[P-MT-43-4] 人工膝関節全置換術前後における歩行時の体幹・骨盤の前額面運動と外部膝関節内転モーメントへの影響
Keywords:変形性膝関節症, 人工膝関節全置換術, 歩行
【はじめに,目的】
外部膝関節内転モーメント(KAM)は変形性膝関節症(膝OA)の発症や進行,人工膝関節全置換術(TKA)のインプラント生存率に影響する。前額面の体幹・骨盤運動は膝関節のモーメントアームを変えKAMを変化させるが,TKA前後での体幹・骨盤運動は一貫した結果が得られていない。本研究の目的はTKA前後での歩行時の体幹・骨盤運動を明らかにし,KAMとの関係を調査することである。
【方法】
対象は膝OAと診断され,TKAを目的に当院へ入院した23人(年齢:72.8±7.1歳)とした。三次元動作解析装置VICON MX(Plug in Gait全身モデル35点マーカー)と床反力計を使用し,TKA前(術前)とTKA後6週(術後)で歩行解析を実施した。歩行解析は定常歩行を5回測定し,その平均値を算出した。測定項目は1st・2nd peak KAMと立脚期前半と後半(前半:1歩行周期の0~30%,後半:31~60%)における胸郭・脊柱・骨盤の側方傾斜角度と股関節・膝関節内外転角度,外部股関節内転モーメント(HAM)のpeak値とした。Wilcoxonの符号付順位和検定で術前と術後を比較し,Spearmanの順位相関係数により各項目とHAM,KAM間の相関関係を解析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術後にFTAは減少し,歩行解析ではKAMと股外転角度,膝内転角度は有意に減少した。前半の術側への脊柱傾斜は有意に減少し,後半では術側への骨盤傾斜は有意に増加したが,その他の胸郭,脊柱,骨盤角度に有意差は認められなかった。
術前のKAMは股内転角度と有意な負の相関,膝内転角度と有意な正の相関を示したが,術後は相関を認めなかった。術前はKAMとHAM間の相関は認めず,術後では前半,後半の両方で有意な正の相関を認めた。また,術前は前半の脊柱と後半の胸郭,術後は前半の胸郭における術側への傾斜角度とHAM間で有意な負の相関を示し,後半の股内転角度はHAMと有意な正の相関を認めたが,KAMとの相関は認めなかった。
【結論】
術後はFTAの減少によりKAM,股外転角度,膝内転角度が有意に減少した。術前は股,膝関節角度がKAMとの相関を示したが,術後ではKAMとの相関を認めず,HAMは胸郭の術側への傾斜と負の相関,股内転角度と正の相関を認め,KAMと正の相関を認めた。術後は下肢アライメントの改善により,膝関節のモーメントアームが減少した為,胸郭・脊柱・骨盤運動が膝関節に与える影響が減少し,KAMとの相関を認めなかった可能性がある。さらに胸郭・脊柱・骨盤の傾斜方向にばらつきがあったこともKAMとの相関の有無に影響を与えたと考える。本研究の意義として,KAMの減少には膝OAは股関節・膝関節内外転角度,TKA後ではHAMが影響することが明らかとなり,TKA後は体幹,股関節機能を改善する必要性が示唆された。
外部膝関節内転モーメント(KAM)は変形性膝関節症(膝OA)の発症や進行,人工膝関節全置換術(TKA)のインプラント生存率に影響する。前額面の体幹・骨盤運動は膝関節のモーメントアームを変えKAMを変化させるが,TKA前後での体幹・骨盤運動は一貫した結果が得られていない。本研究の目的はTKA前後での歩行時の体幹・骨盤運動を明らかにし,KAMとの関係を調査することである。
【方法】
対象は膝OAと診断され,TKAを目的に当院へ入院した23人(年齢:72.8±7.1歳)とした。三次元動作解析装置VICON MX(Plug in Gait全身モデル35点マーカー)と床反力計を使用し,TKA前(術前)とTKA後6週(術後)で歩行解析を実施した。歩行解析は定常歩行を5回測定し,その平均値を算出した。測定項目は1st・2nd peak KAMと立脚期前半と後半(前半:1歩行周期の0~30%,後半:31~60%)における胸郭・脊柱・骨盤の側方傾斜角度と股関節・膝関節内外転角度,外部股関節内転モーメント(HAM)のpeak値とした。Wilcoxonの符号付順位和検定で術前と術後を比較し,Spearmanの順位相関係数により各項目とHAM,KAM間の相関関係を解析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術後にFTAは減少し,歩行解析ではKAMと股外転角度,膝内転角度は有意に減少した。前半の術側への脊柱傾斜は有意に減少し,後半では術側への骨盤傾斜は有意に増加したが,その他の胸郭,脊柱,骨盤角度に有意差は認められなかった。
術前のKAMは股内転角度と有意な負の相関,膝内転角度と有意な正の相関を示したが,術後は相関を認めなかった。術前はKAMとHAM間の相関は認めず,術後では前半,後半の両方で有意な正の相関を認めた。また,術前は前半の脊柱と後半の胸郭,術後は前半の胸郭における術側への傾斜角度とHAM間で有意な負の相関を示し,後半の股内転角度はHAMと有意な正の相関を認めたが,KAMとの相関は認めなかった。
【結論】
術後はFTAの減少によりKAM,股外転角度,膝内転角度が有意に減少した。術前は股,膝関節角度がKAMとの相関を示したが,術後ではKAMとの相関を認めず,HAMは胸郭の術側への傾斜と負の相関,股内転角度と正の相関を認め,KAMと正の相関を認めた。術後は下肢アライメントの改善により,膝関節のモーメントアームが減少した為,胸郭・脊柱・骨盤運動が膝関節に与える影響が減少し,KAMとの相関を認めなかった可能性がある。さらに胸郭・脊柱・骨盤の傾斜方向にばらつきがあったこともKAMとの相関の有無に影響を与えたと考える。本研究の意義として,KAMの減少には膝OAは股関節・膝関節内外転角度,TKA後ではHAMが影響することが明らかとなり,TKA後は体幹,股関節機能を改善する必要性が示唆された。