The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-44] ポスター(運動器)P44

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-44-3] 高齢者における踵部皮下組織の荷重時形態応答について
―自立高齢者と介護保険認定高齢者の比較―

壇 順司1, 竹下 真大2 (1.帝京大学福岡医療技術学部理学療法学科, 2.デイサービスセンターすばる)

Keywords:高齢者, 超音波診断装置, 踵部皮下組織

【はじめに,目的】踵部皮下組織は,線維脂肪組織が集合して構成され,一定の厚さを保ち荷重に対して形態を変化させて衝撃の吸収を行なっている。本研究では活動性に違いがある高齢者の踵部皮下組織の厚さに関与する要因について調査することを目的とした。


【方法】

対象:自立高齢者(自高群)60名(年齢72.4±6.2歳),介護保険認定高齢者(介高群)90名を介助が不要な介自立群50名(年齢78.8±8.8歳)介助が必要な介介助群40名(年齢76.2±8.6歳)とした。また介高群を下肢の麻痺・股・膝関節の手術の既往がある

麻手有群(36名)麻手無群(54名)麻手有群を患側群(右麻痺・手術20名,左麻痺・手術16名)と健側群に分けた。

計測:高さ17cmの台の天板にプローブヘッドと同サイズの穴を短軸方向に空け,ヘッド先端を天板上面と一致させ,固定した装置を作成した。平行棒内で座位から立位をとらせ超音波診断装置Viamo(東芝メディカルシステムズ社)にてプローブ(床)から踵骨隆起内側突起(内)・外側突起(外)下端までの距離を撮影した。立位時の左右の基準は,装置と同じ高さに体重計を置き1/2の荷重に調整し,前後の基準は,足圧中心位置を変化させ床内距離が最短な床内・床外の距離を計測した。その値を①a)自高群とb)介自立群とc)介介助群で,②介高群をd)麻手有群とe)麻手無群で,③麻手有群をf)患側群とg)健側群で比較した。統計は①kuskal-Wallis test②③Mann-Whitney testを用い有意水準を5%未満とした。


【結果】①右床内a)10.2±1.9 b)9.8±2.2 c)11.7±2.9,左床内a)10.1±1.9 b)9.5±1.9 c)11.6±2.6,右床外a)14.4±3.1 b)14±2.9 c)15.5±2.9 左床外a)13.9±3.3 b)14.3±2.5 c)15.1±3.5であり,c)介介助群の床内が他群に比べて有意に厚かった(p<0.01)。②右床内d)12.1±3.0 e)9.95±2.2 左床内d)11.8±3.3 e)9.73±2.3 右床外d)15.9±3.7 e)14.1±2.8,左床外d)15.1±3.9 e)14.4±1.5であり,d)麻手有群の床内で麻手無群に比べ有意に厚かった(p<0.05)。③床内f)12.9±3.5 g)9.9±1.9 床外f)16.6±3.9 g)14.3±3.4であり,f)患側群の床内が健側群に比べ有意に厚かった(p<0.05)。(単位:mm)




【結論】踵部の床への接点から踵骨隆起内側と外側突起までの距離の差から,内側突起を支点に荷重する可能性があり,踵部皮下組織は形態を柔軟に変化させて安定した荷重を行っていると考えられる。麻痺や手術の既往がある高齢者は活動量や荷重量が少ないことから,踵部皮下組織への圧縮力が減少し形態を変化させにくいため,組織の柔軟性が損なわれ厚くなったことが推察される。したがって要介助高齢者は,荷重時の衝撃の吸収や形態の変化による調整機能が失われ,バランスを崩す要因となることが考えられる。よって踵部皮下組織への柔軟性を促すアプローチは,安定した立位や歩行する上で必要な要素であると考える。