することを経験するが,TKA前後における歩行速度増加が外部膝関節内反モーメント(KAM)に与える影響は解明されていない。本研究の目的は,歩行パラメーターから歩行速度増加のメカニズムを検討し,KAMへの影響を明らかにすることである。
【方法】
両変形性膝関節症(膝OA)30名(平均年齢73.8±6.7歳)で10m以上独歩可能な者を対象とし,三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion Systems社)と床反力計(AMTI社)を用いて,自由歩行5施行と最大歩行速度5施行をTKA前後で測定した。X線画像より大腿脛骨角(FTA)・K/L gradeを測定した。解析はPolygonを使用し,各5施行の立脚初期,中期,終期のKAM,歩行パラメーター(歩行速度,ケイデンス,歩幅,片脚・両脚支持時間)の平均値を算出した。KAMは体重で除した値とした。統計学的解析は正規分布を確認後,自由歩行と最大歩行速度の比較,術前後の比較に対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定を用い,左右の比較は対応のないt検定,Mann-whitneyU検定を用いた。有意水準は5%未満とし,解析はSPSS21(IBM社)を使用した。
【結果】
TKA前のFTAは術側186.8±4.7°,非術側183.5±4.0°で,TKA後は術側で174.9±1.8°,非術側は183.5±4.0°であった。術前後の比較では自由歩行と最大歩行速度の両方で歩行速度に有意差は認めなかった。自由歩行と最大歩行速度(自由歩行:最大歩行速度)における歩行速度(m/sec)は,術前の増加率は1.26倍(0.81±0.17:1.02±0.22)で,術後の増加率は1.23倍(0.84±0.16:1.03±0.19)で有意に増加(p<0.01)していた。ケイデンス(steps/min)は術前(99.0±15.6:121.5±17.1),術後(103.8±12.6:121.8±13.0)で最大歩行速度にて有意に増加(p<0.01)していた。歩幅(m)は術前では自由歩行,最大歩行速度間で有意差がなく,術後は非術側にて最大歩行時(0.48±0.05:0.51±0.06)に有意に増加(p<0.01)していた。片脚・両脚支持時間はTKA前後で最大歩行時に有意に減少(p<0.01~0.05)していた。自由歩行と最大歩行速度におけるKAM(Nm/kg)に術前では有意差がなく,術後は非術側立脚中期(0.43±0.21)・終期(0.46±0.22)で有意に減少(p<0.05)していた。
【結論】
膝OAである術前の歩行速度の増加は,歩幅の延長ではなくステップスピードを増加させ,片脚・両脚支持時間の減少によりケイデンスが増加し,歩行速度を増加させる戦略を展開したことが示唆された。TKA後は術側の下肢機能の改善に伴い,非術側の歩幅が増加し骨盤帯や体幹の代償により非術側の立脚中期と終期においてKAMを減少させる歩行戦略が働いたと考えられ,今後更なる検証が必要である。研究意義として,TKA前後における身体機能の改善に伴う歩行速度増加は,ケイデンスの増加が主体であり,KAMの増加に影響しない可能性を提示したことである。
人工膝関節全置換術(TKA)前後において,理学療法により身体機能が改善し歩行速度が向上することを経験するが,TKA前後における歩行速度増加が外部膝関節内反モーメント(KAM)に与える影響は解明されていない。本研究の目的は,歩行パラメーターから歩行速度増加のメカニズムを検討し,KAMへの影響を明らかにすることである。
【方法】
両変形性膝関節症(膝OA)30名(平均年齢73.8±6.7歳)で10m以上独歩可能な者を対象とし,三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion Systems社)と床反力計(AMTI社)を用いて,自由歩行5施行と最大歩行速度5施行をTKA前後で測定した。X線画像より大腿脛骨角(FTA)・K/L gradeを測定した。解析はPolygonを使用し,各5施行の立脚初期,中期,終期のKAM,歩行パラメーター(歩行速度,ケイデンス,歩幅,片脚・両脚支持時間)の平均値を算出した。KAMは体重で除した値とした。統計学的解析は正規分布を確認後,自由歩行と最大歩行速度の比較,術前後の比較に対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定を用い,左右の比較は対応のないt検定,Mann-whitneyU検定を用いた。有意水準は5%未満とし,解析はSPSS21(IBM社)を使用した。
【結果】
TKA前のFTAは術側186.8±4.7°,非術側183.5±4.0°で,TKA後は術側で174.9±1.8°,非術側は183.5±4.0°であった。術前後の比較では自由歩行と最大歩行速度の両方で歩行速度に有意差は認めなかった。自由歩行と最大歩行速度(自由歩行:最大歩行速度)における歩行速度(m/sec)は,術前の増加率は1.26倍(0.81±0.17:1.02±0.22)で,術後の増加率は1.23倍(0.84±0.16:1.03±0.19)で有意に増加(p<0.01)していた。ケイデンス(steps/min)は術前(99.0±15.6:121.5±17.1),術後(103.8±12.6:121.8±13.0)で最大歩行速度にて有意に増加(p<0.01)していた。歩幅(m)は術前では自由歩行,最大歩行速度間で有意差がなく,術後は非術側にて最大歩行時(0.48±0.05:0.51±0.06)に有意に増加(p<0.01)していた。片脚・両脚支持時間はTKA前後で最大歩行時に有意に減少(p<0.01~0.05)していた。自由歩行と最大歩行速度におけるKAM(Nm/kg)に術前では有意差がなく,術後は非術側立脚中期(0.43±0.21)・終期(0.46±0.22)で有意に減少(p<0.05)していた。
【結論】
膝OAである術前の歩行速度の増加は,歩幅の延長ではなくステップスピードを増加させ,片脚・両脚支持時間の減少によりケイデンスが増加し,歩行速度を増加させる戦略を展開したことが示唆された。TKA後は術側の下肢機能の改善に伴い,非術側の歩幅が増加し骨盤帯や体幹の代償により非術側の立脚中期と終期においてKAMを減少させる歩行戦略が働いたと考えられ,今後更なる検証が必要である。研究意義として,TKA前後における身体機能の改善に伴う歩行速度増加は,ケイデンスの増加が主体であり,KAMの増加に影響しない可能性を提示したことである。